質問主意書

第109回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九号

死に対する患者の人権と医師の治療義務に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十二年九月二日

木本 平八郎   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   死に対する患者の人権と医師の治療義務に関する質問主意書

 疾病の末期等で患者が脳死状態に陥つたとき、医師は患者及び親族の意思に逆らつて、それ以上の治療処置を講ずるべきではないと考えるし、また回復見込みがなく死が確実に予見される患者については、場合によつては安楽死や尊厳死を認めるべきではないかという観点に基づき、以下具体的に質問する。

一 患者が事前に遺言その他の明確な方法で脳死状態以後の医療拒否を意思表示していた場合、医師側はレスピレーター使用などの延命措置を施さず、自然の成り行きに任すことが許されるか。なお、患者本人が望んでいる場合の病名告知についてどう考えるか。

二 憲法上の基本的人権として、患者は医療を拒否する権利があると解釈してよいか。(例えば、「エホバの証人」など信仰上の立場から輸血を拒否するなど)

三 医師はどういう場合に患者の意思に反して医療を施すことができると考えるか。

四 麻酔など医療中を除いて、脳死状態に至る前に患者の脳波がフラットになつた状態から正常に戻る可能性があるのはどういう場合か。政府が承知している例があれば示されたい。

五 臓器提供のため患者が健常時遺言等で、脳死の場合死亡と認定してもらいたい旨を希望した場合、その希望のとおり認定され得ると考えるか。

六 疾病が悪化し回復の見込みがなく、患者ないし親族から身体を著しく傷つける治療(気管、食道、腹部などを切開し、強制的に呼吸、栄養補給、大小便の排出などを行う)を拒否する旨(尊厳死)の意思表示があつた場合、医師は患者ないし親族の意思を尊重することができると考えるか。

七 末期のガン患者等で肉体的苦痛が激しく、かつ医師にも死期が予測できる状態のとき、患者の苦痛をやわらげ、安らかに死に向かわしめるため、モルヒネ等の鎮痛剤を無制限に使用したり、麻酔を施す等の方策採用についての政府の見解はどうか。また、患者の希望に応じて生命維持管理装置を外した場合、外した者が刑事上の責任を問われないようにすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。