質問主意書

第123回国会(常会)

答弁書


答弁書第一六号

内閣参質一二三第一六号

  平成四年六月十九日

内閣総理大臣 宮澤 喜一   


       参議院議長 長田 裕二 殿

参議院議員上田耕一郎君提出首都圏での環境保全等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員上田耕一郎君提出首都圏での環境保全等に関する質問に対する答弁書

一について

 今後の臨海部開発、三多摩地域の開発により、気温上昇及び自動車交通量の増加による大気環境の悪化等が進行することがないよう努めていく必要があると認識している。また、東京では市街地、造成地等植生のほとんど存在しない地区の割合が高いことなどから、三多摩地域等に残された緑地は貴重なものと認識している。
 このため、各種開発計画における適切な環境配慮、自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成四年法律第七十号)等に基づく窒素酸化物総量削減対策の推進、自然公園を始めとする既存の自然環境保全制度の適切な運用等により、総合的な環境保全に努めてまいりたい。

二について

 自動車排出ガスによる大気汚染については、自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法に基づき、国が策定する基本方針を踏まえ首都圏の関係都県知事が策定する総量削減計画において、自動車交通量の見通し等を勘案して、自動車排出窒素酸化物の削減目標量が定められることとなっており、政府としては、その達成のため所要の施策を推進していくこととしている。

三について

 公害健康被害の補償等に関する法律(昭和四十八年法律第百十一号)に基づく第一種地域の指定解除は、近年の大気汚染の状況は気管支ぜん息等の主たる原因とはいえないという昭和六十一年十月の中央公害対策審議会の答申を踏まえて行われたものであるが、最近の大気汚染の状況も、同答申に述べられた状況と基本的には変わりがなく、幹線道路沿道地域を含め、ある地域の患者を大気汚染によるものとみなして民事責任を踏まえた補償を行うことに合理性があるとは判断できないため、同法第二条第一項の第一種地域の指定を行う必要があるとは考えていない。

四について

 二酸化炭素、窒素酸化物等の排出の少ない交通体系を形成する上で、貨物輸送の分野においては、地域内輸送における共同輸送等の推進、中長距離の幹線輸送において最適輸送機関の利用を促進するモーダルシフトの推進及びより低公害な自動車への代替促進が重要であると考えている。また、旅客輸送の分野においては、鉄道・バス等の大量公共交通機関による交通網の計画的かつ着実な整備が重要であると考えている。
 特に、東京圏においては、運輸政策審議会の答申「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」及び「地域における公共輸送サービスのあり方の基本的方向について」に基づき、鉄道の新線建設及び複々線化の推進等並びにバスの輸送サービス及び走行環境の改善等を図ることとし、このため所要の支援措置を講じてきているところであり、今後とも引き続きこれらの施策を進めていくこととしている。

五について

 平成三年十月、再生資源の利用の促進に関する法律(平成三年法律第四十八号。以下「リサイクル法」という。)を施行し、再生資源の利用の促進を図っているところである。
 古紙については、紙製造業をリサイクル法第二条第二項の特定業種に指定し、平成三年度には五十二・三パーセントである古紙利用率を平成六年度までに五十五パーセントとすることを目標としたところである。また、古紙の回収利用の促進のため、古紙利用製品にマークを表示するグリーンマーク事業等を推進している。
 缶については、平成二年の再資源化率がアルミ缶で四十二・六パーセント、スチール缶で四十四・八パーセントであるが、再生資源の有効な利用を図るため、飲料用金属缶をリサイクル法第二条第四項の第二種指定製品に指定し、材質に係る表示の義務付けを行っているところである。
 びんについては、ガラス容器製造業をリサイクル法第二条第二項の特定業種に指定し、平成三年度には五十一・八パーセントであるカレット利用率を平成七年度までに五十五パーセントとすることを目標としたところである。また、リターナブルびん使用促進についても、関係業界に要請しているところである。
 また、古紙、缶、びん等の再資源化のための設備に対する税制・金融上の支援措置等を講じてきたところである。
 平成三年十月、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)の改正により、国民及び事業者の責務として新たに廃棄物の減量等に関し国及び地方公共団体の施策に協力しなければならないこと並びに国及び地方公共団体の責務として国民及び事業者の意識の啓発を図ること等廃棄物の減量その他その適正な処理を確保するための規定が設けられたところである。
 これを踏まえ、平成四年度には、市町村における分別収集、集団回収等の廃棄物回収・再生体制の整備や都道府県における広域的な観点からの減量化への取組を促進するための補助金を創設するとともに、リサイクルセンターを新たに廃棄物処理施設整備費国庫補助金の補助対象に加え、施設基盤の整備を進めることとしている。
 政府としては、引き続き関係法令等の適切な運用により、事業者に対する適切な指導を行うとともに、紙、缶、びん等の再生資源の利用を促進してまいりたい。

六について

 温室効果ガスの排出抑制のための国際的な共通の努力として、第一段階として、温室効果ガスの排出量の安定化を早急に達成する必要がある。このため、政府は、平成二年十月二十三日地球環境保全に関する関係閣僚会議において地球温暖化防止行動計画を決定したところである。この計画においては、二酸化炭素については、一人当たり排出量について二千年以降おおむね千九百九十年レベルでの安定化を図るとともに、革新的技術開発等が現在予測される以上に早期に大幅に進展することにより、排出総量が二千年以降おおむね千九百九十年レベルで安定化するよう努めることとしている。
 また、本年五月九日に気候変動に関する国際連合枠組み条約が採択された。この条約は、先進国である締約国が、気候変動の緩和に関する国の政策及び措置を採ること、これらの政策及び措置が二酸化炭素及びモントリオール議定書の対象とされていないその他の温室効果ガスの排出量を千九百九十年代の終わりまでに従前のレベルまで戻すことが長期の排出傾向を条約の目的に沿って修正することに寄与するものであることを認識して採られることになること等を規定している。
 政府としては、今後とも地球温暖化防止行動計画を引き続き積極的かつ確実に推進してまいりたい。

七について

 地球温暖化防止行動計画では、分野ごとの増加予測と抑制目標の定量的な設定は行っていない。

八について

 地球環境保全への取組については、国際的にも種々の議論が行われているところであるが、今後とも地球環境保全の政策の理念や具体的施策について議論を深めていくことが重要である。政府として、こうした議論の進展をも注視しつつ、地球環境保全の在り方について、費用負担の問題も含め、勉強してまいる所存である。