質問主意書

第118回国会(特別会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質一一八第三号

  平成二年六月五日

内閣総理大臣 海部 俊樹   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員小笠原貞子君外一名提出アイヌの人々の生活と権利の保障等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員小笠原貞子君外一名提出アイヌの人々の生活と権利の保障等に関する質問に対する答弁書

一について

 北海道ウタリ対策関係省庁連絡会議の下に設置された検討委員会は、アイヌ新法問題に対する政府としての考え方をまとめることを目的とするものであり、これまで、アイヌ新法問題に係る論点の整理など所要の検討を行ってきているところである。
 今後は、当面、北海道からアイヌ新法問題に対する要望の趣旨、内容等について、説明を聴取していく予定である。その後の日程等は未定であり、説明聴取の結果等をも踏まえ検討することとしている。

二について

 政府としては、従来から、ウタリ対策事業に関し、政府部内に北海道ウタリ対策関係省庁連絡会議を設置し、その円滑な推進を図ってきているところであり、また、一についてにおいて述べたように、アイヌ新法問題に対する政府としての考え方をまとめるため、同連絡会議の下に検討委員会を設け、鋭意検討を行っているところである。したがって、現在のところ、審議会等新たな機関の設置が必要であるとは考えていない。

三の(1)及び(3)について

 政府としては、ウタリ子弟の高校・大学等への入学に関し、一時金として給付される所要の通学用品等の助成金に対する補助を行っているところであり、今後とも現下の厳しい財政事情等を勘案しつつ適切に対処してまいりたい。また専修学校を新たに補助対象とすることは考えていない。

三の(2)について

 通学用品等助成金の支給時期については、申請書類の審査、所得の確認等の手続を必要とすることから七月又は八月となっているものと承知しているが、今後とも事務処理の改善を図るよう指導してまいりたい。

四の(1)について

 アイヌのユーカラについては、記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財として選択するとともに、北海道教育委員会が行うユーカラを含むアイヌ民俗文化財調査事業について補助を行い、その保存の充実に努めている。

四の(2)について

 北海道教育委員会が行うアイヌ生活文化用語の伝承教室事業については、その補助を行っているところであり、逐次実施地区数を増やすなどその充実に努めている。

四の(3)について

 アイヌ古式舞踊のうち、重要無形民俗文化財に指定されていないものについては、平成二年度から、北海道教育委員会が行う各地域に伝承されている古式舞踊の演目、芸態及び伝承状況の調査事業について補助を行うことを予定している。
 これらについての重要無形民俗文化財指定等の措置については、調査結果を検討した上で考慮してまいりたい。

四の(4)について

 地域の特色を示す民俗文化財あるいは地域の歴史の流れを裏付ける遺物・文書等の歴史資料の保存・活用を図るための施設として、地方公共団体が設置する歴史民俗資料館の建設補助を進め、民俗文化財の地域における拠点づくりを行っているところであるが、現在のところ、御質問のような国立の施設設置等については考えていない。

五について

 一般に、就職の機会均等を確保する観点から、差別のない公正な採用選考システムの確立を図るよう企業に対する啓発・指導に努めているところである。
 また、ウタリ住民の雇用の促進と職業の安定を図るため、新規学校卒業者に対するきめ細かい職業指導、ウタリ担当の職業相談員の配置による相談活動及び職業訓練受講支度金の支給補助等の就職援護措置を行っているところである。
 官公庁への採用については、原則として公開・平等の採用試験によることとされており、一般に特定の者を優先雇用する仕組みをつくることは困難である。
 保健婦については、その資格を有することが必要であり、ホームヘルパーについては、介護や家事等に関する一定の研修を受けることが必要とされており、いずれについても、一般に特定の者を優先雇用する仕組みをつくることは困難である。

六について

 北海道から聴取したところによれば、北海道浜益郡浜益村における下付された土地に関する問題については、現在農事調停が行われているので、所有者、境界等の争いについては調停の結果にゆだねることが適当と考えており、また、その他の地域については問題は生じておらず、実態調査の必要はないと考える。

七について

 御質問が歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島への墓参についてであれば、これら四島が我が国固有の領土であるにもかかわらず、ソヴィエト連邦に不法占拠されているとの事情により、昭和三十九年以降、日ソ両国間の合意に基づき身分証明書方式により実施されてきている。
 かかる枠組みの下での同墓参については、関係親族である我が国国民であれば、参加可能である。
 他方、我が国が日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号)により放棄した領土である千島列島への我が国国民の墓参については、これまでのところ実績がないが、今後具体的な希望が寄せられれば、右希望を踏まえつつ、新たな墓参候補地として検討することとなろう。