質問主意書

第123回国会(常会)

質問主意書


質問第二二号

一九九二年四月十八日付け科学技術庁通知文書「核物質の輸送に係る情報の取扱いについて」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成四年六月十九日

山田 俊昭   


       参議院議長 長田 裕二 殿


   一九九二年四月十八日付け科学技術庁通知文書「核物質の輸送に係る情報の取扱いについて」に関する質問主意書

一 通知文書の法的意味について

1 文書内容について関係省庁で合意し、指導したとあるが、七省庁(科学技術庁、警察庁、法務省、外務省、通産省、運輸省、海上保安庁)の「核物質防護についての重要事項に関する関係省庁の連絡協議会」において、文書内容と通知、指導方法について合意したのか。
2 一九八九年六月二十六日に七省庁「核物質防護についての重要事項に関する関係省庁の連絡協議会」が設置されたそうだが、この協議会は何に基づいて設置されたものか。また、この協議会の法的根拠は何か。
3 七省庁の連絡協議会は、何を目的として設置されたのか。今までに協議会で合意、決定された事項は、今回の通知文書の他にどのようなものがあるのか。
4 七省庁連絡協議会で合意、決定されたことは法的根拠があるのか。また、強制力があるのか。
5 科学技術庁は七省庁連絡協議会の代表、事務局等何になるのか。
6 今回の通知文書は七省庁連絡協議会の合意であるのに、なぜ、七省庁連絡協議会名でなく原子力安全局長名で出されたのか。
7 原子力安全局長名で出された文書は、事業者、自治体それぞれに法的強制力のあるものか。また、通知文書の法的根拠は何か。
8 同局保障措置課長名で出された文書は、事業者、自治体それぞれに法的強制力のあるものか。また、通知文書の法的根拠は何か。
9 文書管理の上で、保障措置課長名文書と原子力局長名文書の関係は一体となった文書であるのか、前者が後者の補足か、全く別の文書であるのか、両者の関係はどうなっているのか。
10 添付されている「別紙」は、両文書とそれぞれどのような関係にあるのか。
11 別紙に付けられている「別添」の表作成のもとになった、主要各国の法律、規則、制度等の名称はそれぞれ何か。
12 今回の事業者に対する指導文書の内容は「輸送経路と日時を公表するべきでない。」としている。これは運輸省所管の運搬方法の確認に係ることであり運輸省名で指導すべきものではないか。または、公安委員会への運搬の届出に係ることであり警察庁名で指導すべきものではないか。
13 関係六市町には都道府県を通さず、国から文書が送られているが、このような指導はいかなる法律において認められているのか。
14 七省庁連絡協議会には法務省も参加しているが、今回の通知内容、通知手続は法的に問題はなく法務省も合意しているのか。

二 「放射性物質安全輸送連絡会」(五省庁連絡会)と「核物質防護についての重要事項に関する関係省庁の連絡協議会」(七省庁連絡協議会)について

1 五省庁連絡会と七省庁連絡協議会とはいかなる関係にあるのか。それぞれの会の目的の違いは何か。
2 今回の通知は、核物質防護に関するIAEA勧告(INFCIRC/225)に基づき、原子力委員会決定を踏まえたものだとしている。
 では、一九八二年IAEA勧告(TECDOC/262)に基づく関係省庁の報告、決定はあるのか。輸送中事故に対処するための「緊急時対応計画」、「作業、対応マニュアル」等は関係省庁それぞれで作成されているのか。
3 五省庁連絡会の合意、決定事項で、事業者及び自治体に対して何か通達、指導、依頼をしたことがあるか。あるならば、年月日、内容について示せ。
4 輸送中事故が起き事業者の手に負えない場合、国の関係機関が対処するのか、自治体が「地域防災」として対処するのか。法的にどのようになっているか。
5 輸送中事故が起きた時、実際に緊急時対応、対処作業等をする官庁は消防庁の他にはどこか。
6 消防庁は五省庁連絡会にも参加しており、事故対応する機関でありながら、なぜ、消防庁、消防関係機関には核燃料物質輸送の情報を伝えないのか。事前に情報が伝わっているかどうかによって、始動、安全、対応効果が全く違うことは常識である。
 どのような種類の物質なのか不明であると装備、対応もままならないのではないか。

