質問主意書

第122回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四号

原子力発電施設におけるインターナルポンプ設置認可に伴う政府の認識とその根拠に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

   平成三年十一月二十九日

稲村 稔夫   


       参議院議長 長田 裕二 殿


   原子力発電施設におけるインターナルポンプ設置認可に伴う政府の認識とその根拠に関する再質問主意書

 私が第百二十一回国会で提出した本年八月二十三日付け質問四号に対する十月一日付け内閣参質一二一第四号の答弁書について検討した結果、東京電力柏崎刈羽原発六・七号機の設置認可にかかわる安全審査に疑義が生じた。よって、以下の項目につき明らかにされたい。

一、原子力工学試験センターの試験について

1 財団法人原子力工学試験センターの「原子炉内蔵型再循環ポンプ設備確証試験に関する調査報告書」は通産省資源エネルギー庁から貸し出しを受けて目を通したが、このような報告書は、原子力の公開の原則にのっとり、要望があれば頒布できる程度の部数を印刷し、要望に応えられるようにすべきだと考えるが、どうか。
2(1) 「インターナルポンプ設備確証試験」(以下、確証試験」という。)の試験装置は、インターナルポンプ十二台設置の六分の一セクター(六十度)であるが、実機と同じ十台設置模擬で行うべきと考えるが、どうか。
 (2) 「インターナルポンプ溶接部等信頼性実証試験」では、十台設置模擬を行うのか。

3(1) 前記質問四号の質問一の9の(2)項についての答弁は、確証試験報告書の記載と異なるのではないか。(確証試験報告書4.2.5.4.2「ABWRの評価」参照)
 (2) 実機のインターナルポンプ及びノズル等の詳細な図面を知らずして、このようなノズル部等の応力評価はできないと考えるが、どうか。
 (3) 実機の詳細設計が基本設計と異なったときは、基本設計の変更申請が行われねばならないと考えるが、どうか。

4 前記質問四号の質問一の9の(3)から(7)の答弁は、確証試験報告書を参照すると錯誤ではないかと思われる。

(1) 疲労破壊評価は「発電用原子力設備に関する構造等の技術基準」(昭和五十五年通産省告示第五百一号)にいう運転状態I、II及び試験状態などについて行ったのではないか。
(2) 想定した運転状態は、起動、降下、スクラム、圧力試験、異常運転などと考えられるが、それらの状態の原子炉の温度・圧力・その時間変化率及び繰り返し回数はいくらと仮定したか。(告示五百一号には規定がないので、再度問う。)

5(1) 確証試験において使用されたインターナルポンプの慣性定数は約〇・六秒であった(同報告書一二三頁)。これは実機の設置変更許可申請書(以下、「申請書」という。)に記載された約〇・七秒以上という仕様から外れているので、このインターナルポンプは実機用としては使用不可と考えられるが、どうか。
 (2) 確証試験に用いられたインターナルポンプとこの報告書で解析評価された実機インターナルポンプの異なる所を具体的に挙げられたい。
 (3) 前記両インターナルポンプの安全性の確認のために使用した諸元(板図、材質、曲部の曲率等)を明らかにされたい。

6 安全審査に用いられたインターナルポンプの性能特性は、確証試験報告書の4.2.1「水力特性試験」によって得られた結果であるかどうか。
そうでなければ、その出典を示されたい。

7 同報告書4.2.2「振動特性試験」について

(1) ポンプの振動特性に固体差があることが示されているが、同一仕様の製品でも固体差のあることはよく知られたことである。とすれば、実機に用いられる十台のインターナルポンプは所定位置に取り付けて後、各々振動特性を試験せねばならないが、いつ行うのか。また、実炉での試験に危険はないか。
(2) 二台ポンプ不均衡運転のとき振動が大きくなっているが、実炉で三台ないし四台不均衡運転のときの振動安全性試験をするのか。
(3) インペラ及び軸の曲げ及びねじり振動解析が行われていないが、なぜか。
(4) モータケースの固有振動数がインターナルポンプの運転範囲中にあるが、これを外すように勧告すべきではないか。
(5) ディフューザ/インペラ間のギャップは一ミリメートルを前提に安全の議論をしているが、実機では一ミリメートル以上と考えてよいか。

8 同報告書の4.2.5「原子炉圧力容器ノズル(ポンプ取付用)の応力および熱変形試験」について

(1) 応力解析で歪が最大になる箇所での計測データがないが、これでは応力的に最も厳しい条件を確認できないではないか。
(2) 応力評価をする場合に最も重要な箇所であるインターナルポンプハウジングとノズルの溶接部(P03からP08)の計測データがない。したがって、応力解析の妥当性は証明されていないのではないか。
(3) 計測点SGE-106歪一六〇〇με(図4.2.5-14)は応力に換算して三二キログラム毎平方ミリメートルと理解してよいか。
(4) 解析に用いた応力集中係数(一八一頁(5)(e)項)の根拠は何か。
(5) インターナルポンプハウジングとノズル間の変位データがないが、安全上重要と考えなかったのか。

