質問主意書

第114回国会(常会)

質問主意書


質問第八号

過疎問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成元年四月十日

下田 京子   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   過疎問題に関する質問主意書

 過疎地域における総人口の減少率は鈍化の傾向にあるとはいうものの、いまだ多くの市町村で人口が減少しており、特に若年者層の激しい流出は構造的に続いている。
 過疎地域の高齢化率は全国平均の十・三%に比べ十七・〇%にも達している。しかも六十二年度版過疎白書の将来人口推計によれば、「過疎地域の人口減少率は再び悪化する傾向に転じ、二千五年には六百五十七万人と現状(千二百七十五万人)からほぼ半減する見込み」と指摘するなど、依然として厳しい深刻な問題を抱えている。
 福島県における高齢化率は、例えば金山町で二十五・五%、昭和村二十一・三%、伊南村二十一・二%、三島町二十・四%、南郷村二十・二%、下郷町二十%になるなど、いずれも高い高齢化率を示している。かつ、特別豪雪地帯にあり、若年人口の構造的流出及び人口の再生産能力の著しい低下と自然減の着実な進展等で、既に集落の崩壊の危機が懸念される状況にある。
 深刻な過疎問題の原因は、歴代自民党政府が推し進めてきた、農業や地場産業を軽視した大企業奉仕の経済政策にある。鉄道の在来線や路線バスの廃止、学校統廃合の強制、医療施設の閉鎖等に見られる生活基盤の著しい悪化などは、弱者、不採算部門を切り捨てる冷たい自民党政治そのものである。
 こうした行政のひずみや深刻な財政難は、本来政府の抜本的施策の見直しや交付税交付金によって解決されるべき問題であり、財源不足に苦しむ過疎地域が、新たな債務を抱えることは、不合理な問題である。
 しかし、当面の措置として、過疎地域にあっては、地域の実態に照らした新たな過疎地域振興対策が切実に求められているところであり、過疎地域振興特別措置法の期限切れを前に、同法の抜本的な検討を図るよう強く要望するとともに、以下具体的に質問する。

一 過疎地域指定要件の見直しについて

 過疎地域の実態の変化に伴い、過疎地域指定要件の見直しが急務となっている。過疎が進み、既に人口減少率は緩和しつつあるものの、死亡者数が出生数を上回り、再生産能力や財政力の著しく低下している地域が相当数見受けられる。例えば、福島県檜枝岐村の場合かつて千九百六十年当時九百八十三名だった人口総数は千九百八十九年二月現在六百六十一名に激減し、高齢化率は十六%、財政力指数は八十八年度〇・二六六%に落ち込んでいる実態にあるが、人口減少率が緩和しているため過疎地域の指定が受けられず、加えて豪雪地という悪条件を抱え、村の財政難は深刻な状況にある。こうした矛盾を解消するため、過疎地域の指定要件に例えば、「高齢化指数」及び「若年労働力指数」等を加える必要があると思うがどうか。

二 過疎債等起債対象事業の基準緩和と適用範囲の拡大について

(一) 農水省の投資額を見ると非過疎地域と過疎地域の比較では、五対一という割合になっている。その大半の理由は、補助対象となる公共事業の採択基準が大きく、これら過疎地域の実情になじまないためである。
 例えば、福島県の金山町では総耕地面積が約三百五十ha、農家戸数八百三十一戸、一戸当たりの平均耕地は約〇・四haに過ぎない。三島町で〇・五ha、舘岩村で〇・六ha、只見町〇・六haであり、平均耕地面積が一haに満たない自治体が多く、農地もまた散在している。従って、土地改良や農村基盤総合整備事業等の採択基準である十ha以上は、規模が大きく過疎地の実情に合わない。三haから五haの規模にしてほしいとの要求が強い。各々の自治体が自主的に設計した独自の事業を適用対象として認めるなど、自主性を尊重するなら更に有効に対策が講ぜられると思われる。補助基準の緩和を図る考えはないか。
(二) 集落内に幅員五m以上の道路をもつ過疎自治体は少ない。道路整備を求める声は強く、集落内の幅員五m未満の道路についても、起債対象に加えるべきと思うがどうか。
(三) 医療・福祉施設の設置基準についても、小規模化を期待する声が高く、特養ホームの十人以上規模を認めてほしいとの要望が強い。実態に照らし、これらを認めるべきと思うがどうか。
(四) 高齢化率二十五・五%の福島県金山町の場合、高齢者世帯は一人暮らしが八十四戸(全世帯の六・三%)もあり、二人暮らしの世帯数を合わせると約十五%となる。高齢者対策が緊急の課題となっている金山町では、振興計画の柱にシルバーユートピアの建設を掲げ、冬期間お年寄りが長期滞在できる多目的集合施設として、シルバープラザの建設を始めている。しかし、多目的集合施設は国庫補助の対象にならず、過疎債の対象にもならない。高齢化の急速な進展の中で、対象となる施設の全面的見直しを行い、多目的施設も認めるべきと考えるがどうか。
(五) この他、地場産業、伝統芸能の継承、あるいは観光・レクリエーション施設、下水道整備事業等自治体の振興事業に広く過疎債の適用を図るべきではないか。
(六) 過疎地域の林野対策をどうするのか。特別の手だてなしに森林を保護することは不可能な状況になっている。治山治水、水源涵養機能、国土保全等の環境整備の点からも緊急の対応が必要である。雇用の場を確保し、若者が定着できる条件整備の一つとしても森林管理法人等の育成を図るなど、積極的対策が検討されるべきと思うがどうか。また、具体的に検討されている過疎地域林野対策があれば明らかにされたい。
(七) 特に豪雪地域においては産業の誘致がきわめて難しく、その上財政の大半が除雪費に消えている状況にある。道路及び函物の建設が認められても、除雪要員が確保されなければ建設にも支障をきたすところである。オペレーター及び除雪要員を確保するための財源を交付税で配慮するなど、特別の措置を講ずるべきと思うがどうか。

三 基準財政需要額の算定見直しについて

 過疎地域の人口割合は、全国の約七%と低い。しかし、面積では山間地を中心に約四十六%を占め、林野率ではおよそ八十%にも達しているところである。過疎地の農地及び林野の荒廃は著しく、こうした状態を放置することは、環境対策、災害対策上からも重大な問題を引き起こす懸念が強まっている。
 基準財政需要額の算定については、測定単位に人口が使われ、激減しているところの需要額は大幅に縮少している。しかし、人口割合にとどまらず、前述の実情を考慮するなど算定要件について、総合的に検討されるべきと思うがどうか。

四 過疎地域の実態の調査について

 過疎地域振興特別措置法立法当時と今日では、過疎地のその変貌ぶりは驚くべきものがある。同法の期限切れを前に全国過疎地の実態を直接調査・把握し、同法を最も効率的に機能させるべく見直しを図ることが求められている。過疎地域住民の要望を直接新法に反映させるためにも、積極的に政府が、まず責任をもって実態を調査することを強く要求する。政府の考えを明らかにされたい。

  右質問する。