質問主意書

第108回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四号

内閣参質一〇八第一四号

  昭和六十二年四月十七日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員喜屋武眞榮君提出疎開船「対馬丸」に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員喜屋武眞榮君提出疎開船「対馬丸」に関する再質問に対する答弁書

一の(一)について

1及び2 古くから航海中の死亡者について水葬に付することが広く行われてきたことなどの事実に着目して、一般的には海自体が戦没者の安眠の場所であるとの認識の下に、沈没艦船内の遺骨収集は、例外的に、遺骨が人目にさらされていて遺骨の尊厳が損なわれるような特別な状況にあり、かつ、その沈没艦船内の遺骨収集が技術的にも可能な場合に限つて、これを行うこととしている。
3 沈没艦船内の遺骨収集についての政府の基本的な考え方は、従来から1及び2において述べたとおりであり、変わつていない。
4 陸上の遺骨の収集は、在外公館、民間等から寄せられる情報に基づいて行つており、あらゆる機会を通じてこれらの情報の収集を図つている。昭和六十二年度においては、フィリピン、ソロモン諸島、マリアナ・パラオ諸島、沖縄及び硫黄島の五地域を予定している。
 沈没艦船内の遺骨の調査については、例外的に遺骨収集を行つた事例を除き、行つていない。
 また、南西諸島方面における沈没艦船としては、百三十二隻把握しており、その名称は別記のとおりである。これらの沈没艦船の船体捜索は行つていないので、正確な沈没位置及び水深は不明である。沈没艦船内の遺骨数については、かなりの数の乗船者が海上に脱出していること等が推測されることから、推定することは不可能である。

一の(二)について

 沈没艦船内の遺骨の収集については、一の(一)についての1及び2において述べたとおりである。
 また、一般的に沈没艦船内の遺骨収集は、水深が浅い場合であつても、潮流の強さ、沈没艦船の複雑な内部構造等のため、極めて困難で危険な作業を必要とするものであり、沈没位置の水深のみによつて遺骨収集が可能であると判断することは適当でないと考えている。
 なお、水深三十から百五十メートルの範囲での遺骨の調査は行つていない。

二の(一)について

1 対馬丸遭難者については、船内にとどまつて亡くなつた方々のほか、船から脱出した後に亡くなつた方々が多数いるものと推測されることから、海上からの慰霊巡拝は、このいずれの方々をも対象とし、対馬丸が沈没した可能性のある四つの地点を含む広い海域を対象として行うこととしている。したがつて、船体捜索を行つて沈没艦船の正確な位置を確認することまでは必ずしも必要ではないものと考えている。
2 対馬丸の正確な沈没地点を確認することについては、広い範囲にわたる調査を要することなどの困難があり、また多額の費用を要するものと予想されるが、仮に正確な沈没地点を確認することができたとしても、船体が水深八百メートル以上の深海にあると推定されることから、遺骨収集は技術的に不可能であり、また、1において述べたとおり、対馬丸の慰霊巡拝を行うためには、必ずしも必要ではないと考えている。

二の(二)について

1 昭和六十二年度においては、対馬丸の沈没した可能性のある海域を含む南西諸島方面において、対馬丸その他の沈没艦船を対象に、海上からの慰霊巡拝を行うこととしており、その概要は次のとおりである。

(1) 日程      十八日間(予定)
(2) 巡拝を行う海域 南西諸島海域等(予定)

2 対馬丸に関する慰霊巡拝については、二の(一)についての1において述べたように、船内にとどまつて亡くなつた方々のほか船から脱出した後に亡くなつた方々も多数いるものと推測されることから、対馬丸が沈没した可能性のある四つの地点を含む広い海域を対象として、花束の投下等を行うことにより行うこととしている。

別記 南西諸島方面における沈没艦船の名称 1/2

別記 南西諸島方面における沈没艦船の名称 2/2