9 同報告書の4.2.7「連続運転試験」について

 二千時間の運転はポンプ回転数にして十の八乗回にすぎない。疲労現象を考えると、最低十の九乗回以上の連続運転が必要と考えるが、どうか。

10 同報告書の4.2.8「インターナルポンプおよび試験容器ポンプ取付ノズルの分解点検」について

 分解検査の結果は、ジャーナル軸受、スラスト軸受や逆転防止器に条痕が見られた。またモータステータには内部に黒錆がみられた。これらは連続運転を続けると故障に発展する可能性を示すものではないかと考えるが、どうか。

二、東京電力柏崎刈羽原発六・七号機について

1 柏崎刈羽原発六・七号機のインターナルポンプおよびノズル部の健全性の確認は、工事認可申請で詳細図面が提出されてから行うのか。
2(1) インターナルポンプの破損の可能性について検討したか。
 (2) 検討したとしたら、その時列挙した原因をすべて挙げよ。またもし検討をしていなかったならば、その理由を明らかにされたい。
 (3) 破損の確率をどのくらいと評価したか。

3(1) インターナルポンプが全台停止し、スクラムがかからない場合、その後急に高回転数で再起動したら、炉心のボイドは急に流され、反応度が投入されるが、この過渡事象ないし事故を検討したことがあるか。
 (2) あるとしたら、その検討内容を示されたい。またもし検討したことがないとすれば、その理由を明らかにされたい。
 (3) (1)の場合、インターナルポンプの上方にある給水ノズルや緊急炉心冷却系のノズルから、冷水が流入する場合を想定しているか。
 (4) スクラム信号に炉心流量急増を入れるべきではないか。

4 先行炉の外部付再循環ポンプと比べ、政府や電力会社はインターナルポンプの長所についてだけの指摘をしているが、その短所については何も触れていない。いったいどのような短所を持っていると認識しているか。

5 申請書添付書類八の「運転特性図」において

(1) インターナルポンプのキャビテーション運転を是認しているのか。
(2) 自然循環は点線になっているが、行わないということか。点線表記は何を意味しているのか説明願いたい。
(3) 自然循環を行わないのであれば、流量低下信号でスクラムすべきと考えるが、どうか。
(4) 一〇二パーセント出力制御棒パターンで炉心流量一一一パーセントのとき出力は一〇八パーセントになるが、出力を一〇二パーセント以下に抑える自動装置(インターロックなど)は付いているのか。
(5) また、炉心流量五〇パーセント以下で出力の自動制御を行わない理由を明らかにされたい。

6(1) 一一一パーセント炉心流量運転が許されているのなら、申請書添付書類十の事故解析において、事故シナリオの最も厳しい場合として炉心流量一一一パーセントの仮定を用いるべきであると考えるが、どうか。
 (2) もしそれを行っているとしたら、その内容を示されたい。
 (3) 添付書類八の動特性の解析についても一一一パーセント炉心流量時に行うべきと考えるが、どうか。

7(1) インターナルポンプの定期検査に関し、ポンプの分解の仕方、点検方法、組み立て方法及び溶接部の点検方法について説明されたい。
 (2) 溶接部の点検方法の根拠となっている規則の条文を指摘して説明されたい。

8 自然循環時の最小限界出力比MCPRについて、その出力がパラメータに展開されたときはどのようになっているか示されたい。

9(1) 添付書類八の動特性解析は、運転範囲の全領域及び事故時についても行うべきと考えるが、どうか。
 (2) もし、行っているとしたら、その内容を明らかにされたい。
 (3) 自然循環時の動特性解析を示していただきたい。
 (4) 当然、インターナルポンプが全台停止し自然循環状態になり、出力が減って給水加熱喪失となった場合も想定していると思うが、その場合のものを示されたい。

10(1) 圧力容器内部構造物について、「必要な強度及び機能を保持することができるように設計されることを確認した」(「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所の原子炉の設置変更(6、7号原子炉の増設)について」原子炉安全専門審査会………以下、「審査会報告」という。)とされているが、何に基づいて確認したのか。各々具体的に内部構造物の種類及び運転状態(通常運転時、異常な過渡変化時、事故時)について、文献名又は試験名を挙げて明らかにされたい。
 (2) また、その確認の根拠がインターナルポンプ採用炉心に対してかどうかを、それぞれについて明らかにされたい。
 (3) とくに、燃料棒の振動及びフレッティングコロージョン、気水分離器の振動及びブローダウン時の各々の強度などについては詳しく示されたい。

