質問主意書

第118回国会(特別会)

質問主意書


質問第二号

防衛本庁の市ケ谷移転計画に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二年五月十四日

吉川 春子   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   防衛本庁の市ケ谷移転計画に関する質問主意書

 政府は、東京都港区六本木の防衛本庁を新宿区の自衛隊市ケ谷基地へ一九九五年までに事業費総額三千億円(一九八八年度ベース)を投じて移転し、基地施設の再配置を行う計画である。
 この計画は、大蔵省所管の特定国有財産整備特別会計により実施され、一九九〇年度予算では、約六百四十三億円の工事費・実施設計費を計上し、一九八八年度予算で十二億円の調査・基本設計費を計上して以来、本格的な事業に着手している。
 防衛庁移転計画について、その内容や市ケ谷に建設される防衛本庁・中央指揮所などの施設規模等は必ずしも具体的に明らかにされていない。
 しかしながら、この移転計画の目的は、一九八五年、当時の中曽根首相が打ち出した「民間活力」導入の方針の一環である六本木の都市再開発を理由として、防衛本庁や中央指揮所などの重要施設を市ケ谷基地に移転・集中させて自衛隊の最高司令部とその指揮・通信機能を一元化し、陸、海、空三自衛隊の統合運用を推進するとともに、米軍との指揮・通信の連携も強化して、有事即応、日米共同作戦の効果的遂行を図ることにあると指摘されている。
 これはまさに、防衛中枢基地の集中・再編強化にほかならない。
 さらに現在の防衛本庁にある中央指揮所は、八十五億円の経費をかけて一九八一年に工事を着工し、一九八四年に完成したもので、運用を開始してからまだ六年しかたっていない。これを壊して、新たに移転先の市ケ谷に中央指揮所を建設するということについて、「国民の血税のムダ遣い」という厳しい批判もある。
 また、東京都の新宿区議会では、既に移設反対の意見書を決議している。
 したがって、この際、こうした問題を始め計画の内容、施設の規模、部隊配備等について質問する。

一 防衛庁は、「防衛中枢を桧町地区から市ケ谷地区に移転させる。これに伴い、首都及びその近郊の防衛施設の再配置を図る」としている。
 防衛中枢機能を市ケ谷地区に集中させ、首都に所在ずる自衛隊の部隊組織の再配備を行う防衛上の目的は何か。

二 防衛中枢機構を市ケ谷地区に集中することが適当であると判断し、決定した理由は何か。

三 この移転計画によって、中央指揮機構の体制を含めどのように機構、機能の改善を図ろうとしているのか。

四 市ケ谷基地に建設する防衛本庁の規模について、(1)内局、陸、海、空三統合幕僚監部、防衛施設局、調達実施本部などを一緒に収容した超高層ビル建築にする(2)旧軍の造った大地下壕を改装し、中央指揮所として使用する(3)最新指揮電子機器を導入し、指揮・通信、防謀機能を大幅に強化すると言われているが、これについてはそれぞれ具体的にどうなのか明らかにされた

五 防衛庁は、内局、陸、海、空三自衛隊、統幕二室の情報関係部門を整理・統合し、防衛庁長官直属の「情報本部」を新設する方針を決めたと言われているが、その目的は何か。また、この情報本部の役割と任務は何か。この施設は、市ケ谷地区に設置されるのか明らかにされたい。

六 防衛本庁の移転計画の内容について、機関・部隊名、施設の再配置状況、部隊員数を明らかにされたい。

七 市ケ谷基地を始め十条、目黒、朝霞、大宮、霞ケ浦(以下、「東京六地区」と言う。)及び桧町地区の各基地の主な建物及び工作物、例えば、防衛本庁、中央指揮所、弾薬庫等の名称、面積、規模を明らかにされたい。

八 防衛本庁移転の一環として本年度予算で約六百四十三億円を計上し、東京六地区の各基地の実施設計・一部施設の本工事に着手する予定であると言われているが、実施設計・本工事に着手する施設名及び全体計画の進捗状況について明らかにされたい。

九 移転計画を実施するに伴う事業経費の総額は、実際にいくらなのか。

十 また、同計画は特定国有財産整備特別会計により実施され、所要経費は桧町地区の跡地処分収入により賄うことになるとしている。現在の防衛本庁の所在する敷地は約七万七千平方メートルあるが、その土地の払い下げ価格はいくらと査定したのか。

十一 現在、桧町にある防衛本庁、中央指揮所などその他関連施設全体の建設費用は、その当時どのくらいかかったのか、事業費の総額を明らかにされたい。また、現在の中央指揮所の役割と任務は何か。また、この施設は、実際に移転計画に伴いとり壊すのか。

  右質問する。