第125回国会(臨時会)
質問第四号
シーレーン防衛に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成四年十二月一日 翫 正敏
シーレーン防衛に関する質問主意書 シーレーン防衛は政府が従来から進めてきた防衛政策の一環をなすものであり、またこれに対しては国会においても様々な議論がなされてきた。米ソ冷戦構造が崩壊した今日、情勢の変化に伴う見直しがこれについても行われるべきであり、政府の見解を明らかにするために以下質問する。 一 シーレーン防衛の基点と方向 1 政府は従来よりシーレーン防衛において「航路帯を設ける場合にはおおむね一千海里程度の海域において海上交通保護を行い得ることを目標」(八三年度版『防衛白書』八九頁)にしているが、我が国は縦に長い地形であり、例えば宗谷海峡と対馬海峡とは一千海里離れている(大賀良平著「シーレーンの秘密」潮文社二九頁)。従ってその基点をどこにするかで、その航路帯の通る方向は大きく異なることとなる。よって航路帯を設ける際のその基点はどこか明らかにされたい。
二 我が国のシーレーンを脅かす相手について 矢田次夫統合幕僚会議議長(当時)は「現実に自由主義陣営の生命線であるシーレーンを脅かす『能力』を持っているのは、客観的に見てソ連しかないとわれわれは見積もっております」(『文藝春秋』八三年四月号)と述べ、伊藤宗一郎元防衛庁長官も「シーレーンについても日本がこれだけ努力している、これだけの装備を持っているとなれば、具体的に申し上げて私は前防衛庁長官だからはっきり言うけど、ソ連は来ませんよ。何もなければ来ますが、これだけの潜水艦もある、これだけ飛行機もある、ソ連の潜水艦を探すP3Cという対潜哨戒機も七十五機持っている、となれば、来ないです」(『自由』八三年五月号)と発言している。こうした発言から当時の防衛庁・自衛隊の最高責任者が、ソ連が我が国のシーレーンを脅かす意図または能力を持った国であるとの認識を持っていたことをうかがわせる。 1 この当時政府は、ソ連が我が国のシーレーンを脅かすものと考えていたのか。
三 戦時における海上輸送上の重点について 戦時における海上輸送は、その稼働率に重点を置くか、あるいは船舶損害防止に重点を置くかで、輸送当事者と防衛当事者間で意見が対立する。例えば、第二次大戦時のわが国においては、当初「海軍としては、極力船団航行を勧奨、指導してきた。しかし海運当事者側からの稼働率重視の要望に押され、わずかの隻数で船団を編成することを余儀なくされた」(防衛庁防衛研修所戦史室著「戦史叢書『海上護衛戦』」三四三頁)が、大戦末期になると「船舶損害防止の重大性が、稼働率向上の要請を制するところとなり、一コ船団当たりの護衛艦隻数を増加させるため、従来の二~三コ船団をまとめて一つの大船団とすること、すなわち大船団主義が採用されることと」(同上三四四頁)なった。
四 シーレーン防衛作戦における費用対効果比について 近代兵器は大量の石油を消費する。例えば、通常型空母は一ガロン当たり一七フィートしか進まず、F-4戦闘爆撃機は一時間当たり一六〇〇ガロンの燃料を消費する(Center for Defense Information発行『THE DEFENSE MONITOR』 Vol. XXI, Number2 1992)いう。従ってシーレーン防衛作戦において確保された石油量に比して、同作戦において消費した燃料量が上回れば、この作戦は費用対効果比の観点から破綻する。
1 シーレーン防衛作戦において消費する燃料量は、同作戦において確保される石油量を常に下回ると見積もっているのか。
五 シーレーン防衛研究について 「日米防衛協力のための指針」にもとづき防衛庁と米軍との間でシーレーン防衛共同研究が開始され、八六年一二月にはその作業を終了した。その結果、「一定の前提の下における日米のシーレーン防衛能力の検証ができたほか、シーレーン防衛構想、共同作戦要領に関する日米相互理解の増進などの成果を得ることができた」(八八年度版『防衛白書』一九五頁)。しかしながらもはや冷戦は崩壊し、この研究がなされた当時とは情勢は一変している(例えば、当時米海軍が使用していたフィリピンのスービック海軍基地は現在フィリピンに返還されている)。 1 日米間において、この共同研究の見直しをしたのか。また見直しをする予定はあるのか。
右質問する。 |