質問主意書

第126回国会(常会)

答弁書


答弁書第六号

内閣参質一二六第六号

  平成五年六月十八日

内閣総理大臣 宮澤 喜一   


       参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員中村鋭一君提出高等学校における交通安全教育に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員中村鋭一君提出高等学校における交通安全教育に関する質問に対する答弁書

一について

 高等学校用の保健体育の教科書については、新高等学校学習指導要領において、指導内容として「交通安全」及び「応急処置」が加えられたことに対応する図書が作成されており、既に昨年度において検定を終えたところである。今後、各都道府県教育委員会等において採択が行われ、平成六年度から各学校において使用されることとなっている。
 大学における教員養成については、高等学校の保健体育及び保健の免許状を取得する際には、交通安全や応急処置に関する内容を含む学校保健を必修としている。
 教員の研修については、毎年、小学校、中学校及び高等学校の教員を対象とする交通安全教育に関する研修会を開催して、その指導力の向上に努めている。特に応急処置については、平成三年度から三年計画で高等学校の保健体育の教員を対象に応急処置研修事業を実施しており、平成六年度からの新学習指導要領の実施に備えているところである。

二について

 高等学校においては、学習指導要領の改定を踏まえ、教科「保健体育」並びに特別活動のホームルーム活動、学校行事及び生徒会活動を中心に学校教育活動全体を通じて交通安全教育を実施するよう指導している。
 具体的な指導時間については、各学校が地域や学校の実態、生徒の心身の発達段階及び特性等を考慮して定めることとなっており、都道府県教育委員会等を通じて指導の充実を図るよう指導しているところである。

三について

 昭和五十九年度及び平成二年度を対象とする交通安全教育の実態調査において、例えば高校二年生のホームルームを利用した交通安全指導の一年間の実施回数を比べると、平均約七回から約十回に増加しており、交通安全教育の充実が図られてきていると考えられる。
 なお、高校生の交通事故死者数は、御指摘の総合対策を決定した平成元年には五百五十六人であったが、平成四年には四百九十五人となっており、約十一パーセント減少している。
 今後も「二輪車事故防止に関する総合対策」を踏まえて、生徒の実態や地域の実情に応じて、二輪車の安全運転を推進する機関、団体と連携しながら、安全運転等の指導を行うなど、安全運転に関する意識の高揚と実践力の向上を図るとともに、二輪車に乗車する生徒に対する実技を含む安全指導の充実を図るよう都道府県教育委員会等を通じて指導してまいりたい。

四及び五について

 平成二年度に「交通安全教育指導の調査研究」事業の一環として開始した「高校生二輪車運転教育に関する調査研究」事業は、二輪車に乗車する高校生に対する実技指導を中心として、高校生に対する交通安全教育の効果的な在り方を検討することを目的とするものである。文部省ではこの調査研究事業の実施に当たり、平成三年二月に財団法人日本交通安全教育普及協会に調査研究を委嘱し、同協会は高等学校の関係者、交通安全教育の専門家、関係行政機関の担当者、自動車教習所の関係者等で構成される調査研究委員会を設置したところである。調査研究委員会では、これまで高等学校関係者や有識者による実例報告及びヒアリングを行ってきている。
 また、日本交通安全教育普及協会では、この調査研究に資するため、すべての高等学校について交通安全教育に関する実態調査を行い、平成三年十月にその結果を取りまとめている。
 調査研究委員会においては、現在、これらの成果も踏まえつつ検討を続けているところである。

六について

 高校生に対する二輪車安全運転指導は、教育委員会、学校、警察、交通安全協会等の関係機関、団体が連携し、学校行事や交通安全運動期間中の諸行事等として全都道府県で実施されており、平成四年中の受講者は約二十二万四千人であった。
 また、指導に当たっては、警察の交通機動隊員のほか、交通安全協会等に所属している二輪車安全運転指導員が必要に応じて派遣されているところである。

七について

 高校生に対する二輪車安全運転指導に関する都道府県における予算措置は、御指摘の神奈川県、鹿児島県、福岡県等四十都道府県で講じられており、これらの都道府県で措置した平成四年度予算の合計額は、約四千万円となっている。このほか、奈良県における高校生を含む若年運転者を対象とする二輪ライダースクール経費三十五万円、広島県におけるストップ・ザ・交通死亡事故推進経費百五十万円などのように二輪車対策や交通死亡事故防止対策等の予算として措置しているところもある。
 指導内容としては、交通法規及び安全運転に関する知識のほか、点検、乗車姿勢、制動、コーナリング、バランス走行など二輪車の特性に基づいた基本的運転技能の習熟に重点を置いている。

