第114回国会(常会)
質問第一二号
公共スポーツ施設の整備等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成元年五月十二日 佐藤 昭夫
公共スポーツ施設の整備等に関する質問主意書 わが国のスポーツ人口は以前と比べて増加してきているが、だれもが気軽に利用できる公共スポーツ施設は極めて不足している。千九百八十五年の文部省調査によると、わが国の社会体育施設は、保健体育審議会が千九百七十二年に答申した施設整備基準(最低必要数)に照らしても、体育館で五十二%、プールで二十九%、コートで二十四%を達成しているにすぎない。にもかかわらず、千九百八十九年度文部省予算案の社会体育施設整備費は、わずか約六十三億円にすぎず、しかもこれは、七年前のおよそ半額であり、大幅に削減されている。
一 公共スポーツ施設は、いうまでもなく地方自治法第二百四十四条の「住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設」であり、「社会教育の奨励に必要な施設」(社会教育法)である。従って、公共スポーツ施設は、営利を目的とする商業スポーツ施設とは本質的に異なる性格のものであり、スポーツ振興法も「この法律に規定するスポーツ振興に関する施策は、営利のためのスポーツを振興するためのものではない」と規定している。ところが、政府は「民間活力の導入」と称して、商業スポーツ施設の育成のための一連の支援措置を講ずる一方、公共スポーツ施設については、その整備のための国の予算を大幅に削減してきたことに見られるように、それが商業スポーツ施設と競合するという立場から、その整備を抑制しているのである。こうした政府がとっている施策の方向は、国のスポーツ振興施策の基本にもとるものである。
二 千九百八十五年の文部省調査によると、体育館・プール・総合運動公園の公共スポーツ施設のうち、一部委託も含めて三十六・四%の施設で民間委託が行われており、そのうち四十四・五%の施設が民間企業に委託されている。これらの民間委託された公共スポーツ施設では、「自立・自助」の精神に基づく管理運営が押し付けられ、採算本位の運営が強いられていることから、収益性の高い事業に偏る傾向にある。そのため、「住民の福祉」とか「住民の利用に供する」という公共スポーツ施設の本来の目的が失われ、その性格が変質してきている。
三 現在、指導者が配置されている公共スポーツ施設は、主要施設に限っても二十一・六%にすぎず、その配置率は、五年前の調査に比べて七・六%低下している状況にある。しかもそのうち、専任の指導者が配置されている施設は、さらに少ないのである。このことは、公共スポーツ施設が単なる「貸しホール」「貸し席」にとどまり、社会教育の機関、あるいは地域のスポーツ活動の拠点として機能しえていないことを示すものである。本来、公共スポーツ施設に専門の専任指導者を配置することは、建造物とともに公共施設整備の基本的な要件である。
右質問する。 |