第125回国会(臨時会)
答弁書第三号
内閣参質一二五第三号 平成四年十二月二十二日 内閣総理大臣 宮澤 喜一
参議院議員紀平悌子君提出平成四年四月の診療報酬改定に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員紀平悌子君提出平成四年四月の診療報酬改定に関する再質問に対する答弁書 一について 平成四年四月の診療報酬改定に当たっては、物価及び賃金の動向等医業費用の動向のほか、医業収入の動向も踏まえる等医療を取り巻く諸状況を総合的に勘案して、その引上げ率を五・〇パーセントとして設定したところであり、当該引上げ率の設定は、適切なものと考えている。 二について 平成三年六月に実施された中央社会保険医療協議会の医療経済実態調査は、前回調査時(平成元年六月)と比べて、医業収入から医業費用を差し引いた医業収支差額が減少する等医業経営をめぐる状況が厳しくなったことを示すものであった。こうした実態等を踏まえ、今回の診療報酬改定においては、五・〇パーセントという近年にない大幅な診療報酬の引上げが行われたものであり、健全な医業経営を確保する上でも適切な措置が講じられたものと考えている。 三について 今回の診療報酬改定においては、全体として健全な医業経営が確保されるよう引上げ率を設定するとともに、良質な医療の効率的な供給を確保するという観点から、提供される医療サービスの質に応じたきめ細かな評価が行われているところである。したがって、適切な医療サービスを提供している医療機関については、適切な医業収入の確保が図られているものと考えている。
四について 診療報酬は、適切な水準の医療サービスを安定的に供給できるよう設定されているところであり、我が国における国民の平均寿命が世界最高水準に達していることなどに見られるように、現在の国民医療費の下で提供されている医療サービスの水準がOECD諸国と比べて低いものであるとは考えていない。
五について 平成四年度の厚生省の看護婦等確保対策費(約八百二十一億円)のうち、看護婦等養成所運営費に係る予算として、民間の養成所に対して六・九パーセント、公立の養成所に対して二・一パーセント、国立の養成所に対して九・四パーセントが配分されている。
六について 「地域のかかりつけ医師のプライマリ・ケア機能の評価を加味」したとは、患者の病歴や生活背景等を熟知した地域のかかりつけ医師が継続的に療養上の指導を行うことが、成人病等の疾患の治療の上で、効果的であると考えられることから、今回の診療報酬改定において、こうした機能を評価したことを意味するものである。 七について 療養上の指導が行われた場合、当該指導の費用は、基本診療料等の中に含まれており、適切に評価されているところであるが、さらに、良質な医療の効率的な供給という観点から、今後ますます患者の増加が予想され、疾病対策上特に適切な対応が求められる成人病等の疾患に係る計画的な療養上の指導について、特定疾患療養指導料として評価することとしたものである。 八について 慢性腎炎については主として腎疾患の専門医、アレルギー性鼻炎については主として耳鼻科医又はアレルギー性疾患の専門医、アトピー性皮膚炎については主として皮膚科医又はアレルギー性疾患の専門医、心筋梗塞については主として循環器病の専門医、慢性関節リウマチについては主として整形外科医又はアレルギー性疾患の専門医による診療が必要である場合が多いと考えられることから、地域のかかりつけ医師のプライマリ・ケア機能を評価した特定疾患療養指導料の対象疾患になじまないと判断したため、今回、特定疾患療養指導料の算定対象としなかったものである。 九について 特定疾患療養指導料は、初診の日から起算して一月を経過した日以降に、地域のかかりつけ医師が計画的な療養上の指導を行った場合に、これを評価するものである。一方、初診時基本診療料は、初診の際に行われる診察行為のほかに、簡単な診療行為の費用を一括して評価するというものであり、当該初診の日から一月以内に行った療養上の指導の費用についても、当該初診時基本診療料に含まれているところである。 十について 外来患者に対する適正な薬剤投与とは、同種の効能又は効果を有する薬剤を重複して投与したり、同一薬剤を長期にわたり漫然と投与するのではなく、患者の特性に応じ、投薬の有効性や効率性等を総合的に勘案した上で、薬剤の投与を行うことである。
十一について 平成二年の医療施設静態調査によれば、平成二年十月一日現在の有床の一般診療所における看護婦、看護士、准看護婦及び准看護士の数は合計で八万七千八百九十一人、看護業務補助者の数は二万八千八百四十五人であり、一施設当たりの平均数は、合計約四・九人となっている。 十二について 一般に、有床診療所においては、看護要員は外来患者に対する対応を主たる業務としており、入院患者に対する看護体制が組まれている病院とは提供される看護サービスの質が異なっている。したがって、有床診療所における入院患者に対する看護を病院と同様に評価することは適切ではないと考えている。 十三について 平成二年の患者調査によれば、平成二年九月一日から同月三十日までの間に一般診療所を退院した患者の平均在院日数は二十八・二日となっている。一般診療所を退院した患者の平均在院日数については、病床規模別の集計は行っていない。また、四十八時間を超えて患者を入院させていた診療所の数については、調査を行っていない。 十四について 有床診療所は、恒常的に一定程度以上の期間同一の患者を入院させることを想定しておらず、基準給食及び基準寝具設備を承認することは適当ではないと考えている。 |