質問主意書

第132回国会(常会)

質問主意書


質問第二号

返還高レベル放射性廃棄物に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成七年一月三十日

翫 正敏   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   返還高レベル放射性廃棄物に関する質問主意書

 今春、我が国の電力会社の委託契約により、使用済み核燃料の再処理で生ずる高レベル放射性廃棄物が初めて我が国へ返還される予定であると発表されている。高レベル放射性廃棄物は、放射能の高さから輸送中も保管中も厳重な管理が必要とされているうえ、カリブ諸国、フィリピン、ナウル等は、輸送船通過に反対しており、国際的な危惧、関心が高まっている。このたびの高レベル放射性廃棄物返還に関して安全性、手続について次のとおり質問する。

一、輸送航路・日程について

 高レベル放射性廃棄物の輸送航路については、科学技術庁及び電力業界は「原則公開」の方針というが、英国及びフランスの反対を理由にまだ公開していない。輸送航路には他国の領海も含まれることであるし、カリブ共同体、ナウル、フィリピンなどは正式に輸送反対の意思表示をしている。あかつき丸でのプルトニウム輸送の際に国際的な批判を浴びた経緯にかんがみれば、直ちに輸送航路を明らかにすべきと考える。

1 高レベル放射性廃棄物輸送船は二月後半にフランスを出港する予定とされているが、今回の輸送航略・日程(フランスを出港する日時、主要経路、日本への到着日)及び今後の輸送頻度・航路を明らかにされたい。
2 輸送航路・日程の情報公開が日本、フランス及び英国の都合で遅延しているが、その遅延に見合った輸送開始日程の延期は予定しているか。延期予定がないとすれば、その理由は何か。
3 輸送航路の沿岸諸国にとっては、自国沿岸を輸送中の事故に備えてしかるべき防災対策を取る期間が必要である。日本政府及び電力業界はその必要を認めているか。認めているとすれば、その期間はどのくらいか。認めていないとすれば、その理由は何か。
4 輸送航路・日程が決定されれば、それは輸送航路の沿岸諸国に通知されるのか。されないとすれば、その理由は何か。
5 政府としては輸送航路・日程等に関して「原則公開」の意向を、どこの国に、どのような形で伝えているか明らかにされたい。
6 輸送航路・日程等の公開について、英国政府、フランス政府及び日本政府の三者で協議しているのか。しているとすれば、どのような場でいつからしているのか。していないとすれば、その理由を明らがにされたい。
7 カリブ共同体は、高レベル放射性廃棄物の通過を阻止するため国連に対し地域を非核地帯を宣言するよう要請するとしているが、政府はこのような宣言が行われた場合、どのように対処するのか、明らかにされたい。
8 フィリピン政府は、自国の領海を日本の核廃棄物が通過することを中止するよう要請しているが、この中止要請に対する政府の対応を明らかにされたい。
9 ナウル政府から経済水域の通過に反対するという書簡が出されているが、この書簡に対する政府の対応を明らかにされたい。
10 今後、多数の国が輸送中止を訴えてくると思われるが、何カ国の要請があれば日本は今回の輸送を中止するのか。中止する場合の基準の有無を含め、政府の対応を明らかにされたい。

二、輸送上の安全性について

 我が国は、一九九四年十一月十六日より発効した国連海洋法条約を批准してはいないものの、政府は一九九六年には批准する意向を発表している。同条約では、高レベル放射性廃棄物のような危険物の輸送の環境影響評価を行い、その結果を公表することを求めている。

1 政府は、今回の輸送に対し何らかの環境影響評価を行ったか。行っているならその評価項目、内容及び結果を公表されたい。
2 カリブ諸国も輸送前に環境影響評価を行うことを求めているが、このような海外からの要請に政府ではどのように対処しているのか。また、今後、環境影響評価を行う予定があるかどうか明らかにされたい。

三、高レベル放射性廃棄物及びその受入れ手続について

1 高レベル放射性廃棄物の仕様の確認については、科学技術庁から担当者をフランスに派遣するときいているが、いつ、どこでどのように確認するのか。ガラス固化体ひとつひとつについてサンプルを取って確認するのか、書類のみで確認するのか。もし、申請の仕様どおりでない場合、輸送は延期されるのかどうか、明らかにされたい。
2 高レベル放射性廃棄物受入れ及び輸送上必要な手続としては仕様の確認以外に何が残っているのか。残っている手続及びその所轄官庁名を明らかにされたい。
3 政府及び電力業界は高レベル放射性廃棄物の仕様の詳細なデータについてはコジェマ社に要求していないが、その理由は何か。ガラス固化体ひとつひとつについて詳細なデータがなくても、長年にわたる管理は万全に行えるという保証があるか、明らかにされたい。
4 現在、ガラス固化体の受入れ基準を設定していない理由は何か。今後つくる予定があるとしたら、それはどのような内容で、何に基づいてつくるのか、明らかにされたい。基準を後からつくることになった理由も併せて示されたい。
5 ガラス固化体のキャニスタの材料に何が使われているか。その材料の耐久年数とその根拠を明らかにされたい。

四、高レベル放射性廃棄物受入れ後の管理について

1 高レベル放射性廃棄物の最終処分を埋設処分にすることになっているが、その根拠は何か。
2 最終処分に適した埋設地とはどういう条件を満たした土地か、その条件を明らかにされたい。
3 最終処分場はどこで、建設までに何年かかるか、明らかにされたい。
4 高レベル放射性廃棄物管理施設一棟あたり建設費用はいくらかかるのか、明らかにされたい。
5 高レベル放射性廃棄物管理施設の付近に活断層はあるか。活断層がないとすれば、何年活動していない断層があるか、明らかにされたい。
6 高レベル放射性廃棄物管理施設は、地震等による放射能放出事故にどのように備えているか、事故対策及び住民の防災対策を示されたい。どの程度の地震に耐えられる設計になっているのか、明らかにされたい。
7 昨年末「三陸はるか沖地震」の後、高レベル放射性廃棄物管理施設の異状についての調査結果が日本原燃(株)から科学技術庁に提出されたが、その文書を公開しない理由を明らかにされたい。
8 高レベル放射性廃棄物管理施設の地震後の調査は、誰によって、いつ、どのように行われたのか。調査項目及びその方法を明らかにされたい。また、今後の地震後調査の方法を明らかにされたい。
9 高レベル放射性廃棄物管理期間中に想定される事故はどんな種類のものか。事故時の推定放出放射能量も含めて明らかにされたい。 また、その事故対策及び住民の防災対策を示されたい。外国で実際に想定以上の事故が起きた例はあるか、示されたい。
10 ガラス固化体の腐食等によって放射能が漏れた場合、どのガラス固化体からどのように漏れているかを、いつ、どのような方法で発見するのか。また、腐食が発見された場合、どのような方法でガラス固化体を修理し、放射能漏れを防ぐのか。その方法を明らかにされたい。
11 高レベル放射性廃棄物を最終的に埋設処分にする理由は何か、明らかにされたい。
12 高レベル放射性廃棄物は何十万年にわたる厳重な管理が必要とされるが、今後返還予定の高レベル放射性廃棄物の放射能が完全になくなり、害がなくなるまでにかかる管理・貯蔵に必要な費用はいくらか。同様に、今後返還予定中の低レベル放射性廃棄物について返還量及び返還後の管理・貯蔵に必要な費用を明らかにされたい。

  右質問する。