質問主意書

第117回国会(常会)

質問主意書


質問第二号

JR事故防止対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成元年十二月二十六日

喜岡 淳   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   JR事故防止対策に関する質問主意書

 昨年十二月のJR中央線東中野駅構内における電車衝突事故(死者二名、負傷者百十六名)から一年が経過した。しかし、最近における常磐線の貨物列車脱線事故等の鉄道事故が続発している状況をみる限り、東中野駅事故の教訓が何ら生かされていないと考えざるを得ない。
 特に、レールの交換中に貨物列車が突入した事故、線路間距離が狭すぎて貨物列車同士が接触した事故、列車の屋根がトンネルの天井に接触した事故、車両が駅のホームに接触した事故等常識では考えにくい事故が相次いで発生している。
 「ハインリッヒの法則」にもあるように、重大事故の陰には小さなミスが必ず潜んでおり、また、小さなミスの積み重なりが重大事故を招くことは周知の事実である。
 JR会社の事故責任は当然のことであるが、運輸省の指導監督責任も極めて重大であると言わざるを得ない。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 最近続発しているJR各社の鉄道事故に対して、指導監督官庁である運輸省は、その責任をどのように認識しているのか。また、その責任をどのようにとる考えか。

二 東中野駅事故を契機として、運輸省はどのような事故再発防止対策を講じてきたのか。
 また、JR東日本・JR西日本が進めているATS-P型の導入計画を更に前倒して促進するようJR会社を指導すべきではないか。さらに、ATS-P型の導入を検討中のJR会社には、速やかに導入計画を作成するよう指導すべきではないか。

三 JR民営化後の列車走行百万キロメートル当たりの運転事故件数は、六十二年一・四九件、六十三年一・三六件であり、民鉄の同六十二年一・二二件、六十三年一・一九件を上回っている。このことは、JRの安全対策面に構造的な欠陥があることを示すものではないのか。
 また、国鉄時代には民鉄よりも同事故件数が低いときもあったことを考えると、国鉄の分割・民営化によって安全対策面に支障が出ているとは考えられないか。

四 鉄道事故情報や安全を確保するための措置についてJRの職員に周知徹底させるとともに、職員一人一人の安全意識を高めるための方策を新たに検討すべきではないか。例えば、JR四国の社報においては、本年一月まで事故の情報を掲載していたが、二月以降は掲載されていないと聞いている。事故を防止するためには現場で働く職員一人一人の安全確保に対する意識の高揚が不可欠であり、そのためには社報等を通じて事故情報等の周知徹底を図るよう指導すべきではないか。

五 十二月十二日に公表された「JR各社の軌道中心間隔の総点検等について」では、運輸省令第二十三条を満たしていない箇所が二千二百二十三箇所もあることが判明した。運輸省は、当面の緊急措置として、車両相互の間隔が二百ミリメートル以下となる百二十八箇所について軌道中心間隔の改良工事等を行うとしているが、これでは残り二千九十五箇所の危険箇所が放置されることとなる。残余の箇所についても、対応措置を示すとともに、速やかに改良工事等を行うべきではないか。

六 十二月十二日、JR総武線新小岩駅で電車がホームに接触した事故の原因として、電車とホームとの間隔が運輸省令の基準より狭かったことが指摘されている。したがって、運輸省は直ちに全国の各駅における車両とホームとの間隔について総点検を行うようJR各社を指導すべきであると考えるが、どうか。

七 現在、実施中の「年末年始の輸送等に関する安全総点検」(平成元年十二月十日~平成二年一月十日)の結果、今後改善すべきことが明らかとなった点については、運輸省は速やかにその対応措置を講ずべきであると考えるが、どうか。

八 航空機事故については、航空事故調査委員会制度が、船舶事故については、海難審判制度がそれぞれ設けられており、事故原因の究明とともに、再発防止のための勧告等を第三者機関が行う仕組みとなっているが、鉄道事故については特別の制度は設けられていない。
 鉄道の高速化や新しい鉄道技術の開発・進展が進む中で、鉄道事故の原因究明が難しくなっていくものと予想され、また、再発防止のために採るべき施策を勧告しうる第三者機関として「鉄道事故調査委員会」(仮称)のような制度の創設についても検討すべき時期に来ているのではないか。運輸省の見解を伺いたい。

九 前記二、五、八に指摘した事項の促進を図るため、JR各社に対する無利子貸付制度等必要な財政上の措置について、平成元年度補正予算、平成二年度予算において検討すべきではないか。

十 平成元年度予算においては、運輸省所管の鉄道防災事業費が激減している(昭和六十三年度予算の八十五億六千万円が三十六億五千万円に)。これは、「整備新幹線の建設財源は運輸省所管の公共事業費の枠内で捻出する」ことのしわ寄せを受けているものと考えられる。しかし、このことは鉄道事故の防止の観点から由々しき問題であり、整備新幹線の建設予算の在り方を含め、鉄道防災事業費の適切な計上を図るべきだと考えるが、どうか。

  右質問する。