八について

 高等学校における、いわゆる「三ない運動」のような措置は、生徒の交通事故を未然に防ぐために、地域や学校等の実態に応じて実施されているものであり、地域における現実的な対応の一つとして考えられるところである。
 政府としては、このような措置の有無にかかわらず、生徒自らが交通社会の一員としての責任を自覚し、自己の安全のみならず、他の人々や社会の安全に貢献できる健全な社会人を育成することを目指して、交通安全教育の徹底を図る必要があると考えている。特に二輪車に乗車する生徒については、二輪車の安全運転に関する効果的な安全指導を一層推進するよう努める必要があると考えている。

九について

 いわゆる「三ない運動」のような措置は、高等学校、教育委員会、PTA等が生徒の悲惨な交通事故を未然に防ぐために実施しているものであり、政府では従来から、このような措置の在り方をも含め、交通安全教育の充実、交通環境の整備等交通事故の減少のための総合的な方策について、地域の実情に応じて検討するよう都道府県教育委員会等を通じて指導してきている。
 御指摘の神奈川県の措置は、このような検討の結果、生命尊重の精神を基盤として、高校生自らが「車社会」の一員としての社会的責任を自覚し、交通事故の防止に向けて主体的に考え、行動することができるようにすることを目的として、家庭と学校とが相互に協力連携しつつ、それぞれの役割を果たすことを基本的な考え方として実施されたものであると承知している。
 政府としては、今後とも、関係機関、団体において地域の実情に応じた検討が行われるよう都道府県教育委員会等を通じて指導してまいりたい。

十について

 学校においては、自他の生命の尊重という基本理念に立って、児童生徒等の心身の発達段階や地域の実情に応じ、幼稚園から高等学校までを通じて交通安全教育を適切に行うことが極めて重要であると考えており、今後も交通安全教育の推進に努めてまいりたい。

十一及び十二について

 運転免許は、自動車及び原動機付自転車の運転を一般人が自由に行うと、道路交通の安全と円滑に支障を及ぼすおそれがあることから、一定の欠格事由に該当せず、かつ、運転免許試験に合格した者に限って与えられるものである。
 この運転免許試験では、道路交通の安全と円滑の確保という責務を有する公安委員会が、自動車等の運転について必要な適性、技能及び知識を受験者が有しているか否かを判定するものである。
 したがって、指定自動車教習所の教育内容は、自動車等を運転する場合に必要な技能や知識を身に付けさせるための教育内容が中心となっている。
 また、高等学校を含む学校における交通安全教育は、児童生徒が現在あるいは将来運転免許を取得することがあることをも踏まえ、身近な交通環境における様々な危険に気付いて的確な判断の下に安全に行動できる態度や能力を養うとともに、交通社会の一員として、その責任を自覚し、交通安全意識と交通マナーの向上に努め、自己の安全のみならず他の人々や社会の安全に貢献できる健全な社会人を育成することを目指して実施している。
 具体的な教育内容としては、例えば、高等学校においては、自転車の安全な利用、二輪車・自動車の特性、交通法規、交通事故と防止対策などを中心として指導しているところであり、高校生が交通安全の基礎を培うよう配慮している。
 なお、従来から教育委員会、学校、警察、自動車教習所等の関係機関、団体が連携を図りながら交通安全教育を推進してきているところであり、今後とも引き続きその推進に努めてまいりたい。

十三について

 交通安全教育については、高校生に対するものを含め、交通安全対策の重要な柱として認識しており、諸外国における交通事故防止対策や運転免許制度等の調査に関連して資料収集や現地調査等を適宜実施しているところであり、有効と考えられるものについては施策に反映させているところである。
 今後とも、引き続き必要に応じて調査を実施してまいりたいと考えている。

十四について

 諸外国における交通安全教育の推進方策については、今後とも資料収集を行うとともに、必要に応じて調査を実施し、我が国の実情を踏まえつつ、有効な推進方策を検討してまいりたい。

十五について

 大学における教員養成については、中学校及び高等学校の保健体育及び保健の教科の免許状の取得において、学校安全を含む学校保健を必修としている。また、昭和六十三年の教育職員免許法等の改正により、小学校の免許状並びに中学校及び高等学校のすべての教科の免許状の取得において、交通安全教育を含む特別活動の指導の充実に資するため、特別活動に関する科目を必修としたところである。