質問主意書

第119回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三号

皮革・革靴の関税割当制度に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二年十一月六日

谷畑 孝   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   皮革・革靴の関税割当制度に関する質問主意書

 皮革・革靴四品目について、一九八六年四月に輸入数量制限から関税割当制度(以下「TQ制度」という。)に移行して四年半が経過する。その間、一次関税率枠は毎年一〇%ないし一五%ずつ拡大され、ニューカマーは他業種からの参入も含め急増し、枠の消化率も高い水準にある。
 また、TQ品目外で入ってくるスポーツシューズ等も含めると、皮革・靴業界として相当大きな外国製品の輸入急増に耐えているというのが現状である。
 さらに、TQ制度の期限後をにらんだ動きも活発化しており、EC諸国からの売り込み攻勢や、国内でも異業種からの参入が強まっている。
 皮革・革靴産業は、歴史的にみて同和地区の伝統産業であり、現在でも地区の主要産業である。小規模零細企業の比率が高く、その下に非常に零細な家族経営の下請け関連企業を多数抱える業種である。また、差別の歴史的な累積によって、産業あるいは企業としての発展を妨げる多くの問題を内包している。
 このような実態を踏まえ、同和問題の抜本的な解決という観点から、皮革・革靴産業の振興を図るため、以下の諸点について質問する。

一 ガットにおいて再び皮革・革靴四品目のTQ制度が協議の対象になっている。皮革・革靴産業の国際競争力が抜本的に強化されるまで、一次、二次関税率及び一次関税率枠を現状の水準で維持していくことが最低限の条件であると考えるが、どうか。

二 一九八六年三月二四日の衆議院大蔵委員会における「関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案」の審査の中で、浜岡通産省生活産業局長(当時)は次のように答弁している。
 「(今後、総合対策に取り組んでいく際)人材養成ということに特に意を用いてまいりたい。また皮革産業対策は中央で皮産連(社団法人日本皮革産業連合会。以下「皮産連」という。)を中心に総合的対策を講ずると同時に地域地域において、地方自治体、関係業界が協力して、きめ細かい対策を講じていくことが必要かと思う。
 また皮産連の対策と地域地域の対策との間にきめ細かいネットワークも不可欠であろう。」皮革・革靴産業の国際競争力の強化を図るためには、現在でも答弁の趣旨である(1)人材の養成、(2)地域地域におけるきめ細かい対策、(3)皮産連の対策と地域地域の対策とのきめ細かいネットワークづくり、を具体化する事が、必要不可欠であると考えるが、どうか。

三 大阪の皮革産業は大阪市の浪速区・西成区にほぼ集中して立地している。主要な経営上の問題としては、人手不足、人材の確保と養成、同和地区産業としての厳しい就業の実態がある。そのもとで、職人の高齢化と後継者の不足は深刻化しており、企業としての発展や産業としての見通しを厳しいものにしている。
 しかし、他方ではファッション産業への脱皮をめざし、経営者グループの育成、靴学校や技術者の研修制度、デザイナーの確保と育成、産地間のネットワークづくりなどへの要求や熱意が高まっている。産業や産地としてのイメージを改革し、モノづくりに誇りを持ち、消費者のニーズや時代にあった製品を開発・供給していこうという皮革・革靴産業に従事する人たちの努力に十分こたえ得る総合的対策の確立が是非とも必要である。
 そのためにも、皮産連が従来から行っている対策の充実を図るとともに、具体的な産地対策として以下に挙げる二点の対策が、同和問題の解決という観点からも必要であり、国としての積極的な支援が必要であると考えるが、どうか。

(一) 産地における、産業振興基金の創設。
(二) 基金の創設による、大阪皮革産業会館を拠点とした大阪府・大阪市及び関係業界の協力による「きめ細かい対策」の具体的な展開。

四 皮革・革靴産業の企業体質の改善を図るため、人材養成とネットワーク化の事業を全国ベースでも今後より一層強めていく必要がある。そのため、全体としての振興計画あるいは振興ビジョンをとりまとめること、地域地域の実態を踏まえたきめ細かい対策事業が実施できる地方自治体と関係業界の協力体制の整備を図ることが、皮産連の充実とともに必要であると考えるが、どうか。

  右質問する。