質問主意書

第121回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第四号

内閣参質一二一第四号

  平成三年十月一日

内閣総理大臣 海部 俊樹   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員稲村稔夫君提出原子力発電施設におけるインターナルポンプ設置認可に伴う政府の認識とその根拠に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員稲村稔夫君提出原子力発電施設におけるインターナルポンプ設置認可に伴う政府の認識とその根拠に関する質問に対する答弁書

一について

1 通商産業省が財団法人原子力工学試験センターに昭和六十三年度から委託しているインターナルポンプ溶接部等信頼性実証試験(以下「実証試験」という。)では、これまで、ポンプ溶接部、ポンプ取付ノズル部及び炉内構造物溶接部等の信頼性試験を行うための準備を行ってきている。
2及び3 通商産業省が財団法人原子力工学試験センターに委託した原子炉内蔵型再循環ポンプ設備確証試験(以下「確証試験」という。)は、インターナルポンプのシステムの安全性及び信頼性を確証し、その実用化を促進することを目的として行われたものであり、その結果は通商産業省が所有するとともに、東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所六、七号原子炉(以下「柏崎刈羽六、七号炉」という。)の増設に係る核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第二十六条第一項に基づく原子炉設置変更許可申請に係る安全審査(以下「安全審査」という。)において活用されている。
 なお、実証試験は、既に確証されたインターナルポンプ溶接部等の安全性及び信頼性に対する国民の理解を得ることを目的として行われるものであり、その結果は安全審査において用いられるものではない。
4 確証試験は、約七十七億八千六百万円を要した。実証試験は、平成二年度までに約二十一億千七百万円を要した。
5 確証試験では、実際にインターナルポンプを用いて試験を実施した。
6 確証試験においては、通常運転状態のほかに、部分台数運転状態及びインターナルポンプのトリップ等主要な過渡運転状態における炉心流量測定試験を実施した。また、通常運転状態における炉心流量の測定誤差は五パーセント程度であった。
7 確証試験においては、特に必要と認められなかったので、制御棒及び燃料棒の評価並びにフレッティングコロージョンへの影響についての調査を行っていない。
8 確証試験においては、特に必要と認められなかったので耐震性の評価を行っていない。
9(1) 確証試験においては、ノズル部及び溶接部の応力評価に関する試験結果と解析結果とはよく対応している。
 (2) 柏崎刈羽六、七号炉において採用される予定のインターナルポンプ(以下「柏崎刈羽のインターナルポンプ」という。)の詳細が未確定であるため、これらのインターナルポンプのノズル部等の応力評価は行われていない。
 (3)から(7) 確証試験に用いたインターナルポンプのノズル部及び溶接部については、発電用原子力設備に関する構造等の技術基準(昭和五十五年通商産業省告示第五百一号)に基づき荷重条件を設定し、基準地震動を三百ガルとし、有限要素法により応力を計算し、疲労に係る評価を行った結果、疲れ累積係数は、〇・〇〇一から〇・〇〇二であり、疲労破壊には至らない評価となっている。

10 確証試験においては、特に必要と認められなかったので冷却材圧力バウンダリの配管破断試験を行っていない。
11 確証試験において、インターナルポンプが完全に停止するまでの時間は約六秒から約八秒であった。
 コーストダウンによる燃料棒破損の有無は、コーストダウン特性を踏まえて行われるプラントの全体システムに関する安全解析において確認されることから、特に確証試験において、コーストダウンによる燃料棒破損に関する試験は行われていない。また、その安全解析の結果、必要があれば、プラントの全体システムにおいて所要の対策が採られることとなるため、確証試験では特にインターナルポンプの慣性力を上げる試みは行われていない。

