質問主意書

第112回国会(常会)

質問主意書


質問第七号

杉の花粉症対策としてのディーゼルエンジンの使用制限に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十三年三月七日

木本 平八郎   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   杉の花粉症対策としてのディーゼルエンジンの使用制限に関する質問主意書

 本問題については、一昨年十二月三日付質問主意書の中で政府の対策を質し、十二月二十六日付で政府の答弁書が送付されているが、その後具体的に対策が講じられた形跡がないので、ここに再び問題を提起し、政府の見解並びに対応を伺いたい。
 すなわち、毎年早春になると、杉の花粉によるアレルギー症が蔓延し、数百万人(人口の七~八パーセント)の患者が鼻ミズ、クシャミなどの発作で苦しむが、現在のところ決め手になる治療法がなく、拱手傍観してシーズンの過ぎるのを待つほかない状態である。
 しかも年々患者は増え続けている。一方、同症の原因としては直接因子の杉の花粉のほかにベーシックな条件として、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれるディーゼル排出微粒子(DEP)の存在が有力視されている。
 そこで、政府の対応並びに見解について質問する。

一 DEPと杉の花粉症の因果関係はまだ医学的な定説にはなつていないものの、状況証拠は極めてクロに近く『疑わしきは排除する』という建前からすれば杉の花粉症対策としてディーゼルエンジンの使用制限を早急に検討すべきではないか。

二 ガソリンエンジンには厳重な排ガス規制が実施されているのに対し、ディーゼルエンジンの排ガスが見逃されているのは片手落ちではないか。
 ディーゼルエンジンのメーカーや利用者側の論理としてはエンジン構造や技術的な問題を揚言するだろうが、一般の人々にとつては排ガスの有害性は両エンジンとも同じである。もしディーゼルエンジンがガソリンエンジン並の排ガス規制値をクリヤーできないなら、ディーゼルエンジンの使用を禁止し、ガソリンエンジンで代替させるべきではないか。

三 ディーゼルエンジン燃料の軽油引取税を引き上げ、少なくともガソリンと同価格にして、ガソリンエンジンへの転換を促進すべきであると考えるが、政府の見解はどうか。

四 ディーゼルエンジンには『低速でハイトルク』などがガソリンエンジンでは得られない特徴が存在するが、逆にこういう特徴のためにディーゼル燃料費が高くなつても十分対抗できるはずである。
 そもそもディーゼル燃料(軽油)を割安に設定しているのは、生産者サイドのメリット(石油分溜生成品の処分、あるいはディーゼルエンジン使用による燃費効率などの生産性)によるものであり、消費者サイドの都合ではないと考えるが、政府の見解を伺いたい。

五 仮に牽強付会的に燃費や生産性がよくなることは、消費者にとつてもメリットがあるとする論理が持ち出されるにしても、昨今の日本は世界第一の経済大国になり、これ以上生産性を追求することはかえつて他国に悪影響を及ぼすと懸念されている状況ゆえ、むしろチャンスを見つけて生産中心主義から脱皮すべきではないか。

六 更にこれに関連して、日本は人口密度が高いこともあり、健康にわずかでも懸念のある方法で経済性を追求することは厳に慎しむべきである。その観点からも杉の花粉症にDEPが関係している疑いが指摘されている以上、とりあえずはディーゼルエンジンの使用を制限して、『花粉症とDEPの因果関係』を追求した後、シロの結論が出た場合にディーゼルエンジンの使用自由化を再開すべきではないか。
 それとも政府は今後とも生産者(輸送も含む)サイドの利益と都合を優先させる所存か。具体的な見解と今後の対応策を示されたい。

  右質問する。