質問主意書

第132回国会(常会)

質問主意書


質問第五号

陸上自衛隊における定数と現員との差に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成七年二月十三日

翫 正敏   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   陸上自衛隊における定数と現員との差に関する質問主意書

 我が国の防衛政策の根幹をなす「防衛計画の大綱」(以下「大綱」という。)は、我が国の侵略対処に関して「直接侵略事態が発生した場合には、これに即応して行動し、防衛力の総合的、有機的な運用を図ることによって、極力早期にこれを排除することとする。この場合において、限定的かつ小規模な侵略については、原則として独力で排除する」としている。
 一方、陸上防衛の基幹となる陸上自衛隊には、上記防衛態勢を保有する上で大綱が必要とする定数一八万人を大きく下回り一五万人強しかいない。このため「陸上自衛隊における最大の編成部隊であり、方面隊の基幹部隊として主要な作戦正面を担任する諸職種連合の基本的な作戦部隊」(陸自教範三-〇〇-〇一-六二-一、「師団」)である師団の充足率は当然低く、例えば第三師団などは定員九〇〇〇人のところ充足率は約六九%(第三師団長「参議院内閣委員会に対する概況説明」一九九一年一〇月一五日)に過ぎない。
 この現状を政府は、「大綱に定められている陸上自衛隊の定数と現員との差は、有事に緊急に充足し得る職域等について部隊運営等に重大な支障を来さない範囲である程度充足を下げておくこともやむを得ない」(「自衛のための必要最小限度の実力で対処し得る脅威の規模に関する質問」に対する政府答弁(一九九四年一一月一八日))として事態を容認している。
 しかしながら大綱がいう「限定的かつ小規模な侵略」とは、「一般的には、事前に侵略の『意図』が察知されないよう、侵略のための大掛かりな準備を行うことなしに奇襲的に行われ、かつ、短期間のうちに既成事実を作ってしまうことなどを狙いとしたもの」(一九七七年版『防衛白書』五五頁)であることを鑑みると、前述の政府答弁は有事を想定しているものとは考えられない。よって政府の見解を明らかにするために以下質問する。

一 政府は、師団の充足率が一〇〇%でなくとも、大綱でいうところの侵略対処が可能であると考えているのか。

二 政府は、一九七七年版『防衛白書』がいう「侵略のために大掛かりな準備を行うことなしに奇襲的に行われ、かつ、短期間のうちに既成事実を作ってしまう」侵略においても、師団の欠員部分を「有事に緊急に充足し得る」、言い換えれば充足が間に合うと考えているのか。

  右質問する。