三 核物質防護について

1 天然六フッ化ウランは、核物質防護条約等における核物質防護の水準を示す区分表に含まれておらず、原子炉等規制法においても「防護対象特定核燃料物質」に指定されていないが、核物質防護の対象物質であるとする法律上の根拠は何か。
2 一九七八年から公安委員会に「核燃料物質等運搬届出書」が提出されるようになったが、これは何の目的で提出されるのか。
3 天然六フッ化ウランはなぜ、公安委員会への運搬届出の義務がないのか。
4 天然六フッ化ウランはなぜ、運輸省への運搬確認の届出義務がないのか。
5 核不拡散を目的に核物質の移動、貯蔵量を管理し、それを国際的に公開することを前提とした核査察を担当する原子力安全局保障措置課が、核物質防護を担当することになったいきさつ、根拠は何か。
6 低レベル廃棄物、高レベル廃棄物は、核物質防護の対象となるのか。
 また、その輸送経路、日時を公表しても差し支えないのか。その理由は何か。

四 安全協定との関係について

1 各自治体と事業者が独自に結んだ安全協定は、核燃料物質輸送の情報について、防災の立場からの安全確保のため、事前の通知が盛り込まれていたものとの認識はあるか。
2 核燃料物質輸送情報を事前に確認し、関係市町村に伝え防災の準備をすることがどのように核物質防護に抵触するのか。
3 島根県での記者会見で道正保障措置課長は「自治体が核燃料物質輸送情報の公開を貫く場合は、事業者側に情報を提供しないよう指導する。」と述べているが、このように安全協定を無視して強い措置をとる法的根拠はあるのか。
4 このようなことは、安全を第一とする原子力基本法に反するのではないか。
5 今回の通知文書の根拠としているIAEA勧告の序論1.3では「勧告された対策は全て、使用・輸送・貯蔵中の核物質、および原子力施設の安全性の目的で立てられた対策に付加されるものであって、その代用となるものではない。」としている。
 輸送中の安全を目的とする「安全協定」の取決めを変えさせることは、IAEA勧告の趣旨に反するのではないか。

五 妨害破壊行為について

1 今回の通知文書の別紙に「わが国においては、一部地域において核物質の輸送に対する妨害行為が発生している」とあり、これは六ケ所村への六フッ化ウラン搬入の際の原発反対運動の抗議行動を指していると、福井県での記者会見で道正保障措置課長が表明した。
 科学技術庁では、原発反対運動をする人達が「核ジャック」もしくは、核物質の散布のために核物質の破壊を前提とした妨害行為をすると認識しているのか。
2 核物質防護における「妨害破壊行為」の定義は何か。
3 妨害破壊行為の「前兆現象」というのがあるとのことだが、「前兆現象」の定義は何か。
4 「前兆現象」について記されている条約、法律、政省令、規則などあるのか。

六 その他

1 核燃料物質輸送の時、警察の警備の出動目的は何か。
2 核燃料物質輸送の監視行動によれば、ある時、ある核燃料物質には警察の警備がなく、ある時、ある核燃料物質には厳重な警備がつく。その基準は核物質防護の防護水準と一致しないが、警察の警備の基準は何か。
3 最も厳しい防護水準を要求される核物質防護区分の区分Iにあたる20%以上に濃縮されたウラン235が、日本では全く無防備で警察の警備もなく運ばれているのはなぜか。
4 今回の通知文書の根拠とされている一九八〇年の原子力委員会核物質防護専門部会の報告に「輸送計画の詳細に係る情報は不必要に分散されないようにすること」という文言があるが、これは専門部会報告のもとになったIAEA勧告にはなかった言葉である。いかなる経緯でこの文言が挿入されたのか。
5 ここでいう「詳細に係る情報」とは何を指しているのか。

  右質問する。