質問主意書

第110回国会(臨時会)

答弁書


第百十回国会答弁書第一号

内閣参質一一〇第一号

  昭和六十二年十二月四日

内閣総理大臣 竹下 登   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員木本平八郎君提出今回の税制改革における利子課税制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員木本平八郎君提出今回の税制改革における利子課税制度に関する質問に対する答弁書

 第百九回国会において成立した「所得税法等の一部を改正する法律(昭和六十二年法律第九十六号)」においては、所得税負担の大幅な軽減・合理化を行うとともに、改正前の非課税貯蓄制度について、多額の利子が課税ベースから外れて給与所得等との間で税負担の不公平をもたらしていること、今日において貯蓄奨励といつた目的で一律的に政策的配慮を加える必要は薄れてきていること等にかんがみ、少額貯蓄非課税制度、郵便貯金非課税制度及び少額公債の利子非課税制度を老人等に対する利子非課税制度に改組するとともに、勤労者財産形成住宅(年金)貯蓄の利子所得等の非課税措置を講じた上、これら以外の利子所得については一定の税率による源泉徴収により他の所得と分離して課税することとされたところである。

一について

 御指摘の事例については、それぞれのケースで、どれだけの預貯金を有しているか等が不明であるため、これらについて「新旧税制による負担(可処分所得)の増減額」等を示すことは不可能である。
 なお、御指摘の三例のうち、(一)については、交通事故等で父親を亡くした母子家庭は、通常、その母親が「遺族基礎年金を受けることができる妻である者」等として非課税の対象に含まれるものと考えられ、(二)についても、「遺族基礎年金を受けることができる妻である者」等として、非課税が存置される「老人等」に含まれているところである。

二について

 御提案の措置の内容は必ずしも明らかではないが、そのような措置を採ることとした場合、このような金融資産を選択した者についてのみ、その利子所得等について六十五歳未満であつても非課税の恩典が与えられることとなるが、これは、老人の範囲を、国の老人福祉に係る諸制度の適用対象年齢等を勘案して六十五歳以上の者とした趣旨に反するほか、税負担の公平を害することとなり、適当でないと考える。
 また、御提案の措置には、長期の金融資産を相対的に優遇することとなり、金融資産間の選択をかく乱するおそれがあるという問題もあるものと考える。
 なお、今回の税制改正においては、勤労者財産形成年金貯蓄の利子所得等について所得税を課さないこととされ、勤労者の老後への備えについて配慮がなされているところである。

三及び四について

 利子所得には、発生の大量性、その元本である金融商品の多様性、浮動性といつた特異性があり、総合課税の適正な執行を確保するためには、捕そく、管理について納税者番号のような大がかりな制度を要するほか、納税者、金融機関、郵便局、国・地方の税務当局に膨大なコストと事務負担を強いることになること等から、現在の納税環境や税務執行体制に顧みれば、直ちに総合課税の対象とすることは、現実的でなく、適当ではないと考える。
 このような見地から、一般の利子所得に対しては、一定の税率による源泉徴収により他の所得と分離して課税することとしつつ、老人等所得の稼得能力の減退した者については老人等に対する利子非課税制度を適用すること等により、実質的な公平を図ることとしたものである。