質問主意書

第113回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇号

福岡県大和国営干拓事業の復旧に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十三年九月二十七日

諫山 博   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   福岡県大和国営干拓事業の復旧に関する質問主意書

 福岡県山門郡大和町の国営干拓事業(昭和三十三年着工、同四十七年竣工、事業費約二十九億円)によつて造成された干拓地は、総面積約三百三十一ヘクタール、農地約二百六十二ヘクタールに及んでいる。この干拓地に二十五人の農民が一人当たり四ヘクタールの土地を購入して入植し、そのほかに近隣の農民二百六十五人が一人当たり平均〇・六ヘクタールの土地を購入して、米作などに従事している。農民たち(以下「入植者ら」という。)は、この干拓地が子々孫々にわたつて耕作できる美田になることを信じてこの土地を購入した。売主である国に、売渡時においても、将来においても、入植者らに欠陥のない農地を提供すべき責任があつたことはいうまでもない。
 ところが、この干拓地は工事が竣工して間もないころから、ほぼ全域にわたつて陥没が始まり、平均一メートル、ひどいところでは二メートルも陥没して、農耕に重大な被害を与えるようになつた。物件の売買において、売買の目的物に隠れたる瑕疵があつた場合、一切の責任を売主が負うべきことは、民法上の原則である。入植者らは、干拓事業の施工者であり、干拓地の売主である国及び年賦償還金の徴収事務を代行している福岡県に対して、陥没地の復旧を要求してきたが、国も県もまつたく復旧工事をしないまま現在に至つている。
 被害を受けた入植者らは、やむを得ず多額の経費を自ら負担して客土、かさ上げをし、その出費は、多い人では一人二千万円にも達している。入植者らのこのような努力にもかかわらず、進行を続ける陥没に追い付くことができず、被害はますます深刻になつている。陥没による農業収入の減少も甚大であり、営農の継続に困難を来すようになつている。
 入植者らの土地購入代金の支払いは、二十五年の年賦償還で、福岡県を通じて国に支払うことになつており、入植者二十五名の償還額は年間一人平均百三十万円である。しかし、かさ上げ費用や収入減のため、すべての入植者らが年賦償還金の支払いが困難となつている。入植者らは、年賦金の支払いが困難となつた事情を国と県に説明し、延納を認めるように要請してきたが聞き入れられず、国と県は延滞金まで加算して支払いを督促してきている。これは、封建時代さながらの行為であると思われる。よつて、次の点について質問する。

一 国営干拓事業を計画し、干拓地を選定し、干拓事業を施工した国は、本件干拓地に陥没現象が生じることをあらかじめ予想していたのか。

二 昭和六十三年七月七日、参議院農林水産委員会において、「陥没の原因を作つたのは農民ではない、この点はどうですか」という私の質問に対して、農林水産省松山光治構造改善局長は「それは、そういうことではあろうというように思います」と答弁している。本件陥没について、入植者らには何の責任もないと思うが、明確に説明されたい。

三 陥没について入植者らに責任がないとすれば、陥没地の復旧は本来入植者以外のものの責任によつてなされるべきで、復旧費用も本来入植者らが負担を義務づけられるものではないと思うが、国はどう考えているのか。

四 この陥没は速やかに復旧さるべきであり、入植者らが応急に行つた復旧等の費用負担も、その分担を再検討さるべきである。本件陥没について、第三者による加害者が判明していない以上、いたずらに対策を引き延ばすことなく、干拓事業の施工者であり、干拓地の売主である国が、陥没の復旧等について、一切の責任を負つて速やかに処理すべきだと思うが、国はどう考えているのか。

  右質問する。