質問主意書

第122回国会(臨時会)

答弁書


第百二十二回国会答弁書第四号

内閣参質一二二第四号

  平成四年一月二十八日

内閣総理大臣 宮澤 喜一   


       参議院議長 長田 裕二 殿

参議院議員稲村稔夫君提出原子力発電施設におけるインターナルポンプ設置認可に伴う政府の認識とその根拠に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員稲村稔夫君提出原子力発電施設におけるインターナルポンプ設置認可に伴う政府の認識とその根拠に関する再質問に対する答弁書

一について

1 公開できるものについては、要望があれば閲覧できるよう体制整備を検討してまいりたい。
2(1) 通商産業省が財団法人原子力工学試験センターに委託した原子炉内蔵型再循環ポンプ設備確証試験(以下「確証試験」という。)では、二台のインターナルポンプを設置した試験で確証試験の目的は達成できている。
 (2) 通商産業省が財団法人原子力工学試験センターに昭和六十三年度から委託しているインターナルポンプ溶接部等信頼性実証試験において、十台のインターナルポンプを設置して試験を行う予定はない。

3(1) 平成三年八月二十三日付け参議院議員稲村稔夫君提出原子力発電施設におけるインターナルポンプ設置認可に伴う政府の認識とその根拠に関する質問主意書の一の9の(2)に記載されている「実炉」とは、東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所六、七号原子炉(以下「柏崎刈羽六、七号炉」という。)と考えられることから、前回の答弁は、確証試験に関して財団法人原子力工学試験センターが作成した原子炉内蔵型再循環ポンプ確証試験に関する調査報告書(以下「確証試験報告書」という。)の記載と矛盾するものではない。
 (2) 確証試験報告書に記載されている「ABWRの評価」は、原子炉圧力容器の構造について一定の条件を想定し、その条件に基づき評価を実施したものである。
 (3) 実用発電用原子炉に関しては、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第四十一条第一項に規定する工事計画の認可は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)(以下「原子炉等規制法」という。)第二十三条第一項又は第二十六条第一項に基づく許可の内容に従って行っている。

4(1) 確証試験において想定した疲れの評価は、発電用原子力設備に関する構造等の技術基準(昭和五十五年通商産業省告示第五百一号)(以下「告示第五百一号」という。)第二条第十八号に規定する「運転状態I」及び同条第十九号に規定する「運転状態II」について行っている。
 (2) 確証試験の疲れ解析においては、インターナルポンプのノズル部周辺の炉水の温度の範囲、圧力の範囲、温度変化率及び温度・圧力変化の繰り返し回数をそれぞれ摂氏約五十五度から摂氏約二百七十九度、〇キログラム毎平方センチメートルから七十七キログラム毎平方センチメートル、摂氏約五十五度毎時及び約五百回と仮定している。

5(1) 確証試験に用いられたインターナルポンプの流量半減時間は、算出の前提条件を一致させれば、柏崎刈羽六、七号炉の増設に係る原子炉設置変更許可申請書添付書類(以下「添付書類」という。)八に記載されているインターナルポンプの流量半減時間と同様のものとなる。
 (2) 確証試験においては、試験に用いたインターナルポンプ本体と同一仕様のポンプについて解析評価を行った。
 (3) 確証試験で用いたインターナルポンプの主要な材質はステンレス鋼であり、同インターナルポンプのモータケーシング上部の内径は二百四十一ミリメートル、高さは約二千六百ミリメートルとなっている。
 なお、その他の曲部曲率等の詳細な設計については、メーカーのノウハウを含んでおり、公表していない。

6 添付書類八に記載されているインターナルポンプの性能特性は、電気事業者及びメーカーが行った試験結果によるものである。
7(1) 柏崎刈羽六、七号炉のインターナルポンプの具体的な振動特性試験については未定である。
 (2) 確証試験において、二台のインターナルポンプによる不均衡運転を行っているが、各インターナルポンプの振動は十分小さく安全上問題はないと評価している。
 (3) インペラ及びシャフトの曲げ及びねじり振動解析については、既に実施されていたので、確証試験においては実施していない。
 (4) 確証試験におけるインターナルポンプの振動特性試験においては、モータケーシングの共振が確認されているが、その際の回転数は常時運転される回転領域から外れており、かつ、同回転数においてモータケーシングに与える影響は十分小さいため、安全上問題はないと評価している。
 (5) 柏崎刈羽六、七号炉のインターナルポンプのディフューザとインペラとの間げきの詳細については承知していない。

8(1)及び(2) 確証試験においては、原子炉圧力容器ノズル部(ポンプ取付用)の応力評価上重要と思われ、かつ、計測可能な点に計測点を設けて熱変形試験を実施するとともに応力解析を実施し、これらの結果を比較することにより応力解析手法及びそれにより得られた結果の妥当性を評価・確認している。
 (3) 確証試験において計測された一方向のみのひずみを基に応力値を計算する場合には、約三十キログラム毎平方ミリメートルとなる。
 (4) 確証試験においては、応力集中係数は、ヘイウッドによる応力集中係数の計算式を用いて算出した。
 (5) 確証試験では、変位データの測定は実施していないが、外観検査等により安全上問題がないことを確認している。

