質問主意書

第114回国会(常会)

答弁書


答弁書第一八号

内閣参質一一四第一八号

  平成元年六月十三日

内閣総理大臣 宇野 宗佑   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員下田京子君外一名提出米・食管制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員下田京子君外一名提出米・食管制度に関する質問に対する答弁書

 平成元年五月の農政審議会企画部会第一小委員会報告(以下単に「報告」という。)は、今後の米政策及び米管理の方向について、昭和六十二年二月以降二年余にわたる検討の上、各界の有識者の衆知を集めて取りまとめられたものであり、政府としては、今後、食糧管理制度の基本的役割を踏まえ、報告の方向に沿って、その内容について十分検討の上、条件整備を図りつつ逐次具体的施策を展開していく考えである。

一の(一)について

 報告においては、政府米の数量は、年間及び全国を通じた米の安定供給を確保するとの観点に立って、当面、主食用米の流通量の四割程度を目途とするとされている。
 政府米の数量については、昭和六十三米穀年度の自主流通比率が五十四パーセントとなっていることからみても、当面、四割程度あれば十分であると考えられるが、報告においては、その水準が達成されていく中で、持越在庫の水準、民間流通する米の需給動向等を踏まえて見直しを行うこととされている。

一の(二)について

 報告においては、政府は、米全体の需給計画を策定し、米の安定供給を確保するために必要な数量を直接買い入れ、保有し、売り渡すとともに、民間流通する米についても最小限の流通規制を行いつつ計画的販売と在庫形成を誘導する等適切な関与を行い、また、生産調整の推進のために必要な措置を講ずることとされており、このような措置により、政府が、米全体の需給及び価格の安定に責任を果たすことができるものと考えている。

一の(三)について

 報告においては、民間流通する米について計画的販売と在庫形成を誘導し、周年安定的な供給を確保するとの観点から、民間流通助成の在り方について検討を行うこととされている。
 また、報告においては、米の生産調整の推進を図るため、集落等地域集団の役割を重視し、地域輪作農法の定着と地域の合理的な土地利用に資するような助成等の手法を取り入れることとされている。
 これらの助成を含め民間流通に適切に関与していくことを通じて米の需給及び価格の安定を図ることが必要であると考えている。

二の(一)及び(二)について

 現在の自主流通米の価格形成は、需給動向に弾力的に対応するという民間流通本来の良さを十分発揮していないため、生産及び流通の面で需要の動向への対応が不十分であり、また、このことが不正規流通の発生の一因ともなっていると考えられる。
 このため、報告においては、民間流通の良さを一層いかし得るよう、流通規制を緩和するとともに、米の需給動向や品質評価を価格に的確に反映させるための価格形成の場を設けることとされている。
 報告において、価格形成の場は、一定の資格を有する集荷業者と卸売業者等との間の価格形成を図る機能等を果たすものとすることとされているが、その具体的な仕組みについては、今後検討していくこととしている。

二の(三)について

 報告においては、中山間地域等については、生産者の工夫による付加価値の高い特徴のある米作りへの取組を進めるほか、地域の活性化、国土保全等の幅広い観点から必要な施策を検討していくことが必要であるとされている。
 また、報告においては、米の生産調整について、需要に対応した生産を行うことは生産者自身が主体的に取り組むべき課題であり、生産者・生産者団体が行政の支援を受けつつ、組織的対応を強化して主体的に取り組むこととされており、このような中で、豊作等による価格の大幅な低落を招くような著しい過剰の場合には、その対応策を検討することとされている。
 中山間地域対策及び著しい過剰時の対応策については、このような報告の趣旨を踏まえ、検討することとしている。

二の(四)について

 報告において、米の政府買入価格については、構造政策の推進にも配慮しつつ、生産性の高い稲作の担い手層に焦点を置き、稲作の生産性の向上とコスト低減を価格に的確に反映したものとすることとされており、今後、報告の趣旨を踏まえ、稲作の一層の生産性の向上を図り、農業経営の安定を確保しつつ、国民の理解と納得の得られる価格で米の安定的供給を図っていくことが重要であると考えている。

二の(五)について

 平成元年産米の生産者米価については、いまだ何も決定していないが、食糧管理法(昭和十七年法律第四十号)に基づき、適正に決定する考えである。

三について

 土地改良事業については、従来から、公共性の程度等を勘案し、高率の国の費用負担を行っているところである。さらに、平成元年度予算においては基幹的な農業用用排水施設を整備する国営土地改良事業の創設等を行い、農家負担の軽減を図ることとしているところである。
 また、需要の動向に即した農業生産の推進及び地域の生産条件に対応した技術の開発を図るため、新品種の育成及び栽培技術の改良に関する試験研究に積極的に取り組んできているところである。今後とも、農業の生産性の向上、生産の安定化等を図るため、これらの試験研究を積極的に推進してまいりたい。
 農業生産資材費の引下げについては、今後とも、農業生産資材の供給及び利用の両面において、適切な対応が行われるよう、競争条件の整備、輸入品の活用等を含め、関係者への指導に努めてまいりたい。

四の(一)、(二)及び(四)について

 米の貿易問題については、二国間協議ではなく、ウルグァイ・ラウンドにおいて各国が抱える困難な農業問題や制度について議論を行う段階において討議することが適切であると考えている。
 国民の主食であり、かつ、我が国農業の基幹作物である米については、国会における決議等の趣旨を体し、生産性の向上を図りつつ、自給するとの基本的な方針で対処していく考えである。

四の(三)について

 昭和六十三年十一月、米国大統領選挙の結果を踏まえ、松永駐米大使が事務打合せのため一時帰国し、竹下総理大臣、佐藤農林水産大臣他に米国情勢を報告したことは事実である。その際、日本の米の輸入制度に対する米国内の見方について、一般的な説明が行われた。
 米については、加工原料米も含め、今後とも自給するとの基本的な方針で対処していく考えである。