質問主意書

第113回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一八号

耳納山麓国営総合かん排事業の計画変更に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十三年十一月二十九日

諫山 博   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   耳納山麓国営総合かん排事業の計画変更に関する質問主意書

 福岡県浮羽郡吉井町、浮羽町、田主丸町、久留米市にまたがる耳納山麓国営総合かん排事業は、昭和四十六年に着工され、昭和五十三年に完成する予定であつたが、今なお完成せず、事業開始後約十五年たつて突如事業計画変更案が提示され、地元負担額が大幅に増えそうだというので、大問題になつている。
 地元負担額が増える理由の一つは、工事期間が長くなつたことであるが、もう一つの理由は、当初の事業計画が既に大きく変更されているためである。事業計画の中には、施工面積の変更、工法の変更、水路の変更などがある。例えば、合所ダムの建設は、最初の事業計画では事業費十九億八千二百万円の予定であつたが、発表された事業計画変更案では九十八億二千五百万円もかかることになつており、そのうち四十八億三千七百万円は工法の大幅な変更による増加である。
 しかも、ダムの建設はほぼ完成した。開墾事業は最初の事業計画では七億五千七百万円の予定であつたが、事業計画変更案では事業費三十八億円となつており、そのうち約二十億円は工法の変更によるものである。幹線水路については位置も工法も大きく変更されており、最初二十三億円と予定されていた事業が、事業計画変更案では百四十六億円に上る予定で、そのうち工法変更による事業費の増加は約七十六億円である。幹線水路の工事はほぼ七割が既に完成している。
 耳納山麓国営総合かん排事業で重大なのは、土地改良事業者が同意を与えていた事業計画に比べて、事業の規模や工法が農民の同意なしに既に大きく変更され、そのため農民の負担が耐え難いものに増えようとしていることである。
 土地改良法第八十七条の三は、土地改良事業計画を変更する場合には、あらかじめ土地改良事業参加者の三分の二以上の同意を得なければならないことになつている。この法律をうけた農林事務次官通達(昭和五十四年)及び農水省構造改善局長の細部運用通達(昭和五十四年)では、例えば事業費が労賃又は物価の変動によるものを除いて十パーセント以上増えるときはあらかじめ事業参加者の三分の二以上の同意を得なければならないとし、ほかにも、当該事業の受益面積全体に対してその支配面積がおおむね二十パーセント以上又は五百ヘクタール以上に及ぶ用排水系統の著しい変更、同様に頭首工の位置の大幅な変更などの場合にも参加者の三分の二の同意が必要とされている。
 土地改良事業の民主的な運営、特に土地改良法第八十七条の三や同法施行規則及び右の通達、細部運用に照らせば、耳納山麓国営総合かん排事業でなされてきた当初の事業計画書によらない工事変更には、納得できない多くの問題点があり、以下質問する。

一 昭和六十二年十二月九日の参議院農水委員会の場等で農水省は、土地改良事業参加者の三分の二以上の同意は得ていないが、土地改良区の総代会などで随時説明してきたと、いかにも総代会での説明が、農民の三分の二以上の同意に代わり得るものであるかのような言い方をしている。しかし、土地改良法第八十七条の三第一項の「同意」は、「総代会等での説明」で代えることはできないのではないか。

二 土地改良法第八十七条の三第一項の「同意」は、あらかじめ取ることとなつているのではないか。事後承諾で足りると考えているのか。

三 「合所ダム」は当初の計画段階と比べて、建設省令の変更等もあつて工法及び工事費が大幅に変更されたが、これはあらかじめ「同意」を得べき土地改良事業の変更ではなかつたのか。

四 頭首工の位置は、当初農民の合意を得た計画地点から大きく外れているが、これはあらかじめ「同意」の対象とは考えていなかつたのか。

五 幹線水路の位置及び形状は、当初農民の合意を得た地点から外れ、また形状も地下導水方式に変わるなど変更されているが、これもあらかじめ「同意」の対象とは考えていなかつたのか。

六 本件かん排事業を巡る混乱は、農水省が土地改良事業計画を変更する場合にはあらかじめ土地改良事業参加者の三分の二以上の同意を得なければならないのに、これを怠つて、事業参加者の同意のない事業計画に従つて工事を行い、既に多額の工事費をつぎこんだところから始まつている。政府は、既成事実を農民に押し付ける結果になつていることを率直に反省し、そのことを農民に説明し、農民負担の大幅軽減を基本とし、かつ自治体に負担を押し付けることなく今後の処理にあたるべきだと思うが、どうか。

  右質問する。