9 確証試験における連続運転試験は、疲労評価のための試験ではなく、インターナルポンプの運転の安定性を確認することを目的として、水力特性及び振動特性の経時変化を測定したものである。
10 確証試験における分解点検で見られた条こんは、一般の回転機械と同様の初期摩耗によるものと推定できる。また、黒さびについても問題となるものではなかった。

二について

1 柏崎刈羽六、七号炉のインターナルポンプ及びノズル部の健全性の確認のために必要となる詳細な評価については、工事計画認可申請書が提出された段階で行う。
2 柏崎刈羽六、七号炉の増設に係る原子炉等規制法第二十六条第一項に基づく原子炉設置変更許可申請に係る安全審査(以下「安全審査」という。)においては、ポンプ・ミサイルの可能性について検討しており、その結果、ポンプの破損限界に達するような加速要因はないことを確認した。また、破損の確率については評価していない。
3(1)から(3) 安全審査においては、安全保護系の信頼性が高いこと等から、インターナルポンプが全台停止し、かつ、スクラムしない場合において急に高回転数で再起動するような事象については検討していない。
 (4) 柏崎刈羽六、七号炉の原子炉スクラム信号の種類には中性子束高が含まれており、スクラム信号の種類の中に炉心流量の急増という事象を加える必要はないと考えられる。

4 インターナルポンプは、従来の外部再循環ポンプに比べると慣性モーメントが小さいという特徴を有している。
5(1) 添付書類八に記載されている運転特性図(以下「運転特性図」という。)においては、インターナルポンプのキャビテーション制限よりも気水分離器性能の制限の方が厳しく、インターナルポンプのキャビテーション制限曲線は気水分離器制限曲線より高流量低出力側となるため運転特性図には記載されていない。
 (2)及び(3) 柏崎刈羽六、七号炉は、自然循環により運転できる設計とされているが、計画的な運転は最低ポンプ速度以上で行われることとされており、最低ポンプ速度曲線より低流量側での計画的な運転は行われないと承知している。このため、運転特性図では自然循環が点線で表記されていると承知している。
 (4) 柏崎刈羽六、七号炉は、通常運転中電気出力が百パーセントを超えないよう自動制御される設計となっている。なお、インターロックの詳細については承知していない。
 (5) 柏崎刈羽六、七号炉の出力制御方法に関して、炉心流量五十パーセント未満の領域での出力制御は、主に制御棒と炉心流量との組合せにより円滑に行われることとなるため、炉心流量のみによる出力自動制御は行わないとされている。

6(1)及び(2) 安全審査における事故解析については、「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針(昭和五十三年九月二十九日原子力委員会決定、平成元年三月二十七日原子力安全委員会一部改訂)」に従い、関係する事故ごとに評価結果が厳しくなるよう炉心流量を仮定して解析を行っている。
 (3) 安全審査における動特性の解析については、各評価目的に照らし炉心流量を設定しており、炉心流量を百十一パーセントとする必要はない。

7 電気事業法第四十七条に基づく定期検査において、インターナルポンプの分解は、インペラ及びシャフトについては原子炉圧力容器上方から、モータ部については原子炉圧力容器下方から取り外し、分解して目視等により点検を実施し、分解の仕方と逆の過程で組み立てられると承知している。また、取付溶接部については漏えい試験及び水圧試験を実施するものと承知している。
8 安全審査における最小限界出力比の評価に当たっては、結果が厳しくなるよう初期条件を設定しており、自然循環状態における原子炉出力は低く、この状態における最小限界出力比は、定格出力の運転状態の最小限界出力比を下回らない。このため、自然循環状態についての解析は行われていない。
9(1)から(3) 安全審査における動特性解析は、自然循環時を含む運転範囲の全領域を考慮し、必要に応じて特定の初期条件を設定した上で解析しており、その内容は添付書類八に記載されている。
 なお、事故時については、安全保護系により原子炉はスクラムするため、動特性解析の必要はない。
 (4) 添付書類八に記載されている動特性解析においては、評価目的に照らして適切な条件を設定しており、その解析結果は自然循環状態についても包絡している。なお、この解析において、給水加熱量の減少による出力上昇は考慮されている。

