質問主意書

第109回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一三号

内閣参質一〇九第一三号

  昭和六十二年十月二日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員黒柳明君提出地価対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員黒柳明君提出地価対策に関する質問に対する答弁書

一について

 地価高騰の抑制等総合的な土地政策を推進するに当たつては、適正かつ合理的な土地利用の実現を図ることが極めて重要であり、このためには、土地の私的な保有、処分、利用に対し公共的な立場から制限及び誘導を行うことが有効である。このような観点から、現在、国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)を始めとする各種法令により、土地の利用、取引等についての制限を行つているところであり、今後ともこれら法令の適正な運用に一層努めてまいる所存である。
 現行制度以上に私権の制限の拡大を行うかどうかについては、国民の財産権に深くかかわる問題であり、各方面の意見を聴きつつ、慎重に検討を行う必要があると考える。

二及び三について

 国土利用計画法第十二条による規制区域の指定は、土地取引に対し厳しい制限を課することとなり、経済社会に与える影響が極めて大きいため、関係知事はその指定について慎重に判断すべきものとしてきたところであり、政府としてもこれを尊重してきたところである。
 今後とも土地取引状況、地価の動向等を監視しつつ、必要に応じて規制区域の指定についても、関係地方公共団体と緊密な連絡・調整を図り、的確な指導に努めてまいりたい。

四について

 規制区域の指定が行われる場合には、地方公共団体の事務量の増加に的確に対処するため、必要な措置を講じてまいりたい。

五について

 大都市における地価上昇の原因は、基本的には、おう盛な事務所需要、買換え需要、これらを見込んだ投機的な土地取引等にあるものと考えている。
 日本国有鉄道清算事業団の土地の処分に当たつては、公正の確保及び国民負担の軽減の観点から、原則として一般競争入札の方法に準じた方法によることとされているが、国、地方公共団体等が当該土地を道路、公園等の公共用、公用又は公益事業の用に供する場合には、例外として随意契約による方法により行うことができることとされている。この場合においても、処分価格は当該土地の時価を基準とすることとされている。
 なお、具体的な土地の処分に当たつては、関係地方公共団体の土地利用に関する計画との調整を図る等の観点から、あらかじめ当該地方公共団体の意見を聴くこととしているところである。

六について

(1) 国有地は、言わば国民共有の貴重な財産であるところから、処分する場合には公用、公共用優先の原則の下に地方公共団体等に優先的に随意契約により行つているところであり、地方公共団体等から買受要望が出されなかつた土地のうち、民間に処分することが適当と認められるもののみを民間に対し、一般競争入札により処分しているところである。
 入札による処分については地価動向に配慮しつつ行つており、地価高騰地域においては特に慎重に対処しているが、やむを得ず実施する場合には、投機的要因による不当な地価高騰を招かないよう、十年間の転売禁止等の厳しい条件を付すこととしている。
 国有地の処分については、地価動向に配慮しつつ慎重に対処してまいる所存であるが、これを停止することについては慎重な検討が必要と考える。
(2) 地方公共団体の所有する土地は、言わば住民共有の貴重な財産であり、公用、公共用優先の考え方の下にその有効利用が図られているところである。
 今後とも、この方針は堅持されるものと考えるが、地方公共団体所有の土地には、造成地等本来処分することを目的とした土地もあり、やむを得ない事情等によりこれらの土地を処分する場合には、地方公共団体において、地価動向に配慮しつつ、法律の規定にのつとつた処分がなされるべきであると考える。

七について

 地価公示価格は、自由な取引すなわち売手と買手の双方に売り急ぎ、買い進み等の特殊な事情のない取引において通常成立すると認められる価格として、地価公示法(昭和四十四年法律第四十九号)の定める手続に従つて公示されているものであつて、一般の土地取引の指標として機能しているものである。
 公的な土地評価には、地価公示のほか、相続税に係る評価及び固定資産税に係る評価があるが、これらはそれぞれ制度の目的を異にしており、評価を統一することについては困難な面もあるが、今後ともこれらの公的な土地評価の在り方について研究を進めてまいりたい。

八について

 遷都問題は、国民生活全体に大きな影響を及ぼすものであり、政治・行政機能と経済機能の相互関係の在り方を含め、国民的規模での議論が必要であると考えている。