質問主意書

第107回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一〇号

内閣参質一〇七第一〇号

  昭和六十一年十一月二十一日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員猪熊重二君提出アイヌ民族問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員猪熊重二君提出アイヌ民族問題に関する質問に対する答弁書

一の1について

 「北海道旧土人」とは、ウタリの人たちを指称するものである。

一の2について

 現在、北海道旧土人保護法の適用に当たり、ウタリの人たちであるか否かを識別する必要は生じていない。

一の3について

 「北海道旧土人」という呼称は、適切ではないと考えている。

一の4について

 北海道旧土人保護法第二条第二項の規定は、同法第一条の規定により無償下付した土地について、無償下付の目的が達せられるよう必要な制約を定めたものであり、憲法第十四条には違反しないものと考えている。

一の5及び6について

 北海道旧土人保護法第十条の規定は、ウタリの人たちの共有財産について、何らかの事情によりウタリの人たちの共同管理が困難な場合において、その保全のため北海道知事が代わつて管理することができることとした規定であり、適切な共同管理の方法がある場合に当該方法による管理を行う途は当然開かれているところである。

二の1及び2について

 市民的及び政治的権利に関する国際規約に関して昭和五十五年に提出した報告中の同規約第二十七条に係る部分は、同条全体の趣旨に照らし、同条に規定された権利を否定された少数民族は我が国に存在しないとの趣旨を記述したものである。

二の3について

 御指摘の注釈は、条約の解釈に当たり、参考となる資料である。

二の4について

 中曽根内閣総理大臣及び遠藤法務大臣の発言は、市民的及び政治的権利に関する国際規約第二十七条に規定する権利を否定された少数民族は、我が国に存在しないとの趣旨を述べたものである。
 なお、日本民族は、長い歴史のなかで諸民族が混合一体化して形成されたものといわれており、アイヌ民族もその中の一つであつたと考えられていること及びその子孫の方々が現存していることは事実であることについては、昭和六十一年十一月十日の参議院予算委員会における中曽根内閣総理大臣の答弁において、述べているところである。

二の5について

 発言の趣旨は、二の4についてにおいて述べたとおりであり、事前調査を必要とする事柄ではないと考えられる。