質問主意書

第112回国会(常会)

質問主意書


質問第一一号

対米交渉における日本政府の姿勢に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十三年四月十五日

木本 平八郎   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   対米交渉における日本政府の姿勢に関する質問主意書

 最近、牛肉、オレンジの自由化をはじめ東芝制裁措置など日米関係に大きなキシミが感じられるが、日本政府はアメリカの真意や狙いを十分に理解した上で交渉に臨んでいるのかどうかという観点から、日本政府の対米交渉姿勢を質したい。

一 農産物十二品目や牛肉、オレンジの自由化交渉に対して、大方の日本人は、『アメリカは一切譲歩せず、最後は日本側が全面的譲歩を余儀なくされるだろう』と予測し、また結果はそのとおりになりつつあるが、疑問が二つ残る。

1 日本政府もその辺はよく承知していたが、農民に対するゼスチャーや選挙支持基盤に対する思惑から、対米交渉に際して勇ましく強腰のゼスチャーを見せていただけなのか、それともアメリカの狙いや要求レベルを全然承知せずに『強腰交渉の成功を少しは期待し、結果が譲歩になつたことに期待外れと失望を感じているのか』どうか伺いたい。
2 昨今の日米関係において、アメリカが日本に要求している基本的内容は『日本も世界の経済大国になつた以上、大国としての責任と行動をとるべきで、欧米先進国並はもちろんのこと、日本の経済力にかんがみ欧米先進国よりも進んだ輸入の自由化や市場の開放を行うべし』ということと解釈するが、政府の見解はどうか。

二 アメリカ政府の日本に対するいら立ちは『日本政府の約束したことを実行せず、また国内的思惑を優先させて、対外的な約束の実行や責務の遂行を遷延・回避しているずるさ』にあると考えられるが、政府の受止め方はどうか。

三 最近、東芝問題をはじめ包括貿易法案、あるいは北洋漁業の禁漁措置など多分にアメリカ議会・政府の理不尽さや感情的行動が目立ち、今後ますますこの傾向のエスカレートが憂慮されるが、政府はかかるアメリカの感情的行動にどう対処するつもりか。

四 政府は従来国内的思惑を優先し、ダメで元々という姿勢で対米交渉を不必要に行い、アメリカ側の感情を刺激する愚を重ねているように思われるが、農産物交渉のごとく、見込みのないものははつきり関係業界にその旨を宣言し納得させるべきであり、前広に農家に期待をもたせ、挙げ句の果てが見殺し的に突き放すのは、農家対策としても最悪であり、国内不信を招くだけでなく、対外的にも不信を招いて、国際関係をマズクするのではないかと思うが、政府の見解はどうか。

五 最近の日本の世論動向をみるとアメリカの諸施策に対する被害者意識が高じ、一方では経済力や技術力に対する過信から、『アメリカ何するものぞ』という意気軒昂さがあり、さながら第二次大戦開戦前のファッション的雰囲気を感じるが、国民世論がそういう方向に向かつているとすれば、重大な政府の責任ではないか。また日本は憲法第九条の戦争放棄の精神にのつとり、経済力、技術力等武力以外のバーゲニングパワーもできるだけ誇示すべきではないと考えるが、政府の見解はどうか。

六 日本はまず世界の大国として自由化すべきものは自由化し、市場開放すべきものは開放しなければならないが、日米半導体協定違反を理由に半導体とは全く関係のない電動工具に報復関税をかけたり、ココム違反事件に対し、事件当事者でない東芝本社にまで制裁を課そうとしているアメリカの行き過ぎた行動に対しては、堂々と正論を主張すべきと考えるがどうか。日本はやるべきことをやつていないので、言うべきことも言えないのではないかというアメリカ側の反論を封じるためにも政府の具体的対策が必要と考えるが、政府の見解を伺いたい。

  右質問する。