質問主意書

第128回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六号

「岡部山」事件に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成五年十二月十五日

会田 長栄   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   「岡部山」事件に関する質問主意書

 私は、平成四年五月二五日、参議院決算委員会において、岩手県岩手郡雫石町に所在する通称「岡部山」をめぐる事件について、政府側の対応を質した。同日の私の質疑に対する政府側の答弁は、確定判決により事件は決着済みとの立場での「自信に満ちた」答弁の繰り返しであった。しかし、事件の発端に遡って経過を追ってみると、国家による国民の私有財産の侵奪という、看過できない事実が浮かび、疑問点が湧いてくる。
 そこで私は、国民の権利擁護という立場に立って、以下、質問する。

一、岩手県岩手郡雫石町に所在する「岡部山」の所有権をめぐって、一国民と国との間に、長い間、紛争が続いてきたが、この事件は、一体どういう事件であったのか。これまでの林野庁の対応及び一審、二審と裁判の経過を追って、事件の概要と争点を示されたい。

二、林野庁は、係争物件が誰の所有であり、当時、限度額いくらの抵当権が設定されていたか、承知していたかどうか。また、盛岡銀行(現在の岩手銀行)が保管していた、この物件の実測図を承知していたかどうか。

三、昭和三六年三月二八日付けで、農林省が出したと言われる訓令はどのような内容か、その全文を示されたい。なお、この訓令は、どういう背景のもとに、どういう目的で出されたのか、明らかにされたい。

四、国有地と私有地の境界線を当事者の間で確定する場合には、何に基づいて、どういう手続と要件のもとに行われるのか、明らかにされたい。なお、私有地側の立会人がいなくてもいいと考えているのか。

五、本件訴訟は既に確定しているが、裁判の過程において看過できない重要な証言が相次ぎ、また、証拠が示されたと聞く。そこで、次の点について政府の見解を質しておきたい。

1 第一審の盛岡地裁において、林野庁は、「本件係争地の大部分は国有地であり、原告の所有地は猫の額ほどの登記簿面積十六町歩に過ぎない」と主張し、その証拠として「乙第七号証(境界査定立会通知書)」と「乙第八号証(同領収書)」を提出して陳述したと言われるが、この証拠は偽造だったとの疑いが出されている。この点について、政府の認識はどうか。また、こういう疑いが持たれる原因はどこからきていると考えているか。
2 第二審の仙台高裁で本件審理中の期間に、前記証拠が偽造の疑いがあるとの原告側からの指摘に驚き、それを隠蔽するために、前記証拠をすり替えたと言われるが、この点についての政府の認識はどうか。また、こういうすり替えの疑いが持たれる原因はどこからきていると考えているか。

六、「岡部山」をめぐる国との紛争は、解決に至ってないと考える。そこで、本件をめぐる一切の関係資料、証拠書類の原本は、本件紛争が完全解決に至るまで、政府の責任において保全する責務があると考えるが、見解はどうか。もし、政府の責任において本件関係書類等の保全が図られず、利害関係者による閲覧等が認められないとすると、国民の権利が侵害された場合において、国に救済を求め、そのための「裁判を受ける権利」が保障されないことにもなると考えるが、政府の誠意ある回答を求める。

  右質問する。