質問主意書

第131回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四号

語学会話学校の外国人従業員に対する人権侵害に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成六年十月十九日

翫 正敏   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   語学会話学校の外国人従業員に対する人権侵害に関する質問主意書

 業界最大手の語学会話学校「ノヴァ外語学院」(経営主体・株式会社ノヴァ/本社・大阪市中央区/代表取締役猿橋望)は、一部外国人従業員が大麻取締法違反の疑いで大阪府警に逮捕され、マスコミでも大きく報道され反響を呼んでいるが、これによる企業のイメージダウンを回復するためと称して、全従業員を対象に薬物検査を強行しようとしている。本件は、単なる一企業内の事例にとどまらず、血液によるHIV検査を含め、人権侵害、雇用問題、健康診断制度などに関わる深刻な社会問題として普遍化する可能性を持っている。
 よって、以下のとおり質問する。

一、複数の従業員が大麻を不法に所持していたとして逮捕されたことを理由に、何千人もの従業員を被疑者扱いにして、薬物検査を受けるよう通告し、「全員の同意書をとって記者会見する」というのは、企業の営業や宣伝効果を狙ったとはいえ、行き過ぎた行為であり、人権侵害ではないだろうか。また、その実施をまず外国人に絞って開始しようとしているのは、外国人差別であると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二、「関西新空港の開港による外国人犯罪の増加」が叫ばれ、大阪府警にも、特別の機動班が発足しているが、それが経営者に必要以上に圧力となり、今回のような人権侵害を引き起こしてはいないか。「ノヴァ外語学院」が外国人労働者に示した「薬物検査説明文」に「今回の検査は、警察当局と協力し、かつ、検査結果は警察当局に報告する」とあるが、これは警察の過剰捜査ではないのか。事実かどうか明らかにされたい。

三、薬物検査の同意書(これは説明文を示したのみで手渡しされず、同意書への署名のみを指示した)は、突然かつ一方的に示された上、外国人従業員にとって十分理解できるものではなかった。法定の義務であるとの錯誤に基づく署名や解雇などの脅迫による署名もあり、その返還を多数の外国人従業員が求めているが、会社は拒否している。これらの錯誤・脅迫に基づく「同意書」は有効か。
 また、「同意拒否・検査拒否の場合は解雇」と管理職を通じて各校で説明され、本社も記者会見で「そのような人は継続雇用しない」と言明している。雇用契約を何回も更新して長年就労しているケースについても、事件以降、一方的に「薬物検査に同意する」事項が、雇用契約に追加されている。これは同意しなかった者への解雇及び採用拒否ではないだろうか。こうした解雇及び採用拒否は人権侵害であると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四、「ノヴァ外語学院」では、従業員の年次有給休暇制度が違法な状態で放置され、それを取得するのも困難だとされている。その他、労働基本法、労働安全衛生法、労働組合法などの違反も少なくないと思われる。政府としてこれらの実態調査を行ったことがあるか。

五、「ノヴァ外語学院」では、この問題以外にも、前売りチケットの乱売が原因で「実際受講できない」という苦情が、全国各行政機関の消費者センターに殺到している。政府はこの実態を把握しているのか。

六、最近、全国大手の語学会話学校は、多くの生徒と従業員(特に外国人)を擁しているが、行政機関の指導や企業の届け出義務等が不明確である。このことが語学会話業界における、ローンでの受講チケットの乱売、派手な広告合戦、無責任な閉鎖や解雇、倒産など、再三にわたり消費者問題、労働問題の原因となっている。しかも乱立と過当競争の渦中で、経営者の経営責任は希薄である。生徒数二十五万人を自称する全国展開の語学学校が私塾と同じ扱いとされ、法規制を受けないというのはいかがなものか。政府、自治体で所管官庁がまたがり、複雑な現実もあるが、今後どの省庁が担当するのか明らかにされたい。

  右質問する。