質問主意書

第131回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

陸上自衛隊における「防衛戦略」の定義に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成六年十月五日

翫 正敏   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   陸上自衛隊における「防衛戦略」の定義に関する質問主意書

 私が第百三十回国会で提出した「防衛庁における「戦略」に関する再質問」に対する政府答弁(九四年八月一二日)は、「防衛庁における「戦略」及び「防衛戦略」は、それぞれ一般的な意味で使用されているものであり、防衛庁において定義されたものがあるわけではない」と述べている。つまり政府の公式見解は、防衛庁が「戦略」及び「防衛戦略」を定義していることを否定したことになるが、防衛庁の公文書の中にこれらを定義したものがある。
 「用語集」(陸自教範七-〇四-二九-六二-一)は「戦略」を「一般に、戦術の上位にある概念で、主として軍事力を運用する方策及び術をいう」と定義し、さらに「戦争の発生を抑止するため、また、侵略事態が生起した場合これを排除するため、国の防衛力を造成し、運用する方策を『防衛戦略』という」と定義している。同教範は「教育訓練に使用する用語の意義を明らかにしてその統一を図ることを目的とし、主として、野外令以下の主要教範類に使用する用語のうち我の運用に関係ある用語について記述する」(はしがき)ものである。
 また「野外令」(陸自教範一-〇〇-〇一-六〇-一)では「防衛戦略」を「我が国の防衛戦略は、有効な防衛力及び日米安全保障体制により、我が国に対する侵略を未然に防止することを基本とするとともに、万一侵略事態が生起した場合には、独力で、又は米国と共同して努めて早期にこれを排除するにある」(第一編「国家安全保障と陸上自衛隊」第三章「国土防衛戦における戦略」第一節「概説」)と定義している。同教範は「方面隊及び師団に焦点を当てて国土防衛戦における陸上自衛隊の作戦・戦闘に関する基本的原則を記述し、教育訓練の一般的準拠を与えることを目的」(はしがき)としている。
 「教範に関する訓令」(昭和四十年防衛庁訓令第三十四号)によれば、教範は「自衛隊の行動及び教育訓練を適切、かつ、有効に実施するために、部隊の指揮運用、隊員の動作等に関する準拠を示したもの」(第二条)であり、各幕僚長が作成する(第三条)レベルの高い公文書であり、その作成については防衛庁長官も報告を受けるところである(第四条)。
 従って、防衛庁において「戦略」及び「防衛戦略」について特段の定義はないとする政府答弁は、食言をも疑わせるものであり、政府の見解を再び問うため、以下質問する。

一 政府は、「用語集」及び「野外令」において「戦略」及び「防衛戦略」に関する定義がなされている事実について知らなかったのか。

二 もし政府が右事実を知っていたのにかかわらず、先の政府答弁(九四年八月一二日)において答弁しなかったのであるなら、その理由を明らかにされたい。

  右質問する。