第126回国会(常会)
答弁書第三号
内閣参質一二六第三号 平成五年四月二十七日 内閣総理大臣 宮澤 喜一
参議院議員稲村稔夫君提出東京電力柏崎刈羽原子力発電所の地盤の安全性並びに事故・火災事件等の通報体制に係る政府の認識と判断の根拠に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員稲村稔夫君提出東京電力柏崎刈羽原子力発電所の地盤の安全性並びに事故・火災事件等の通報体制に係る政府の認識と判断の根拠に関する質問に対する答弁書 一の1の(1)のアについて 「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和五十三年九月二十九日原子力委員会決定、昭和五十六年七月二十日原子力安全委員会一部改定)」において、原子炉施設の耐震設計において活動時期の観点から考慮すべき活断層は、五万年前以降活動したものとされている。政府は、このような考え方に沿って、当該原子炉施設の設置位置付近において存在が確認された断層は、安全上支障となるものではないと判断している。 一の1の(1)のイについて 当該原子炉施設の設置位置付近において、東京電力株式会社は、各号炉の原子炉設置許可申請及び設置変更許可申請に当たり行ったボーリング調査及び試掘坑調査により存在が確認された断層について、性状及び相互の関係を検討し、地すべり性と判断される断層を除き、これらの断層を代表すると考えられる断層に対し、追跡坑調査等を行った。その結果、当該断層は、安田層上部層に変位を与えていないことが確認されたことから、政府は、当該原子炉施設の設置位置付近において存在が確認された断層は、安全上支障となるものではないと判断している。
一の1の(2)について 当該原子炉施設の設置位置付近において、東京電力株式会社が各号炉の原子炉設置許可申請及び設置変更許可申請に当たり行ったボーリング調査及び試掘坑調査では、敷地内で存在が確認された番神砂層と安田層を切る断層の一部は基盤である西山層の上限面付近に変位を与えていることを確認している。しかしながら、露頭調査及びボーリング調査の結果から、これら番神砂層と安田層を切る断層についてはいずれも地すべり性の断層であり、政府は、安全上支障となるものではないと判断している。 一の1の(3)のアについて 当該原子炉施設の設置位置付近において、東京電力株式会社が各号炉の原子炉設置許可申請及び設置変更許可申請に当たり、最低二本の試掘坑調査及び必要に応じ追跡坑調査を実施しており、政府は、それらの調査結果を審査の対象とした。 一の1の(3)のイ及びウについて 当該原子炉施設の設置位置付近において、東京電力株式会社は、各号炉の原子炉設置許可申請及び設置変更許可申請に当たり行ったボーリング調査及び試掘坑調査により存在が確認された断層について、性状及び相互の関係を検討し、地すべり性と判断される断層を除き、これらの断層を代表すると考えられる断層に対し、追跡坑調査等を行った。その結果、当該断層は、安田層上部層に変位を与えていないことが確認されたことから、政府は、当該原子炉施設の設置位置付近において存在が確認された断層は、安全上支障となるものではないと判断している。 一の1の(4)について 前述のとおり、当該原子炉施設の設置位置付近において、東京電力株式会社が各号炉の原子炉設置許可申請及び設置変更許可申請に当たり行ったボーリング調査及び試掘坑調査により存在が確認された断層は、政府は、安全上支障となるものではないと判断している。 一の1の(5)について 一般に、地すべり性の断層は、(1)線状地形は連続して存在しない、(2)断層面は円弧状を示し、地下深部へは連続しない、(3)上盤側の地層は後方回転を示す、(4)上方の地層の鉛直変位量は下方の地層のそれよりも大きい等の特徴を有していることから、空中写真の判読及び露頭の観察によりこれらの特徴を有しているものかどうかをみることにより、地すべり性の断層かどうかを判断することができる。 一の1の(6)について 東京電力株式会社が実施した当該原子力発電所の敷地及び敷地周辺の地質、地盤に関する調査については十分に行われていることから、政府は、妥当なものと判断している。 一の2の(1)のア、(2)及び(3)について 東京電力株式会社が実施した当該原子力発電所の敷地及び敷地周辺の地質、地盤に関する調査については十分に行われていることから、政府は、妥当なものと判断している。その調査内容も含め、当該原子炉設置許可及び設置変更許可に係る安全審査(以下「安全審査」という。)