質問主意書

第124回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

平成四年四月の診療報酬改定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成四年八月十一日

紀平 悌子   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   平成四年四月の診療報酬改定に関する質問主意書

 政府は、医療法改正に先立って、本年四月一日付で診療報酬の改定を行い、改定枠五・〇%、内訳を医科五・四%、歯科二・七%、調剤薬局一・九%としたが、同時に薬価基準で八・一%の引下げを図ったため、差引きで実質医療費改定率は二・五%に過ぎなかった。
 その一方今回の改定では、高齢化社会の急速な進行に伴い医療体制の再編成が急務であることから、要介護のお年寄りのための「在宅総合診療料」「訪問診察料」の新設、訪問看護報酬の引上げ、看護料の平均二〇%引上げなど見るべき改革も多い。
 しかし日本は経済大国といわれながらも医療費の総額は先進国中十四位に抑えられ、今回の改定でも看護料や在宅診療の財源として外来診察料が大幅に引き下げられている。
 また一九八〇年を一〇〇として比較すると一九九〇年には人件費は一三六・五、消費者物価一二二・四であるにもかかわらず、診療報酬は一〇三・一と非常に低い伸びに抑えられているため、看護料が増えても外来収入の減少分に填補され看護婦等の給与・待遇改善に必ずしも直結しない可能性もあるなど問題点も多い。
 一方で政府は経済審議会の答申「生活大国五か年計画-地球社会との共存をめざして」を、去る六月三十日、閣議決定した。そこでは効率優先の企業中心社会から生活者・消費者の視点を重視する社会への転換を目指し、時短・住宅・下水道普及等とともに老人福祉の充実を挙げている。その精神を踏まえれば医療の中核である病院の施設・人員の水準を向上させる方向での医療費の改定こそが急務であり、そのための財源の確保が必要である。
 右の趣旨により、以下、医療費改定につき質問する。

一 今回の診療報酬実質改定幅が二・五%にとどめられたのはどういう根拠によるものか。

二 消費税の税収分を用いて今後の大幅な診療報酬引上げの財源とすべきと考えるがどうか。

三 現在、国立の看護婦養成施設は一八五(平成三年四月現在)と全体の一二%に過ぎず、国立大学の病院では附属看護学校がなく民間養成の看護婦で賄っている所もあるが、その改善を含め今後の看護婦養成のため、国立施設の大幅増設か民間・自治体立施設への補助を行うべきと考えるがどうか。
 また、老人病院に加え一般病院でも看護婦について医療法基準を満たしていない施設を認めるに至ったが、これはむしろ医療の質の低下を招くもので、本来十分な看護婦供給体制を整備するという医療政策に反するように思われるがどうか。

四 今回の改定で病院・診療所間の外来診察料の差が大きくなったが、これでは病院への患者集中を招きかねず、それに対応するため国・公立病院を原則紹介外来制にするような方針をとるべきではないか。

五 今回の改定で慢性疾患指導料及び外来医学管理料を廃止した根拠は何か。

六 新規に設けられた特定疾患療養指導料の対象疾患はどういう基準で選んだのか、また旧慢性疾患でアトピー性皮膚炎など六十一疾病はなぜ特定疾患の対象外とされたのか、その選択基準の説明を求める。

七 特定疾患療養指導料が初診時及びその後一ケ月間算定されないのはなぜか。

八 今回の改定で課せられた薬剤使用制限について、薬理学の進歩した今日、十種類の薬を必要とする患者は珍しくなく、むしろ治療の必要上、右制限は撤廃若しくは短期間投与薬剤について使用制限から除外する規制緩和が必要と考えるがどうか。

九 診療所相互のみならず病院相互、病院対診療所等すべての医療機関相互の患者紹介・検査依頼につき情報提供料を認めれば、医療機関相互の有機的組織化が促進されると考えるがどうか。

十 今回の改定は診療所の機能を外来へ絞る方向で行われたため有床診療所の持つ入院機能についての配慮が欠けているように思われる。むしろ、大病院への入院患者集中を避け、入院・外来・在宅と一貫して患者を診る有床診療所のシステムを良質な医療の提供者として再評価の上、診療報酬上病院に近い扱いをすべきと考えるがどうか。

十一 基準に沿った寝具・栄養士による給食などを提供している有床診療所につき、基準寝具料・基準給食加算を認めることはできないか。

  右質問する。