質問主意書

第126回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇号

水産部門における試験研究機関の体制等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成五年六月十日

林 紀子   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   水産部門における試験研究機関の体制等に関する質問主意書

 いま日本の漁業は、遠洋漁業の縮小、資源の枯渇、輸入水産物の急増、魚価安、経営困難、後継者不足、高齢化などで、深刻な状態に陥っている。政府は今日の状態をもたらした自らの責任を明らかにするとともに、漁業の再建、漁民経営をまもるための施策づくりに全力を挙げなければならない。
 そうした今後の漁業振興の上で、試験研究機関の果たす役割が一層大きいものになっていると考える。我が国の周辺水域が、漁場の破壊と海の汚染、資源の枯渇がすすんでいる下で、先般発表された漁業白書でさえ資源を維持・回復し、持続的利用を図る必要性を述べている。しかしそのためには、試験研究活動の一層の推進が不可欠であるし、また、そのことを通じて国際的に日本の漁業に対する理解と信用を高めることが期待されている。
 ところが、最近の国立の水産研究機関の機構改革の推移をみるに、政府が真にその重要性をとらえているとは思えない。今年、熱帯農業研究センターが改組されて発足する国際農林水産業開発研究センターに水産部が設けられたが、この定員七名の内六名が既存の研究所からの振替となった。さらに引き続いて、来年度設置の方向が出されている水産研究所の亜熱帯支所の定員(研究職)の大部分についても各研究所からの振替によって行う方針と聞いている。必要な機関を新たに設置していくことは当然であるが、これらの構想は、従来の研究機関にとっては事実上の定員削減であり、その定員規模からみても少なくない削減といえる。これは、今日の情勢からみても極めて大きな矛盾をもつものと考える。
 そこで以下、水産部門における試験研究機関の体制等に関して質問する。

一、深刻な漁業の現状にたち、今後の水産業発展にとって、国立の試験研究機関の果たすべき重要性について、政府はどのように考えるか。

二、「科学技術会議第一八号答申」-平成四年一月二四日-(以下、「一八号答申」という。)においても公的部門における人材の確保を挙げ、「定員の確保をはじめ、要員の拡充を図る」としているところだが、政府のやり方は新機関を作るたび、その大部分の定員を従来の機関から拠出させ、そこにしわ寄せしてきているのではないか。こうしたやり方は、「一八号答申」とは異なるものではないのか。政府の基本姿勢として、必要なものは新規定員で行い、従来の研究体制に犠牲を強いるようなやり方をとるべきでないと考えるがどうか。
 またこれは、研究者の労働条件を改善していくという国の政策とも対立することではないか。

三、亜熱帯支所は、今日の水産をめぐる情勢の中でグローバルな環境問題に焦点を当てながら、空白水域の克服を目的に設置されるものと思われる。しかし国際農林水産業開発研究センターと同じく、当面の必要性に応じてこのような新機関が作られるにしても、同時に全体の水産研究についての将来展望、各研究所の位置づけなどを明確にしていかなければ、既存の研究所体制がなし崩し的に縮小されていくと考えるがどうか。

四、亜熱帯支所設置で定員を振り替えられる各研究所においては、今後の漁業振興のために大いに試験研究を発展させていく上で支障を来すのではないか。どのように対処していくつもりなのか。

五、亜熱帯支所の建設には、多大な予算を必要とすると思われる。このための予算措置によって、従来からある研究所の施設改善が遅れることのないようにすべきであるがどうか。
 この点についても「一八号答申」にあるように、むしろ充実させる方向こそが政府の方針と考えるが、どのように取り組むのか、明らかにされたい。

  右質問する。