質問主意書

第129回国会(常会)

質問主意書


質問第九号

世界基督教統一神霊協会に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成六年六月二十三日

北村 哲男   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   世界基督教統一神霊協会に関する質問主意書

 一昨年、新体操の元オリンピック選手の山崎浩子さんや女優の桜田淳子さんら芸能人の入・脱会騒動で世間を騒がせた統一協会(世界基督教統一神霊協会=教祖文鮮明)は、霊感商法をはじめとして、宗教団体としてあるまじき様々の反社会的事件を引き起こしていることはよく知られている。去る五月二十七日に福岡地裁は全国で初めて統一協会の霊感商法に対する損害賠償請求訴訟で原告の主張どおり統一協会の関与と賠償責任を認め、三千七百六十万円の支払いを命じる判決を出した。
 そこで以下の点について質したい。

一、統一協会は霊感商法といわれる詐欺的脅迫的手口によって印鑑、人参液、壷、多宝塔、絵画、呉服、宝石、仏具などを法外な値段で売るなど、信者に違法な資金集めをさせて多くの被害者を生み、社会的に厳しい批判を受け、国会でも追及されたことは周知のとおりである。全国の消費者センターと弁護団が調べた一九九三年の数字でも被害件数二千百五十三件、被害金額は百二十一億九千二百万円余の巨額にのぼっている。最近は「HG」(早く現金)といわれる資金集めに力を入れ、土地、建物を担保にとった融資の形で多額の金を詐取する手口が用いられており、なかには億単位の被害も珍しくない。東京三鷹では一家で五十六億円余をだましとられた例もある。この件を契機にして三鷹市議会では決議が出されている。現在多くの被害者たちが統一協会を相手取って損害賠償請求などの訴訟を起こしている。
 また統一協会に入り、貴重な青春時代を奪われた元信者たちは、その間の損失利益、慰謝料などの損害賠償を求めて全国各地で「失われた青春を返せ」訴訟を起こしている。
 さらに文鮮明教祖によって見も知らぬ相手と組み合わされ合同結婚をさせられた元信者たちは婚姻無効確認を求める訴訟を起こしている。
 統一協会側が従来、第一の霊感商法に対する訴訟では敗訴が明らかなため和解しているケースが多いことを考えると、今回の判決の持つ意味は重大である。これら三種類の訴訟が行なわれているという現実から統一協会は明らかに反社会的な団体であると考えられるが、政府としてはどう判断するのか。

二、統一協会の勧誘方法は、駅頭や街頭などでアンケートや手相見などの手段で接近して人生相談や悩み事相談に乗る形をとり、大学のキャンパスでは原理研究会というクラブ活動の形をとって勧誘しているのが通常である。統一協会の名を隠し、宗教団体ではないと偽って勧誘するため、学生や未成年者など純粋で真面目な青年男女ほどだまされやすい。いったん勧誘に応じると、マインドコントロールといわれる方法で信者にされてしまうのである。このため、大学のなかには入学シーズンに新入生を対象に警告書を配付している大学もある。このようにまず勧誘の仕方からして詐欺的で異常である点からも、統一協会は宗教団体として適格性を欠いていると考えられるがどうか。

三、統一協会は国際合同結婚式、いわゆる集団結婚でよく知られている。一昨年夏にも約三万組の合同結婚式がソウルで行なわれた。結婚相手は本人の意思とまったく無関係に文鮮明教祖の指名によって一方的に決められる。これはまさに「両性の合意のみに基いて成立」するという憲法第二十四条に反する。このような結婚は、親、兄弟、親戚も反対し深刻な家庭悲劇を全国各地で起こしている。この点からみても統一協会の反社会性がきわめて強いことは明らかであるが、どのように考えるか。

四、教祖文鮮明は一昨年三月末にわが国に入国した際、通常では入国できないケースであったにもかかわらず、当時の金丸自由民主党副総裁に働きかけ、特別扱いをうけたといわれている。その背後では信者から集めた多額の資金が政治資金として動いたと指摘されている。また、統一協会のいわば政治団体であり、統一協会と一心同体の関係にある国際勝共連合は保守系議員の選挙運動の応援を行なっており、とくに当落すれすれの候補や組織の弱い新人あるいはこれはと思う候補のところに協会員を大量に運動員として派遣し、当選すると私設秘書を送り込むなど、政治家との結びつきを強め政界への浸透をはかろうとしている。私たちは政治改革を最重要課題として取り組んでいる立場からも、こうした政治をゆがめる動きを看過することはできないと考えるがどうか。

五、以上申し述べた点から、統一協会は反社会的な性格の団体であり、本質的に宗教団体とは認めがたい。
 少なくとも宗教法人法にのっとった宗教団体として認めることはできないと考えざるをえない。従って統一協会には宗教法人法第八十一条に基づく解散命令を含む厳しい措置がとられてしかるべきであると考えるが、政府の見解はどうか。

六、統一協会が霊感商法等の手口で集めた資金は宗教法人法第六条第二項に違反して使用されていると考えられる。例えば統一協会は株式会社ハッピーワールド名義の新宿教会を担保に同社が韓国第一銀行から借金するにつき連帯保証している。このような事実を調査の上、同法第七十九条第一項に基づきその事業停止を命じるべきではないか。そのための同条第四項の手続きをとるべきではないか。

七、税務当局者は統一協会信者らの前記の如き資金集めについてどのような調査をしているのか。

八、少なくとも前会長藤井氏が対外的にこの債務が四千億円にのぼることを認めていることにかんがみても、日本法人が集めた資金の大部分がアメリカ合衆国や韓国の文鮮明とその周囲の組織に提供されていると考えられる。このような多額の資金流出の事態は金融機関や多くの市民の債権回収を不能にすることになると考えられるが、当局はどう対応するのか。

  右質問する。