質問主意書

第108回国会(常会)

質問主意書


質問第一八号

税制改革に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十二年五月十四日

木本 平八郎   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   税制改革に関する再質問主意書

 去る三月十日提出した税制改革に関する質問主意書に対する答弁書(内閣参質一〇八第八号)の答弁内容は、私の質問事項に対して、抽象的で具体性を欠き、指摘に対する実態把握が不十分であるうえ答弁漏れもあるので、以下の事項について再質問する。

一 「法人税も究極的には個人に帰着する」との漠然たる論理では、法人税減税を売上税(消費税)導入とマル優等廃止という個人の増税財源で実施する論拠にはならない。
 例えば、法人の株式配当の引上げがあつたとしても、個人持株比率が二十パーセント台に低下した現状において最終的に、いつ、どれだけ、どの個人に法人税減税が還元されているかは不明確である。また製品価格の引下げや社員のベースアップ等による減税の還元についても相当の時間的な遅れを伴い増税先行の形になるが、これに対する政府の見解を問う。
 あくまで法人税減税分の個人還元を主張するなら、いつ、どの様な形で、どの階層に、どれだけ還元されるかを計算根拠と共に明示されたい。

二 給与所得控除が「既に相当の水準となつている」と答弁書で述べているが、給与所得以外の事業所得等については(イ)所得捕捉の不十分、(ロ)過大な経費計上の実態、(ハ)事業と家計との経理区分の不明確等の事実がある。徴税側の事情からこれを解決することが困難であるとするならば、給与所得控除の引上げが、給与所得者の不公平感軽減の、次善ではあるものの唯一つの実施可能な措置と考えるがどうか。ただし中堅給与所得者の負担軽減を考えるならば一案として表のように控除額を定める考え方もあるが、

図 表

この案に対する見解並びにどの様な案ならば給与所得者の不公平感解消の策として実現可能か示されたい。

三 給与所得に対する勤務費用の実額控除に関して、政府案のように極端に適用費目を制限するならば、実額控除の実体は「概算控除」と「他の所得との負担調整」を含む現在の一般的、平均的な給与所得控除には含まれぬ特殊経費となつてしまう。そうであるならば現行の給与所得控除との選択でなく、これに上乗せして認められるべきものであると考えるが、政府の見解を伺いたい。

四 単身赴任手当と扶養手当とを同一視するがごときは事実の誤認も甚しく、この見解は速やかに是正をされたい。単身赴任手当は、業務上の必要に基づき、社命により家族居住の前任地を離れて勤務することにより発生する住居費(出張旅費における宿泊費に相当)、家族居住地との往復交通費(出張旅費に相当)、及びその他二重生活による諸経費の増加分の一部分を「手当」として支給しているものである。出張旅費が実額を原則としているのに対し、単身赴任手当の場合はむしろ実額の一部支給に過ぎず、単身赴任者が支給された手当で賄える経費以外の増加経費については通常の給与所得からの支出を余儀なくされていることは、ほとんど全ての体験者が語つているところである。この実態を無視して、単なる給与所得として合算課税していることは、単身赴任者の生計を不当に圧迫するものである。単身赴任手当非課税の要求は、いわゆる「サラリーマン減税」の問題でなく、不適当な課税実態の是正である点を認識されたい。現行どおり出張旅費手当は非課税で単身赴任手当は課税する政策をとり続けるというならその根拠を明示されたい。
 さらに「単身赴任手当」という名称が不明確なら「単身赴任住居費」及び「居住地、任地往復交通費」として実際の支出額に応じてその金額の全部又は一部を企業が支給した場合も課税所得とするか否かの見解を併せて明示されたい。

五 売上税実施による低所得層の負担増については、新設される予定の与・野党合同「税制改革協議会」の協議の進展を待つこととなるが、何らかの形の一般消費税を課すれば福祉年金、遺族年金、雇用保険等の受給者及び所得控除限度未満の低所得者等の所得税ゼロ、従つて所得減税がゼロである者には新たな消費税負担増を生ずる事になる。これら超弱者に対して支給額増等の配慮が必要になると思うが政府の見解を伺いたい。

六 いわゆるマル優等利子非課税制度により「多額の利子所得が課税ベースから外れて不公平」というが、郵便貯金は大衆の貯蓄制度として、マル優、特別マル優についてもそれぞれ少額貯蓄、公社債等利子非課税制度として政府が制定し、その限度額も政府が「少額」として決定したものであり、国民の間に長年定着した制度である。一部に不正利用があるとすれば、それは制度の不備、管理の怠慢によるものであり、また金融機関の預金獲得競争がそれを助長していると思われるが、これに対しては制度を改善して不正利用を摘発是正すべきであつて、一部の不正利用者の存在を理由に制度の原則全廃を即時実施し、大多数の合法的利用者を巻き添えにすることは不当と考えるが、政府の見解を伺いたい。

七 マル優等を廃止する場合の弱者への配慮のうち、優遇措置対象者の年令を六十五才以上とすることについて答弁書の「預貯金等の元本の継続的な管理が必要」とはどういう意味か、なぜ六十五才以上にのみ必要か、「国の老人福祉に係る諸制度の適用年齢を勘案」の事例、内容を具体的に説明されたい。
 更に前回質問主意書に説明した給与所得者の定年退職と再就職事情及び配偶者との年令差を勘案すれば適用年令を少なくとも五十五才迄は引き下げるべきであると考える。政府見解を重ねて問う。

八 現行利子非課税制度において、六十一年当初より実施されている金融機関の窓口における「生年月日」と「本人確認」の制度は、コンピューターによる限度管理実施への第一段階ではなかつたのか。
 この改正が新規あるいは満期更改の分に限られ、既存の貯蓄(限度)についての「洗い替え」については強制されず、利子支払、途中解約、満期金支払等を黙認している理由は何か。
 既存の分も含めて本人確認を励行すれば不正使用を発見でき、また不正利用については遡及して追徴課税等をすべきなのにこれを放置しているのは不可解である。政府の見解を伺いたい。

  右質問する。