質問主意書

第126回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一号

内閣参質一二六第一一号

  平成五年七月十三日

内閣総理大臣 宮澤 喜一   


       参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員林紀子君提出病弱・肢体虚弱児教育に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員林紀子君提出病弱・肢体虚弱児教育に関する質問に対する答弁書

一について

 病弱者(身体虚弱者を含む。)である児童若しくは生徒(以下「病弱児」という。)を教育する養護学校(以下「病弱養護学校」という。)の学級又は小学校若しくは中学校の病弱児のための特殊学級のうち、病院内にある学級は、病院に入院している病弱児に対する教育の機会を保障する上で重要な役割を果たしているものと考えている。
 病院内にある学級は、平成四年五月一日現在、養護学校の小学部及び中学部の学級については、学級数が百九十七学級、在籍している児童及び生徒の数が五百六人、また、小学校及び中学校の特殊学級については、学級数が二百四十八学級、在籍している児童及び生徒の数が八百二十三人であるが、病院に入院している病弱児に対する教育は、病院内にある学級、病院に隣接している学校又は教員の病院への訪問により適切に行われているものと考えている。

二の(1)について

 学齢児童又は学齢生徒で慢性疾患又は身体虚弱の状態が六月未満の医療又は生活規制を必要とする程度のものについては、その状態に応じて、療養に専念する場合、小学校若しくは中学校の病弱児のための特殊学級で教育する場合又は小学校若しくは中学校の特殊学級以外の学級で慢性疾患若しくは身体虚弱の状態に留意して指導する場合がある。このうち、小学校及び中学校の病弱児のための特殊学級は、病院内にあるものを含め、平成四年五月一日現在、学級数は五百四十学級であり、在籍している児童及び生徒の数は千七百一人である。
 また、病院の小児科における平均在院期間は、厚生省の平成二年患者調査によると、十六・八日となっている。

二の(2)について

 病気療養児の疾患の種類の変化、医療技術の進歩等に伴う入院期間の短期化、継続化など病気療養児をめぐる医療の状況の変化に対応するため、平成五年六月から、文部省において病気療養児の教育に関する調査研究を開始したところであり、その中で病気療養児に対する教育の充実方策について検討しているところである。

三の(1)について

 平成五年四月一日現在、小児科に係る患者が入院している国立の医療機関は、文部省所管の国立大学附属病院では四十六病院、厚生省所管の国立病院及び国立療養所では百七十七施設あり、このうち、平成五年五月一日現在、病院内にある学級や病院に隣接している学校で教育を行ったり、又は、教員が病院を訪問するなどの教育上の措置が採られているものは、文部省所管の国立大学附属病院で十八病院、厚生省所管の国立病院等で百十六施設となっている。

三の(2)について

 義務教育段階の児童又は生徒を就学させる学校の設置義務は、都道府県又は市町村にあり、また、病院内の学級は、都道府県又は市町村の教育委員会の管轄下の学校に置かれるものである。このため、政府においては、病院内の学級の設置等について各教育委員会を指導するとともに、附属病院を置く国立大学に対しては、教育委員会から要請があった場合に協力を行うよう指導しているところである。
 なお、病院内の学級の一層の充実を図るための方策については、文部省で行っている病気療養児の教育に関する調査研究の中で、今後、検討する予定である。

四の(1)について

 病弱児に対する後期中等教育については、高等学校と病弱養護学校の高等部を中心に行われており、平成四年三月の病弱養護学校中学部卒業者七百九十二人のうち、三百七十八人(約四十八パーセント)が高等学校等へ、また、二百三十六人(約三十パーセント)が高等部へ進学し、後期中等教育への進学率は約七十八パーセントとなっている。
 病弱児を含めた心身障害児の義務教育修了後の進路については、その能力、適性や障害の状態等に応じて、高等学校若しくは盲学校、聾学校若しくは養護学校の高等部等への進学又は就職のほか、労働、福祉、医療関係機関への入所等の中から最も適切な進路を選択することが大切であると考えている。

四の(2)について

 附属病院を置く国立大学に対しては、教育委員会から病弱養護学校の学級又は小学校若しくは中学校の病弱児のための特殊学級の病院内への設置等に関して要請があった場合に協力を行うよう指導しているところである。
 なお、高等学校における特殊学級の設置については、後期中等教育が義務教育ではないことから、国として特段の措置を講ずることは考えていない。

五について

 病院に入院し、病院内にある学級等で教育を受ける児童又は生徒について、入院前に在学していた学校との連携、協力に配慮する必要はあるが、そのために学籍に関する現行制度を変更する必要があるとは考えていない。
 なお、小学校又は中学校の特殊学級以外の学級に在籍している軽度の心身障害児に対して、各教科等の指導は在籍学級で行いながら、心身の障害に応じた特別の指導を特別の指導の場で行う、いわゆる通級による指導が既に制度化されているが、これは、二重学籍を認めたり、単に学籍を残すための措置ではなく、趣旨が異なるものである。

六について

 政府においては、都道府県及び市町村の教育委員会に対して、病院に入院している病弱児に対する教育の機会を保障するため、管轄下の学校に対する指導及び保護者等に対する啓発を適切に行うよう、これまでも指導を行ってきたところであり、今後ともこれらの指導を充実してまいりたい。