質問主意書

第114回国会(常会)

答弁書


答弁書第二一号

内閣参質一一四第二一号

  平成元年六月二十三日

内閣総理大臣 宇野 宗佑   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員佐藤昭夫君提出大学夜間部に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員佐藤昭夫君提出大学夜間部に関する質問に対する答弁書

一の(一)について

 勤労青年に対し高等教育を受ける機会を拡大する等の観点から、従来から大学の夜間部の充実に意を用いてきており、今後とも十分配慮してまいりたい。

一の(二)及び四の(一)について

 企業においては大学の夜間部に通学する勤労学生に対して労働時間等の労働条件の面で配慮を行っているところも多いと認められること、大学の夜間部の授業形態等には高等学校の定時制と比べて弾力性があること、夜間部の学生が減少していること等から、政府としては、夜間部の学生の労働時間等の労働条件について、調査を含め特段の措置を講ずることは考えていない。

一の(三)について

 大学における図書館、食堂、サークル室等の施設や設備の利用については、各大学においてその実情を把握しているものと考える。

二の(一)について

 文部省が実施した「昭和六十一年度学生生活調査」によると、定職を有する大学の夜間部学生の定職により得られる年間収入については、平均で約二百五万円となっている。なお、産業別の調査は行っていない。
 また、定職を有する夜間部学生の生活の実態についての調査は、行っていない。

二の(二)及び(三)について

 勤労学生控除の適用が受けられる者の所得金額要件の上限は、従来から基礎控除額と勤労学生控除額との合計額をもって定められているが、この水準については、昭和六十三年十二月の税制改正において、合計所得金額六十二万円(給与収入でみると、給与所得控除の適用があるため、百十九万円となる。)に引き上げたところであるので、これを更に引き上げることは考えていない。

二の(四)について

 私立大学等経常費補助金特別補助は、私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興等のため特に必要があると認められるものについて、増額補助を行っているものであり、夜間部教育についても対象としてきたところである。
 また、日本育英会の育英奨学事業は、人材の育成に資するとともに、教育の機会均等に寄与する重要な教育施策であり、逐年充実してきたところである。
 今後とも、社会的要請、厳しい財政事情等を総合的に勘案しつつ、これらの施策の充実に努めてまいりたい。

三の(一)について

 文部省が実施した「昭和六十一年度学生生活調査」によると、大学の夜間部学生のうち、通学のために定期券を使用して交通機関を利用している者は、全夜間部学生の約六十九パーセントであり、また、通学のための定期券購入に要する経費は、夜間部学生一人当たり一年間で約六万四千円である。

三の(二)について

 御指摘の方法により大学の夜間部学生の交通費負担の軽減を図ることについては、その必要性、事業経営に与える影響等につき、通学定期旅客運賃の現状を踏まえ、慎重に検討する必要があると考える。

四の(二)について

 大学の移転については、大学における教育研究の実施の根幹にかかわり、学生や教職員に及ぼす影響等も大きい事柄であるので、個々の大学においてこれらを総合的に検討して、自主的に判断することが基本であると考える。
 文部省としては、大学の移転に当たっては、大学の意向を尊重しつつ、御指摘の点も含め、適切に対処するよう指導しているところである。
 なお、大阪外国語大学においても、学内において、第二部学生の通学の利便等も含めて、慎重に検討し、現在地への移転が決定されたところである。

四の(三)について

 大学に通う勤労学生を変形労働時間制により労働させる場合には、労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)第十二条の六において、使用者は、これらの者が「必要な時間を確保できるような配慮をするように努めなければならない」こととされており、労働省としては、集団指導等の機会を通じてその周知徹底を図っているところである。

四の(四)について

 最低賃金は、地域別又は産業別に、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して、公労使三者構成の最低賃金審議会の意見を尊重して決定されるものであり、政府としては、最低賃金の決定、改正等が適正に行われるよう努めているところである。

四の(五)について

 労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)は、アルバイトやパートタイム労働に従事している大学の夜間部学生が業務上の事由又は通勤により被災した場合にも適用されるが、通学については、一般的には通勤とは異なると考えられるので、同法の適用はないところである。

五の(一)について

 大学の施設等の教育環境については、各大学において、その実情に応じ、所要の整備が図られているものと考える。

五の(二)について

 大学の施設の運営については、各大学において、当該大学における学生の授業科目の選択状況等の実情に応じ、配慮がなされているものと考える。
 なお、国立大学附属図書館については、従来から、職員の勤務時間外の開館を促進するため、担当要員の給与について予算措置を行っており、今後とも、開館時間の延長について配慮してまいりたい。