第123回国会(常会)
質問第一五号
北洋漁業の存続と関連産業の救済対策促進等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成四年五月十八日 小笠原 貞子
高崎 裕子
北洋漁業の存続と関連産業の救済対策促進等に関する質問主意書 日本の北洋漁業は、今存亡の危機に立たされている。
一、政府は、昨年の四か国協議(日本、米国、カナダ、ロシア)で、これまでの沖どり継続の方向を百八十度転換し、全面禁止を受け入れたが、これは北洋サケ・マス漁業を壊滅させるものであり、漁業者及び漁業関係者に与える影響は計り知れない。
二、政府は一九九一年十一月末、今までの態度を大きく転換し、公海流し網漁業の操業停止を受け入れると表明した。そして、十二月の国連総会で同趣旨の決議が採択された。これにより北海道、青森、宮城、富山などのイカ流し網漁船約四百五十隻の転・廃業、乗組員約八千人の失業が余儀なくされるばかりか、水産加工、漁網、造船、食品など関連産業への深刻な影響が懸念されている。
三、公海での北洋サケ・マス沖どり全面禁止により、ロシア二百カイリ内での合弁事業対策が、重要な課題とならざるをえなくなっており、地元関係者からも強い要望となっている。しかし、この合弁事業は二十億円を超える赤字を抱えているといわれており、今後の事業の継続は極めて困難な状況にある。政府が国会で度々答弁している国としての支援策の強化をどう図るつもりか。また、サハリン州、カムチャツカ州での孵化場建設などを含む漁業資源増大等の支援対策をどうするつもりか。 四、水産庁は二月中旬から下旬にかけて釧路市、根室市、函館市などの現地を調査しているが、地域の実情及び漁業者や関連産業の状況をどのように認識されたか。
五、サケ・マス沖どりの禁止、北洋底びき網漁業の縮小、加えてイカ流し網漁業の事実上の撤退による大幅な減船は、漁業関係者のみならずこれらを基幹産業とする地域経済に多大な影響を与えている。政府は減船する漁業者への十分な補償と、失業する乗組員の再就職の促進等について万全の救済措置を講ずるべきと考えるがどうか。 六、国際規制による漁業の撤退が行われるたびに問題になるのが、水産関連産業の救済対策である。廃業した漁業者への補償金がほとんど漁協に支払われ、関連中小業者への貸付け金が回収されないために倒産が後を絶たない状況が毎回繰り返されている。
七、イカ流し網漁業にほぼ全面的に依存する函館地方の製網業者の実態は、特に深刻である。三十五社のほとんどは中小零細業者で、資金力に乏しく従業員の平均年齢も五十才以上と高齢のため、事業転換の見通しも立たず、このままでは倒産・失業は必至といわれている。政府は、これらの中小関連企業を救済するために、金融などでの特別な支援策を講ずるべきと考えるがどうか。 八、アカイカ流し網漁業の代替漁法として、表層トロール漁法による漁獲の可能性が報じられているがその見通しはどうか。また他の代替漁法の開発についても、関係業界の要望・意見を十分に取り入れ本格的に取り組むべきと思うがどうか。 九、イカ珍味の原料をアカイカからペルーイカヘ転換せざるをえない加工業者にとって、酸味の強いペルーイカからそれを除去する技術開発に要する費用の負担は非常に大きいものがある。政府は、製品化を促進するために、研究開発費の大幅な増額を図るべきであると考えるがどうか。 十、北海道の漁業関係者は、スケトウダラ等の原魚の確保、ビザ無し渡航の実現などロシアとの交流の強化、拡大を望んでいる。そのためには検疫所や税関の拡充・強化が強く求められている。特にここ数年ロシアとの貿易が活発になり、活きガニなどの輸入が急増していることなどから、現在千歳空港と小樽市の二か所にしか配置されていない食品衛生監視員を、当面道東地方に最低一名配置すること、及び根室市に検疫所出張所を新設することが必要と考えるがどうか。
右質問する。 |