質問主意書

第116回国会(臨時会)

答弁書


第百十六回国会答弁書第一一号

内閣参質一一六第一一号

  平成二年一月十九日

内閣総理大臣 海部 俊樹   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員吉岡吉典君提出常時有人の民生用宇宙基地の詳細設計、開発、運用及び利用における協力に関するアメリカ合衆国政府、欧州宇宙機関の加盟国政府、日本国政府及びカナダ政府の間の協定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員吉岡吉典君提出常時有人の民生用宇宙基地の詳細設計、開発、運用及び利用における協力に関するアメリカ合衆国政府、欧州宇宙機関の加盟国政府、日本国政府及びカナダ政府の間の協定に関する質問に対する答弁書

一の1について

 御指摘の書簡交換は、常時有人の民生用宇宙基地の詳細設計、開発、運用及び利用における協力に関するアメリカ合衆国政府、欧州宇宙機関の加盟国政府、日本国政府及びカナダ政府の間の協定(以下「宇宙基地協力協定」という。)において明らかな点を交渉担当者が念のために確認したものである。

一の2について

 本件宇宙基地が、国際法に従って平和的目的のために利用される民生用のものであることは、宇宙基地協力協定上明らかである。

一の3について

 米国が提供する宇宙基地の要素の利用については、御指摘の利用も含め、米国が「平和的目的」のためと認めるものについて行われることとなる。
 宇宙基地協力協定の目的については、同協定第一条で「国際法に従って平和的目的のために常時有人の民生用宇宙基地の詳細設計、開発、運用及び利用を行うことに関する参加主体間の長期的な国際協力の枠組みを、真の協力関係を基礎として、確立すること」と定めることにつき参加国が合意したものである。

一の4について

 仮に御指摘のような利用が行われる場合があるとしても、そのこと自体により「民生用」という目的に反することにはならない。

一の1から4までについて

 「非侵略的軍事利用」、「攻撃的軍事利用」、「非侵略的」及び「非攻撃的」という概念については、一般国際法上確立した定義があるとは承知していない。

二の5について

 宇宙基地協力協定において宇宙基地協力の目的を「平和的目的」に限定していることは、意義あることと考えている。また、これに関連し、協定参加国内に疑問が出ているとは承知していない。

二の6について

 「平和的利用」の概念については、一般国際法上確立した定義があるとは承知していない。

二の7について

 個々の条約に規定されている「平和的目的」の解釈については、それぞれの条約の成立した背景、目的、対象とする分野等により個々に異なり得るものである。

三の1について

 御指摘の答弁に変更はない。

三の2について

 米国が提供する宇宙基地の要素において行われた実験の成果並びに天体及び地球観測の結果を、米国が国家安全保障上の目的のために利用することについては、その可能性は排除されていないとの趣旨の御指摘の答弁に変更はない。

三の3について

 例えば、千九百八十四年四月六日付けベッグズNASA長官(当時)発岩動科学技術庁長官(当時)あて書簡において、国防省は有人宇宙基地に対するいかなる要求も有していない旨述べられており、また、千九百八十八年三月一日付け米国防省議会報告において、国防省は現時点において宇宙基地を利用する主要搭載物に対するいかなる要求も有していない旨等が述べられている。

三の4について

 日本実験棟以外の宇宙基地の要素における他国の機関の行為は、わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する国会決議の対象になるものではないと考えている。

三の5について

 御指摘の「アメリカ実験棟でのSDIにかかわる研究、実験」については、現在何ら具体的な計画があるわけではないと承知しているが、米国が提供する宇宙基地の要素の利用は、米国が「平和的目的」のためと認めるものについて行われることとなる。

四の1から3までについて

 宇宙基地協力協定第九条に従い、日本実験棟の利用が平和的目的のためのものであるかないかは、我が国政府が個々の事例に即して決定する。我が国政府が平和的目的のためではないと決定した場合には、そのような利用は、行われない。

四の4について

 日本実験棟における研究の具体的内容、実施方法については、個々の研究ごとに、検討されることとなろう。

四の5について

 御指摘の実験、研究が行われることはあり得る。この点につき、宇宙基地協力協定は特に規定を置いていない。

四の6の(1)について

 宇宙基地搭乗員による搭乗期間中の活動については、現時点では具体的に決まっていない。

四の6の(2)について

 我が国が提供する宇宙基地搭乗員の同基地における活動については、我が国との十分な協議の上で決められることとなっているので、我が国が提供する宇宙基地搭乗員の活動により問題となる事態が生ずるとは考えていない。

四の7について

 御指摘の利用計画の取扱いについては、了解覚書の規定以外に特に決められていない。

四の8について

 現在そのような具体的計画はなく、検討していない。

五の1について

 米国による取扱いについては、個々の研究ごとに、決定されることとなると承知している。我が国の取扱いについては、今後検討していくことになる。

五の2について

 仮定の御質問であり、今後必要に応じて検討することとなろう。

五の3から5までについて

 本件宇宙基地において今後行われる研究成果の帰属、公開等の取扱いについては、現時点では特に決められていない。

五の6について

 外国の法令に関しコメントを行うことは差し控えたいが、御指摘の点をもって直ちに宇宙基地協力協定の目的に反することとなるとは、考えていない。

五の7について

 我が国においては、特許を出願する行為自体について制約を課す法令は存在しない。
五の8及び9について

 我が国が提供する宇宙基地搭乗員及び我が国にとっての利用者又は顧客が米国の秘密情報に接することとなる事態は、具体的に想定し難い。

五の10について

 仮に我が国にとっての利用者又は顧客が本件宇宙基地で米国と共同研究を行った場合、その成果がだれに帰属するかについては、具体的共同研究が提案された段階で日米間で協議の上決定されることとなると考えられる。

六の1について

 御指摘のような事実はない。

六の2について

 参加国は、宇宙基地協力協定の下の里程標を目標として宇宙基地協力を進めている。

六の3について

 御指摘のような可能性は、考えられない。

六の4について

 クウェイル米副大統領が、平成元年九月に訪日した際に海部内閣総理大臣及び中山外務大臣と各々行った会談においては、御指摘の宇宙基地計画予算削減に関する情報の提供はなかった。