10(1) 原子力安全委員会においては、柏崎刈羽六、七号炉の原子炉圧力容器内部構造物(炉心シュラウド、上部格子板、炉心支持板、制御棒案内管等の炉心支持構造物並びに気水分離器、蒸気乾燥器、再循環ポンプ、給水スパージャ、高圧炉心注水系配管及びスパージャ、差圧検出管、圧力容器頂部スプレイ・ノズル等の内部構造物)が、通常運転時、運転時の異常な過渡変化時及び事故時の荷重に対し、原子炉圧力容器内の温度、圧力等を考慮して必要な強度及び機能を保持することができるように設計されることを、平成二年二月に通商産業省から提出された「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所の原子炉の設置変更(6、7号原子炉の増設)に係る安全性について」(以下「安全審査書」という。)及び「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(6、7号原子炉の増設)」(以下「変更許可申請書」という。)に記載された事項に基づき確認した。
  (2) 安全審査書及び変更許可申請書は、インターナルポンプ採用炉心に対してのものである。
  (3) 柏崎刈羽六、七号炉の燃料棒の振動及びフレッティングコロージョンについては、「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針(昭和五十二年六月十四日原子力委員会決定、平成元年三月二十七日原子力安全委員会一部改訂)」に基づき、燃料棒の振動を抑えるためのスペーサが従来の沸騰水型軽水炉で多くの使用実績を有するものと同様のものとされるなど、化学的効果、静的及び動的荷重等を考慮した設計とされることを確認した。
 気水分離器の振動及びブローダウン時の強度など、その詳細については承知していない。

11(1) 柏崎刈羽六、七号炉の炉心流量急減スクラムの設定値は、工事計画認可申請において添付書類十の再循環ポンプ全台トリップ事故時の解析で用いた値を下回らないよう設定されるものと承知している。
  (2) 柏崎刈羽六、七号炉における約七十パーセントの炉心流量での原子炉出力は、約八十パーセントとなっている。この出力以下の状態において再循環ポンプが全台トリップした場合は、初期状態における出力が小さいことから燃料が十分除熱される。したがって、炉心流量七十パーセント以下における炉心流量急減スクラムは必要ないと考えられる。

12 原子力安全委員会は、柏崎刈羽六、七号炉に関し、インターナルポンプの部分台数運転条件においても炉心流量の分布を偏りなく十分な精度で計測できることを確認したものであり、今後柏崎刈羽六、七号炉の詳細な設計において具体的にどのような炉心流量の計測点の数、位置、センサーが選択されるかについては承知していない。
13 安全審査においては、同一の常用高圧母線に接続しているインターナルポンプが最大でも三台であること等から、インターナルポンプ四台停止の解析は行っていない。
14 柏崎刈羽六、七号炉のインターナルポンプのモータケーシングの健全性の詳細は、承知していない。
15 安全審査における冷却材喪失事故の安全解析においては、高圧炉心注水系配管及び給水系配管の口径を用いるのではなく、高圧炉心注水スパージャ及び給水スパージャのノズル部の面積を用いて安全評価を行っている。
16 安全審査において冷却材喪失事故は、評価結果が最も厳しくなる事象を選定しており、万一、インターナルポンプのノズル部が破損したとしても、その場合における冷却材の流出量は、添付書類十で想定している流出量よりも小さい値となっている。
17(1) 回転機械が取り付けられた場合でも、告示第五百一号の規定は適用される。
  (2) 告示第五百一号第十七条第一項第五号ただし書の規定は、同号本文を適用しない条件を示したものであり、著しい配管反力がある場合には同号本文の規定が適用される。

三について

1(1) 確証試験において調査した海外のインターナルポンプの故障、不具合事例情報については、そもそも非公開を前提とすることで入手し得た経緯にかんがみ、その公開につき相手方の了解を得るつもりはない。
 (2) これまでのところ、インターナルポンプの不具合に起因して原子炉が停止した等の公開情報は承知していない。

2(1) 柏崎刈羽六、七号炉のインターナルポンプの軸受の寿命については承知していない。また、確証試験で使用したインターナルポンプの軸受については、健全性が確認されていると認識している。
 (2) 柏崎刈羽六、七号炉の原子炉設置変更許可申請は、ウェットモータ型インターナルポンプで申請されているため、安全審査の中ではドライモータ型インターナルポンプの評価は行っていない。
 なお、ウェットモータ型とドライモータ型の構造上の違いは、ウェットモータ型では、メカニカルシール部がなく、モータの巻線が水に浸っているという点である。また、ウェットモータ型の特徴は、ドライモータ型に比べて保守点検が容易であり、炉水漏出のおそれが少ないという点である。
 (3) ドイツのKSB社である。

3(1)及び(2) 民間で実施されている電力共通研究の成果のうち、学会等に発表されている文献等に記載されている内容については、安全審査において活用している。
 (3) 確証試験は、インターナルポンプシステムの安全性及び信頼性を確証し、その実用化を促進するために行われたものであり、その結果は安全審査に活用している。

4 原子炉等規制法第二十六条第一項に基づく原子炉設置変更許可申請に際し、原子炉設置変更許可申請書以外に提出された書類はない。
5 工事計画認可申請書本文及びその添付書類については、工業所有権に関する事項にとどまらず、ノウハウ等保護すべき企業機密に係る事項、原子力発電所の防護管理上重要な事項等が多数含まれており、公開は困難であると考えている。