質問主意書

第107回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一八号

製品たばこの輸入関税撤廃等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年十二月二十日

下田 京子   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   製品たばこの輸入関税撤廃等に関する質問主意書

 政府は、先般日米たばこ交渉においてわが国の製品たばこ輸入関税を撤廃することに合意し、次期通常国会に「関税定率法改正案」を提出しようとしている。
 これは、葉たばこ生産者をはじめ、わが国たばこ産業関係者に重大な打撃を与えるものであり、断じて容認できるものではない。
 コメについで農家の売上げ第二位の耕種作物である葉たばこを地域農業の基幹作物として振興させる立場から、以下具体的に質問する。

一 関税撤廃に関して

(一) 今回の関税撤廃は、何よりもレーガン米大統領の米通商法三〇一条に基づく「対日報復」のおどしに日本側が一方的に譲歩を強いられたものである。
 米国の国内法である通商法三〇一条により「報復措置」をとることはガット上も認められないことと思うがどうか。
 また、製品たばこに関する関税を課すことはガット条文にも違反するものではないと考えるがどうか。
 さらに、わが国製品たばこの関税率は一九八〇年度までは九十%であつたものを、二回にわたつて二十三%にまで引き下げ、この結果国内葉たばこ生産者をはじめ関係者に大きな打撃を与えてきた。これ程急激に関税率を引き下げて、国内生産者に打撃を与えないと断言できるのか。また、これ程急激に関税率を引き下げ、及び関税を撤廃した国があるか。
(二) レーガン米大統領が関税撤廃等、日本のたばこ市場開放を迫る理由は、フィリップモリスやR・J・レイノルズなどアメリカの巨大たばこメジャーの対日進出をはかるためではないのか。
 現に、世界市場の十七・八%(一九八四年)を占めるフィリップモリスは東日本担当を三井物産、西日本担当を日商岩井と東西にわけて支配し、R・J・レイノルズは三菱商事、イギリスのB・A・Tは住友商事と、いずれも大手総合商社と結びついて対日進出を展開している。異常円高と関税撤廃は、まさにこうした巨大たばこメジャーと大手総合商社の暗躍の場を提供する以外の何ものでもないと考えるがどうか。
(三) 前回の関税大幅引下げの際、政府と自民党の間で「輸入製造たばこの関税率の引下げは今回をもつて最後とする」との申し合わせがなされていた(一九八二年十二月二十五日)。今回の関税撤廃はこの「申し合わせ」に明らかに反するものであり、結局、アメリカの圧力の前に何らの意味をも持たなかつたことを示していると思うがどうか。
 特に問題は、日米合意以前に、大きな打撃を受ける葉たばこ生産者の意向を確認したのかどうかにある。
 葉たばこ生産者の意向をどのように尊重してきたのか明らかにされたい。また、葉たばこ生産者を無視した決着ではないと断言できるか。
 全国たばこ耕作組合中央会は、関税撤廃に対し「関税は維持するという衆参両院での附帯決議を無視した撤廃には強い憤りを感じる」と表明している。
 政府は、この生産者の怒りに対し、どう説明し対応されるのか。更に問題は、昭和六十一年三月二十五日衆議院大蔵委員会の附帯決議「現行の製造たばこの関税率水準及びたばこ事業法の製造の規定については、これを維持するよう努めること」をふみにじつた国会決議軽視の政府の無責任さである。この点について、政府の納得のいく説明を求める。

二 葉たばこ生産者の経営安定について

(一) わが国葉たばこ生産は、耕作面積で一九八〇年の六万一千ヘクタールから来年度四万四千ヘクタールへと約三割も減少し、農家戸数も同期十万九千戸から七万六千戸に激減している。
 特に公社制度の廃止、民営化に伴つて、製品たばこの輸入自由化と需要低迷という中で輸入製品の急増(一九八四年度二・一%のシェアが一九八六年四~七月三・四%)で葉たばこ生産が一層縮少されている。
 輸入品シェア一%増で、国内葉たばこ生産面積は五百五十ヘクタール減反に追いこまれるだけに関税撤廃を撤回し国産葉の使用割合を引き上げることが今日の葉たばこ生産の危機打開にとつて重大なポイントであると思うがどうか。
(二) 「国際競争力強化」の名のもとに条件の悪い地域や中小兼業農家の切りすてがすすめられている。しかし、「生産性の向上」というなら、まず何よりも肥料や農薬、農機具、燃料等資材の独占価格を引き下げること、特に当面これら農業資材の円高差益のすべてを農民に還元すべきと思うがどうか。
 更に、農機具、施設等の共同利用への助成拡充など、有効利用をはかるための施策の拡充をはかるべきと思うがどうか。
(三) 「コスト引下げ」という名で、在来種からバーレー種への転換が進められているが具体的に以下の点で答弁を求めたい。
 第一に、バーレー種への転換によつて、国産紙巻たばこにおける品質上の特徴をなくしてしまい、結局「国際化・均一化」の名により、巨大タバコメジャーの国内進出を容易にする結果を招くことになるのではないか。
 日本の伝統的喫味を大切にすべきと思うがどうか。
 第二に、在来種からバーレー種への転換に当たつては何よりも葉たばこ耕作者の納得のもとに進めるべきである。特に、転換をテコにした耕作農家の切りすては絶対にあつてはならない。そのために転換による収入減という事態を招かぬよう特別の援助を講ずるべきと思うが、政府の具体的施策を明らかにされたい。
 第三には、転換に当たつて土壌、気象条件等試験研究を十分にふまえた対応が必要と思うがどうか。
 以上、わが国の伝統的地域産業である葉たばこ生産の振興発展とたばこ産業関係者の生活と権利を守る立場から政府の誠実な見解を求める。

  右質問する。