質問主意書

第121回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九号

市民的及び政治的権利に関する国際規約の第一選択議定書(個人通報制度)批准に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三年九月二十四日

本岡 昭次   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   市民的及び政治的権利に関する国際規約の第一選択議定書(個人通報制度)批准に関する質問主意書

 私は、自由と人権の保障は民主主義の根幹であり、民主主義とは自由と人権の保障によって成立する、と考えるものである。
 また、この人権をとらえるにあたっては、国連が時間をかけてまとめ、かつ国連加盟各国政府も承認をした、国際人権章典(注1)(世界人権宣言・国際人権規約)によることが妥当であり、従って、私は、同章典のうち最も重要な手続規定である市民的及び政治的権利に関する国際規約の第一選択議定書につき、その批准加入の促進を求めて来た次第である。
 ところが標題の件に関する私の質問に対して歴代の政府は…
(昭和六十年十一月六日・参議院予算委員会)
○国務大臣(安倍晋太郎君) B規約、選択議定書につきましては、本制度の運用状況はおおむね問題はない、国会でも附帯決議がございます。今後締結に向けまして積極的に検討してまいりたい…。
(昭和六十一年一月三十一日・参議院本会議)
○国務大臣(中曽根康弘君) アジア地域でB規約選択議定書の締結国は現在のところございません。しかし、国会の附帯決議も踏まえまして、今後締結に向けて努力してまいりたい…。
(平成二年六月六日・参議院予算委員会)
○国務大臣(中山太郎君) 安倍外相当時にも、積極的に努力するというふうにお答えをいたしておるようでございますから、私も安倍大臣の意思を受けて、この問題については積極的に努力をさせていただきたい…。
○国務大臣(海部俊樹君)「その運用状況を見守り、積極的に検討すること。」という決議等もございます。外務大臣が経過等も見ながら積極的に判断すると申しますので、私も十分相談しながら検討していきたい…。
(平成三年四月一日・参議院予算委員会)
○国務大臣(中山太郎君)政府を挙げて、一生懸命やっているわけで、私は可及的速やかにこの意見というものは集約されるだろう。全力を挙げて努力をいたすと、こういうことを申し上げておきたい…。
 -さらに私の「可及的速やかに結論を得るために全力を挙げるという答弁だと理解していいですか。」との問いに対し-
○国務大臣(中山太郎君) おっしゃるとおりでございます。
 このように、「積極的に検討」、「締結に向けて努力」、「積極的に努力」、「積極的に判断」、「可及的速やかに全力を挙げて努力」等々と言葉をかざるのみで実に六年の歳月が流れたのである。
 この間、アジアでは、フィリピン、韓国、モンゴル、ネパールが批准加入をし、最近ではチェッコ・スロヴァキア、ウクライナが批准加入手続をとり、この七月五日のソ連邦最高会議幹部会議では、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の第一選択議定書(個人通報)の批准加入をはじめ、同規約の国家通報、人種差別撤廃条約(注2)の個人通報、拷問禁止条約(注3)の“現地査察”、国家、個人両通報に関する留保のとりやめなどを認める決議案を採択したとのことである。
 これまでの六年間にわたる国会での論議、並びに、近年におけるアジアなど各国政府の本問題への対応を踏まえ、日本政府は、海部内閣の責任において今臨時国会会期中にも、即刻、標題の批准加入手続を取るべきであると考えるが政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。

(注1) 世界人権宣言。経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約。市民的及び政治的権利に関する国際規約。市民的及び政治的権利に関する国際規約の選択議定書。
(注2)あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約。
(注3) 拷問及びその他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の禁止に関する条約。