二について

1 柏崎刈羽のインターナルポンプ及びそのノズル部等の詳細な構造を承知していないため、これらと確証試験で使用したインターナルポンプ及びそのノズル部等との比較はできない。
2 柏崎刈羽のインターナルポンプのモータケーシング及びノズル部の肉厚の詳細寸法については、承知していない。
3 柏崎刈羽のインターナルポンプ取付部の詳細なノズル形状については、承知していない。
4 柏崎刈羽のインターナルポンプの詳細な溶接方法については、承知していない。
5 柏崎刈羽のインターナルポンプのパージ水流量の詳細については、承知していない。
6 柏崎刈羽のインターナルポンプのポンプ軸の熱疲労割れ対策については、承知していない。
7 柏崎刈羽のインターナルポンプのモータ冷却水系統の系統構成の詳細については、承知していない。
8 柏崎刈羽のインターナルポンプのモータの発熱量については、承知していない。
9 柏崎刈羽のインターナルポンプのモータ巻線についての具体的な水対策及び放射線対策については、承知していない。
10 確証試験では、通常運転される回転域でのポンプのモータケーシング振動は毎秒二ミリメートル程度であった。この振動の主な周波数成分は、回転数成分とモータケーシングの固有振動数成分であった。柏崎刈羽のインターナルポンプの振動特性については、そのインターナルポンプの詳細な設計を承知していないことから評価できない。
11 柏崎刈羽のインターナルポンプのスラストベアリングの詳細については、承知していない。
12 柏崎刈羽のインターナルポンプの逆転防止デバイスの詳細については、承知していない。
13 柏崎刈羽六、七号炉の増設に係る原子炉設置変更許可申請書添付書類(以下「添付書類」という。)八に記載されている「再循環ポンプ外形図」によると、柏崎刈羽のインターナルポンプのポンプ軸は中空になっている。これは軽量化を図ることを目的とするものであり、また、この中には熱水は入らないと承知している。
14 柏崎刈羽のインターナルポンプ入口部の詳細については、承知していないが、ルースパーツ対策としては各部品に十分な強度を持たせる等所要の設計上の配慮を行う予定であると聞いている。
15 柏崎刈羽のインターナルポンプのディフューザとインペラとの間げきの寸法については、承知していない。
16 柏崎刈羽のインターナルポンプは、柏崎刈羽六、七号炉増設に係る原子炉設置変更許可申請がなされた当初から十台である。
17 柏崎刈羽六、七号炉においてインターナルポンプを採用した理由については、外部再循環ポンプを設置するよりも、インターナルポンプ方式の方が外部配管を無くすことが可能となる等システムが単純化できることからインターナルポンプを採用したと聞いている。
18 柏崎刈羽のインターナルポンプについては、静止形冷却材再循環ポンプ電源装置によりインターナルポンプの電源周波数を制御し、これにより流量の制御を行うこととされているが、流量変化の詳細については、承知していない。
19 柏崎刈羽のインターナルポンプ十台の電源系統は、四系統の常用高圧母線に二台又は三台ずつ接続することとされている。
なお、各母線は通常は所内変圧器側から、所内変圧器側の電源が遮断された場合には起動変圧器側から給電することとされている。
20 柏崎刈羽のインターナルポンプは、原子炉圧力容器内の冷却材を原子炉圧力容器内で循環させるものであり、従来の沸騰水型軽水炉(BWR)のように再循環ポンプに係る原子炉圧力容器外配管内の冷却材がポンプの停止中に冷却されることはない。すなわち、インターナルポンプを起動させても原子炉圧力容器内に冷水は入らない構造となっている。このため、柏崎刈羽六、七号炉については、再循環ポンプの誤起動による冷水流入事故は、想定されない。
21 日負荷変動の調整運転の具体的計画は未定であり、ポンプの流量変化及び流量調整方法については、承知していない。
22 柏崎刈羽六、七号炉の出力制御範囲については、燃料の燃焼初期から末期を通じ、インターナルポンプの流量を最大百十一パーセントで運転を行うとの趣旨で、添付書類八に「流量制御のみによる出力自動制御は、五十パーセント炉心流量以上、百十一パーセント炉心流量以下の範囲で行われる。」と記載されており、また、添付書類八の「運転特性図」においてもこの趣旨が明らかとなっている。
23 柏崎刈羽六、七号炉の出力制御範囲については、燃料の燃焼初期から末期を通じ、インターナルポンプの流量を最大百十一パーセントで運転を行うことに関して、添付書類十の安全解析の結果から、安全性を確認している。
24 柏崎刈羽六、七号炉では、インターナルポンプの振動及び音響の監視を行うための装置を設置する予定であると聞いている。
25 電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第四十七条に基づいて行われることとなる柏崎刈羽のインターナルポンプの定期検査に関し、ポンプの分解の仕方、点検方法、組立方法及び溶接部の点検方法について、おおむね承知している。また、ネジの部分の詳細については承知していない。

三について

1 海外においてインターナルポンプを採用している原子力発電所及びそのプラントメーカーとして把握しているものは、次のとおりである。

図 表

2 海外のインターナルポンプに関する不具合事例については、確証試験においてその情報入手に努めたところである。これらの情報は、非公開を前提として入手しているものであるため公表できない。
3 海外のインターナルポンプと比較した柏崎刈羽のインターナルポンプの特徴は、柏崎刈羽のインターナルポンプ並びにフィンランド及びスウェーデンのインターナルポンプがウェットモータ型であるのに対し、ドイツのインターナルポンプはドライモータ型であることである。
4 財団法人原子力工学試験センター以外に我が国において行ったインターナルポンプの試験としては、電力会社がプラントメーカーと共同で実施した電力共通研究及びプラントメーカーの社内試験がある。
 また、海外においては、インターナルポンプメーカーが社内試験を行っていると承知している。
 なお、確証試験においては、これらの試験結果との比較は行っていない。
5 原子炉再循環系新型ポンプシステムの開発に関する研究は、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)の開発のために、電力共通研究において、電力会社がプラントメーカーと共同で実施した研究であると認識している。