11(1) 添付書類八では、原子炉のスクラム信号として炉心流量急減信号がつけられ、詳細設計で設定値が与えられる(第8.4-1表)とされているが、添付書類十の再循環ポンプ全台トリップ事故の事故解析では、この信号が第3.2-1図に与えられた設定値で働いてスクラムするシナリオになっている。そこで尋ねるが、スクラム設定値は同図の設定領域より十分大きくならなければならないと考えるが、どうか。
 (2) 炉心流量七〇パーセント以下では同信号によるスクラムがなくても安全性は確保されるのかどうか、証明されたい。

12 「インターナルポンプの部分台数運転条件においても炉心流量の分布を偏りなく十分な精度で計測できることを確認した」(審査会報告)とされているが、炉心流量の計測点の数、位置、センサー名を明らかにされたい。
13 インターナルポンプに四台同時停止という再循環ポンプトリップ機能が付けられているのだから、添付書類十の異常な過渡事象中、再循環ポンプの故障の解析において、少なくとも四台停止の場合の解析も行うべきと考えるが、どうか。
14 インターナルポンプの軸固着事故によるポンプハウジングの健全性は確認されているのか。
15 事故解析では、高圧炉心注水系配管(HPCF配管)および給水配管の径は各々いくらと仮定しているのか。
16 インターナルポンプが動バランスを失ってノズル部が破損する冷却材喪失事故をなぜ想定していないのか。想定しなかった根拠を明らかにされたい。
17(1) 通産省告示五百一号は第一種容器に回転機械が取り付けられることを想定して作られたのか。
 (2) その第十七条(穴と補強)一項五号には「ただし、著しい配管反力がない場合は、この限りでない。」とあるが、回転機械の動バランス喪失による破壊エネルギーが著しい配管反力を超える場合の規定を作る必要があるのではないか。

三、海外インターナルポンプ情報その他について

1(1) 海外のインターナルポンプの故障・不具合事例情報については、これが公開できるよう、相手方の了解を得る努力をすべきではないか。
 (2) 政府の答弁書に列記されているインターナルポンプ採用の原子炉中、原子炉の運転が止まったもの、あるいは定期検査中に不具合が発見されたものがあるか。もしあるとすれば、詳細な情報は別としても、それがインターナルポンプにかかわるものかどうか程度は明らかにすべきではないか。

2(1) 海外のインターナルポンプと日本のそれの違いの一つは軸受けである(日立評論七〇巻四号「ABWR(改良型沸騰水型原子炉)改良技術の実用化への展開」日立製作所発行)という。軸受けの寿命(オーバーホール期間)はいくらか。また、その間の信頼性は実証されていると考えているか。
(2) その他の、海外のインターナルポンプと日本のそれの違いを挙げられたい。さきの答弁書のようにウエットモータ型とドライモータ型というだけでは説明になっていない。構造上の相違点、効用や、対比しての長短、その他の評価等具体的に明らかにされたい。
(3) 確証試験に使用したインターナルポンプのメーカーはどこか。

3(1) 電力共通研究で行った試験は安全審査に供されたか。
 (2) 供されたとしたら、何に関することか、できるだけ具体的に述べられたい。
 (3) 同じ安全審査に供された試験研究で、民間で行われたものとの比較は行っていないと答弁されているが、もし民間の試験が完全に信頼できるとするならば、改めて別に試験をする必要はなかろう。反対に、民間の試験の信頼性に疑義があったり、あるいは試験項目に不足するものが有りとする場合は、比較検討して以後の民間の試験研究に対する指針とすべきであろう。財団法人原子力工学試験センターが実施した意味は何なのか。

4(1) 安全審査に提出された資料で、設置変更許可申請書以外のものもあるのではないか。
 (2) あるとしたら、工業所有権に関するものを除きすべて公開されるべきではないか。安全性の内容を示すことなく、安全性が確認されたと述べるだけでは政府への不信感が増幅するだけである。政府の認識を問いたい。

5(1) 工事認可申請書及びその添付書類は、詳細設計として具体的な安全性の内容が含まれている。工業所有権に関する事項を除きすべて公開されるべきと考えるが、どうか。
 (2) とくに、柏崎刈羽六・七号機の場合、原子力安全委員会から安全確認の申し送り事項を言い渡されたのであるから、工事認可に関する書類は工業所有権に関する事項を除いてすべて公開されるべきである。この点に関して、政府の認識を問う。

  右質問する。