質問主意書

第115回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二号

米太平洋軍の統合実働演習「太平洋演習」(PACEX)と日米合同演習に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成元年八月十日

上田 耕一郎   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   米太平洋軍の統合実働演習「太平洋演習」(PACEX)と日米合同演習に関する質問主意書

 米太平洋軍は総力を動員して、九月一日から二ケ月にわたってアリューシャン列島から太平洋、オホーツク海、日本海、南シナ海に及ぶ広大な地域で陸海空軍統合実働演習「太平洋演習」(PACEX)を行う、ということである。報道によれば、同演習には米空母機動部隊四個、陸軍二~三個師団、海兵隊一個師団、B五二戦略爆撃機など航空機五百機以上が参加し、これにカナダ、南朝鮮、オーストラリア、フィリピン、タイなど同盟国軍も参加するということである。しかも、この演習に合わせて日米合同演習が行われるということである。千九百七十八年の「日米防衛協力の指針」(ガイドライン)の調印以後さまざまな日米共同作戦計画が作成され、それに基づく演習が強化されてきた。とりわけ重大な問題は、これまで、日本が武力攻撃された際の日米共同作戦計画を作成する、としてきたガイドラインの建前を変更し、「日本以外の有事」を含むいわゆる「波及型有事」の共同作戦研究に拡大してきたことである。米軍は今回の「太平洋演習」(PACEX)で、アジア・太平洋地域での対ソ連戦を想定しているものとしか考えられない。このような演習と同時に日米合同演習を行うことは、自衛隊が事実上「太平洋演習」(PACEX)に参加することにほかならない。このことは、自衛隊がアメリカの「有事」の際に参戦し、日本をアメリカの戦争に巻き込むことを前提とした演習に参加するという極めて危険な段階に入ったことを意味しており、改めて日米軍事同盟体制、日米共同作戦体制の危険な実態を示すものとなっている。
 このような危険な「太平洋演習」(PACEX)及び、それへの自衛隊の参加は直ちに取りやめるべきであり以下のことを質問する。

一 米太平洋軍の「太平洋演習」(PACEX)の期間はいつか。また演習に参加する陸海空軍の部隊名とその規模、航空機、艦船名とその数、演習に参加する国名、演習地域、海域、演習の指揮官名などを明らかにしていただきたい。

二 この演習のシナリオについて「カムチャッカ半島の無力化、千島列島の占領、オホーツク海・日本海の制圧、日本・韓国の防御・反撃、シーレーンの確保、沿海州への攻撃などが想定されることは確実と思われる」(千九百八十九年一月十六日付け産経新聞)と報道されているが、こうしたシナリオを含む演習なのか。

三 この演習への自衛隊の正式参加も有りうるのかどうか。「太平洋演習」(PACEX)の期間中の日米合同演習は、事実上の「太平洋演習」(PACEX)への参加ではないのか。

四 同時期に行われる日米合同演習の期間はいつか。また日米双方の規模、すなわち部隊名とその規模、航空機及び艦船名とその数、戦車等の数、演習地域、海域、演習の指揮官名などを明らかにしていただきたい。

五 日米合同演習の目的、シナリオは何か。

六 今回の米軍の行うアジア・太平洋地域を含む「太平洋演習」(PACEX)は、日本以外の「有事」想定演習も含むものになることは明確であり、これへの自衛隊の参加は、憲法で禁止している集団自衛権に触れるものではないのか。

七 このような「太平洋演習」(PACEX)への自衛隊の参加及び、同時期の日米合同(共同)演習は中止すべきではないのか。

  右質問する。