を行った結果、安全審査で評価した活断層以外には、当該原子炉施設の安全性に影響を与えるような活断層はないと判断している。また、政府は、今回指摘された刈羽村寺尾に見られる断層については、東京電力株式会社から写真、露頭のスケッチ等の情報、地元研究グループが作成した露頭のスケッチ等の情報を入手し、検討を行ったところであり、これらを踏まえ、当該断層は地すべり性の断層であると判断している。 一の2の(1)のイについて 今回指摘のあった断層については、現在まで得られた情報により地すべり性の断層と判断しており、現地調査の必要は特にないものと考えている。今後新たな事実が明らかとなれば、情報の一つとして研究してまいりたい。 一の2の(1)のウ及び(3)のエについて 前述のとおり、今回指摘のあった断層は地すべり性の断層であると判断されることから、政府は、試掘された現場を調査する必要は特にないものと考えている。 一の2の(3)のアについて 今回指摘された断層露頭における椎谷層の変位量については、東京電力株式会社から入手した写真及び露頭スケッチにより安田層の変位量よりは小さいと判断している。 一の2の(3)のイについて 東京電力株式会社から入手した写真によれば、今回指摘を受けた断層露頭の椎谷層内にみられる断層は、同層上限面付近では開離している部分も認められるが、その下方延長ではいずれの断層もすじ状となっている。また、東京電力株式会社から入手した写真及び露頭スケッチによれば椎谷層中には部分的に破砕状となっている箇所があると推定される。 一の2の(3)のウについて 確認している。 一の2の(4)について 当該原子炉施設を支持する地盤は、原子炉施設を支持する上で必要な地耐力を有するとともに、地震による地盤破壊や荷重による不同沈下を起こすおそれはないと判断している。 一の2の(5)のアについて 政府は、安全審査において、当該原子炉施設の耐震設計上考慮する地震は、過去最大の地震、活断層の活動性等から適切に想定されており、当該原子炉施設の耐震性は十分確保し得るものであると判断している。また、当該原子炉施設の設置位置付近において存在が確認された断層は、安全上支障となるものではないと判断している。 一の2の(5)のイについて 前述のとおり、検討を行っている。 一の2の(6)について 今回指摘のあった断層については、現在までに得られた情報により地すべり性の断層と判断していることから、政府は、現地調査の必要は特にないものと考えている。
二の1について (1)のアの事件の発生は、昭和六十四年一月六日午前四時二十分である。国が通報を受け取った時刻は午前十時ごろ、発生から約五時間四十分後である。福島県が通報を受け取った時刻は午前十一時二十五分ごろ、発生から約七時間五分後と聞いている。関係市町村が通報を受け取った時刻は午前十一時四十分ごろ、発生から約七時間二十分後と聞いている。また、マスコミに対しては、東京電力株式会社が午後二時にプレス発表文を配布の上、説明を行っている。
二の2について 平成五年二月十三日に発生した東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所の火災に関する地元自治体への通報については、東京電力株式会社からは、担当者が通報することを失念していたため遅れたものと聞いている。
二の3の(1)について 平成五年二月十三日に発生した東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所の火災に関する地元自治体への通報については、東京電力株式会社からは、担当者が通報することを失念していたため遅れたものであり、通報の仕方等についての調整に時間を要して遅れたものではないと聞いている。 二の3の(2)について 電気事業者から国及び地元自治体への連絡体制については、電気事業者自らが設け、その整備・充実を図っているものである。
二の4の(1)について 火災原因調査については、地元消防機関において調査を進めているところである。 二の4の(2)について 消防法の趣旨にかんがみ、遅滞なく通報すべきであったと考える。 二の4の(3)のアについて 政府としては、原子力発電所において火災が発生した場合、電気事業者は地元消防機関を始めとする関係機関に遅滞なく通報すべきであると考えており、従来から、通報の遅延がないように指導しているところであるが、今回、このような通報の遅延が生じたことは、誠に遺憾である。 二の4の(3)のイについて 今回の通報遅延にかんがみ、消防計画に基づく迅速な通報について指導を行ったところである。 |