質問主意書

第122回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一六号

釧路湿原及び阿寒国立公園の保全対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三年十二月二十一日

小笠原 貞子   
高崎 裕子   


       参議院議長 長田 裕二 殿


   釧路湿原及び阿寒国立公園の保全対策に関する質問主意書

一、釧路湿原は全国湿原の約六〇%を占め、わが国最大規模の原生的自然状態を呈する湿原である。湿原はヨシを中心とする草原が大きな特徴と言われ、同時にタンチョウやキタサンショウウオなどが特別天然記念物に指定され、貴重な野性動植物が生息している。
 八〇年にはわが国最初のラムサール条約の登録湿原に指定され、国際的にもその保全対策が強く要請されている。しかし、最近のリゾートブームによるゴルフ場建設計画等湿原保全に対する新たな問題が生じている。そこで、湿原を保全する立場から以下質問する。

1 国立公園に指定されている釧路湿原周辺にゴルフ場建設が相次いで計画されている。すでに、釧路湿原の水系に七つのゴルフ場があり、その上新たに十二か所ものゴルフ場が計画されている。例えば、鶴居村の中雪裡地区に計画されているゴルフ場は、国の特別天然記念物に指定されているタンチョウが生息している地域である。タンチョウ保護関係者等からも「タンチョウはゴルフ場計画地真下の河川や湧き水に依存しており、ゴルフ場造成による地下水脈の乱れ、河川の水量の増減、農薬散布、化学肥料の大量使用などが、タンチョウの生活環境を著しく悪化させる可能性があります」との指摘がされている。このような、釧路湿原をぐるりと包囲するゴルフ場全体の面積は約五千ヘクタールに及ぶと言われている。タンチョウなどの鳥獣への影響と合わせて、湿原の生命線である水系が網の目のように張り巡らされている中で湿原の保水力の低下、乾燥化などにより、植物の生態系へ多大な影響を与えることは必至ではないか。政府の見解を問う。
2 湿原生態系保全調査の五か年の調査が進行中であり、「ゴルフ場建設」の影響を調査目的・調査事項の対象に直ちに入れるべきと考えるが見解を伺いたい。
3 釧路湿原周辺の開発は、鳥獣や水系に影響を与え、湿原保全に問題が生じていると指摘されている。ところが、国の保護計画は特別地域などの指定地域内だけの保護であり、周辺部を含めた保全計画を立てなければ、タンチョウも湿地も保全ができないことは明白である。北海道庁も「湿原保全基本計画」につき前向きに検討を始めており、湿原を守るべき当事者の国が責任をもって周辺部を含めた「湿原保全基本計画」等を策定するなど、何らかの対策を打つべきと考えるが見解をお伺したい。
4 釧路湿原はラムサール条約の登録湿地に指定され、一九九三年四月には釧路市でラムサール条約締約国会議が開催予定となっている。その開催地にふさわしく、釧路湿原の環境を万全に保全することが国際的にも求められている。この機に公園保護計画を見直し、特別地域や鳥獣保護地区の拡大を図ること及び湿原に影響を与える周辺部用地の買上げなどを図るべきと考えるが、同会議開催に向け、諸対策について明らかにされたい。
5 国立公園等の環境保全を図るため、今後ますます環境行政は重要となる。北海道にある国立公園及び釧路湿原の管理を行う職員の体制を強化する必要があると思われるがどの様に考えているか、また具体的な増員計画を明らかにされたい。

二、阿寒国立公園内屈斜路湖畔のコタン地区におけるゴルフ場建設計画の予定地は国立公園内であり、重視すべき問題である。ゴルフ場の建設規模は開発面積二百七ヘクタール、ゴルフ場十八ホールとコテージなどが計画されている。地元住民は設置場所が釧路川源流に近く、排水や農薬などによる水道水への汚染に不安を持っている。また、摩周湖や屈斜路湖など自然景観を破壊するなどを理由に建設反対を訴えている。こうした国立公園内の普通地域にゴルフ場建設を許していくなら、際限なくゴルフ場ラッシュとなることは明らかであり、公園を保護し管理する立場から望ましくないと思われる。北海道や関係者に対し指導をすべきであるが如何か。

  右質問する。