質問主意書

第114回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三号

内閣参質一一四第一三号

  平成元年六月六日

内閣総理大臣 宇野 宗佑   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員丸谷金保君提出日米防衛特許協定等に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員丸谷金保君提出日米防衛特許協定等に関する再質問に対する答弁書

一の(一)及び(二)について

 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法施行令(昭和二十九年政令第百四十九号。以下「施行令」という。)第二条第一項の規定により、国の行政機関(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定されている国の行政機関をいう。)の長で、アメリカ合衆国政府から防衛秘密(日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法(昭和二十九年法律第百六十六号。以下「秘密保護法」という。)第一条第三項に規定されている防衛秘密をいう。以下同じ。)に属する事項又は文書、図画若しくは物件の供与を受けたものは、その防衛秘密につき、施行令第一条に規定されている秘密区分の指定を行わなければならないこととされている。
 協定出願(防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(昭和三十一年条約第十二号)の不可分の一部を成す議定書第三項(a)に規定されている特許出願又は実用新案登録出願をいう。以下同じ。)がなされた技術上の知識又は当該知識に係る文書、図画若しくは物件のうち、防衛秘密に属するものについては、秘密保護法第二条及び施行令の関係規定により、標記を付し、関係者に通知する等防衛秘密の保護上必要な措置が講じられ、それ以外のものについては、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)等の関係規定により保護されることとなる。したがって、同じ協定出願でありながら、異なる二つの秘密保護法規で区別することについて、混乱が起こるのではないかとの御指摘は当たらない。

一の(三)について

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定(昭和二十九年条約第六号。以下「相互防衛援助協定」という。)第一条第一項の規定に基づく細目取極に従って我が国政府の使用に供される技術上の知識は、防衛秘密に該当しないものであっても、政府の委託を受けた者に使用させることが排除されてはいない。

一の(四)について

 秘密保護法違反として、捜査の対象となるのは、関連資料等により同法に違反したと思料される者に限られるのであって、協定出願の対象たる発明を公にすることとなる発明をしたことだけで、直ちに捜査の対象となるものではないから、御指摘のように協定出願の対象たる発明とは無関係の発明をする日本人がいちいち捜査の対象となるものではない。また、この種事案については、特殊専門的な分野における問題でもあり、関係官庁間で十分連携を取って慎重に対処することとしている。
 したがって、同法違反に関する捜査により、日本の科学技術の平和的な発展が阻害されることにはならない。

二の(一)の1について

 次期支援戦闘機(以下「FS-X」という。)共同開発の成功には、日米間の相互技術交流が不可欠であると認識しており、共同開発を実施していく過程において、米側はF-16に関する技術情報を適切に日本側に供与するとともに、日本側からも開発の成果として得られた技術情報を適切に米側に供与することとしている。政府としては、不平等な取扱いになっているとは認識していない。

二の(一)の2について

 四つの分野の技術を含む技術情報の移転ないし同技術情報に対するアクセスの取扱いについては、相互防衛援助協定に基づく次期支援戦闘機システムの共同開発に関する交換公文(以下「交換公文」という。)の実施のための当局間の細目取極(以下「細目取極」という。)に従って行われることになっており、松永書簡・ベーカー書簡の間に食い違いがあるということはない。
 また、ベーカー書簡は、これらの四つの技術についても、その開発にとって米国の技術が本質的であるような場合があり得、その点については、個々の技術ごとに細目取極に従い日米間で決定されるということを意味している。なお、FS-X共同開発の成果として得られる技術情報は、日本政府に帰属することとなる。

二の(一)の3について

 ミッション・コントロール・コンピューターを開発するためのソースコードに対するアクセスは、細目取極に基づき行われる。また、細目取極において、米側はF-16に関する技術情報を適切に日本側に供与することとされている。

二の(一)の4について

 FS-Xの整備を進めるに当たっては、憲法及び専守防衛等の基本的防衛政策に従うことは言うまでもなく、この点については米側としても十分理解しているところである。

二の(一)の5について

 防衛庁に納入される品目の価格については、米国において生産される品目も含め、予定価格の範囲内において、適正に決められるものである。

二の(一)の6について

 交換公文に基づく政府の財政上の債務の負担又は支出は憲法上の規定に従った予算の承認を得たところにより行うこととなっており、交換公文はいわゆる財政事項を含む国際約束ではないので御指摘は当たらない。

二の(二)について

 対米武器技術供与取極における武器技術の対米供与は、外国為替及び外国貿易管理法(昭和二十四年法律第二百二十八号)及びその関係法令に従って行われることとなっているので、その基準が米国政府の思うがままになるということはない。

二の(三)について

 御指摘のような密約はない。

三の(一)について

 政府としては、先に述べたとおり、科学技術における研究開発のための協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定に基づく協力活動において取り扱われないこととなる情報及び機材の取扱いについては、個々の場合の具体的状況により異なるので一概には論じられないとの立場であるが、このような考え方が「米国に対して通用しない」という認識は有していない。

三の(二)について

 御指摘の「グレイゾーンの情報」なるものについて具体的に何を念頭においておられるかは依然として明らかではないが、昭和六十三年十月に設置された科学技術情報のアクセス小委員会につき改めて申し上げれば、同小委員会においては、科学技術に関する情報の一つとして、政府機関により又は主要な政府支援研究計画を通じて生み出された科学技術上の報告書であって、容易に入手可能な専門的文献に発表されていないもの(明確な定義があるわけではないが、「グレイ・リテラチャー」と呼ばれることがある。)が存在することを踏まえ、そのような報告書を利用できる機会を相互に改善するための方策につき検討が行われているところである。

四の(一)について

 平成元年三月二十八日付け内閣参質一一四第四号の答弁書「三の(一)について」において言及している書簡は、常時有人の民生用宇宙基地の詳細設計、開発、運用及び利用における協力に関するアメリカ合衆国政府、欧州宇宙機関の加盟国政府、日本国政府及びカナダ政府の間の協定において明らかな点を交渉担当者が念のために確認したにすぎないものであり、右答弁書において答弁したとおりの取扱いとすることで問題はないと考える。

四の(二)について

 政府としては、我が国における宇宙の開発及び利用については、我が国における宇宙の開発及び利用の基本に関する国会決議を尊重して対処してきており、宇宙基地の利用についても、この方針に変わりはない。

四の(三)について

 日本実験棟の利用については、米国による利用も含めて、当該利用が平和的目的のためのものであるかないかは我が国政府が決定する。我が国政府が平和的目的のためのものでないと決定した場合には、そのような利用は、行われない。