質問主意書

第110回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

今回の税制改革における利子課税制度に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十二年十一月六日

木本 平八郎   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   今回の税制改革における利子課税制度に関する質問主意書

 昭和六十二年度税制改正において、当面の減税財源があるにもかかわらず、世論と野党の反対を無視して、永年国民の生涯計画の基盤として定着しているマル優等の利子非課税制度を原則廃止したことは、「弱者には配慮する」と言いながら不十分であり、結果として次のような欠陥を生ずることになるが、これに対する政府の見解並びに対応策を伺いたい。

一 マル優等を、障害者、寡婦、六十五歳以上の老人等に限つたことにより、その他の適用につき甚だしく税の負担増を招くが、次に掲げる病気その他の理由により他に収入増加の道がなく、生活費の圧縮を余儀なくされる社会的弱者の受ける負担増の実額とその対応策を示されたい。

(一) 交通事故等による遺児で、亡くなつた親の補償金等の利子で生活している者(特に複数の就学中の未成年者で構成される世帯)。
(二) サラリーマンの遺族である寡婦で、遺族年金と、亡夫の退職金、生命保険金で生活している者(特に未成年扶養者がいる場合)。
(三) 定年退職したが再就職できず、退職金を含む老後資金の運用利子で生活している六十歳未満の夫婦(厚生年金未受給)。
 一人九百万円の利子非課税を利用し、マル優等限度超過分は総合課税で源泉徴収分を確定申告により全額還付を受けているものとして、新旧税制による負担(可処分所得)の増減額を明示されたい。なお、運用利率については数年前の長期国債、定額貯金等(年率八パーセントあるいはそれ以上)を含んでいれば、平均七パーセントになることを勘案し、高低複数の利率で算定されたい。

二 昭和六十三年四月一日に満六十五歳未満の者の既存の非課税預金に対して、同日以後満期まで課税貯蓄とし、満期前に六十五歳に到達しても非課税とはならないとのことであるが、次の点で問題である。

(一) この年齢では、通常新たに多額の収入はないので、新規預金はできない。
(二) 満期前、途中解約して預け換える場合、途中解約で手数料を取られるものもあり、あるいは金利低下で不利となることが多い。したがつて六十五歳になつて非課税枠が与えられてもすぐに利用できない。
 本税制改革案審議中において、老人に対する新マル優の適用年齢の引下げ要求に応じなかつたことは問題であり、さらに金融機関等の手数の簡略化を理由にした、かかる筋の通らぬ適用方法は早急に改善されるべきと考える。
 一つの提案として、満期時に満六十五歳に到達する預貯金については新マル優を適用して非課税とし、若し満六十五歳到達前に解約した場合はさかのぼり課税してはどうか。これにより満五十五歳以上になれば、長期国債や定額貯金を利用して老後に備えることが可能となり、高齢化社会に対応する税制改革の主旨に沿うことになるし、金融機関の手数もかからぬと思うが、政府の見解を伺いたい。

三 他の所得にも最低控除額があるにもかかわらず、利子所得だけについて、少額の控除もなく一律二十パーセント分離課税を決めたことは総合課税と言う税の原則にも反し、金持ち優遇(三十五パーセントから二十パーセントへの税率低下)となるのみか、主として利子所得に依存する低所得者の基本的権利とも言うべき、イ基礎控除、ロ配偶者控除、ハ特別配偶者控除、ニ社会保険料控除、ホ生・損保控除、ヘ医療費控除等の基礎的控除さえ不可能にし『弱者への配慮』から甚だしく逸脱すると考える。
 金融機関、徴税側の最小限の手数を免れるために、低所得者に負担増を強いるべきでなく、最低限、総合課税の選択の余地だけは残すべきであると考えるが、見解を伺いたい。

四 要するに、今回の税制改革においては、とかく金融機関と徴税側の負担軽減に重点が置かれ、「簡素」「効率」等のみを図り、最も大切な『公平』の原則を逸脱し、大きな被害を受ける弱者を見殺しにする点が問題と思うが、政府としては修正する用意があるか、伺いたい。

  右質問する。