質問主意書

第107回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一五号

大気汚染の甚だしいディーゼル車及びLPG車の使用制限等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年十二月三日

木本 平八郎   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   大気汚染の甚だしいディーゼル車及びLPG車の使用制限等に関する質問主意書

 新聞報道によれば、最近アレルギー関係の学会で諸方面より「国民病である杉の花粉症は、ディーゼルエンジンの排ガス中のDEP(ディーゼル排出微粒子)量と関係がある」との研究発表が行われたとのことである。
 杉の花粉症は根治治療困難な難病といわれ、学説によれば、抗原物質である花粉に対し、DEPが作用すると、体内で免疫グロブリンE(IgE)型抗体がつくり出され、それがくしゃみや鼻水などのアレルギー症状を起こすとされている。
 一方、LPG車の方は、東京都環境保全局の調査によると、高速運転時には一キロメートル走行当たり一・七九グラムのNOの(窒素酸化物)を出すケースもあり、許容限界値(排出基準値)の〇・四八グラムに対して、三・七倍に達したとの報告である。
 タクシーメーカーの説明によれば、エンジンの低燃費と低公害との両立をねらつた結果の排ガス浄化装置設計とのことだが、NOは、人体に対して肺機能の低下や女性の場合には肺ガンの誘因になつているとの説もあり、国民の健康上看過できない問題である。
 LPG車対策に関しては、十一月十八日に環境庁大気保全局長及び運輸省地域交通局長が日本自動車工業会に対し、排ガス装置の改善を要請したとのことだが、ディーゼルエンジン問題と併せ、以下質問する。

一 LPGタクシーの排ガス規制改善計画に関し、目標改善値及び達成年次を示されたい。

二 ディーゼルエンジン(車)に対しても、ガソリン車並みの排ガス規制を実施することに関し、政府の見解を示されたい。

三 エンジンメーカーの排ガス装置改善を促進するため、装置完成までの間、毎年軽油引取税(現在軽油は一リットル当たり二十四円三十銭)及び石油ガス税(現在LPGは一キログラム当たり十七円五十銭)を例えば十円ずつ引き上げてはどうか。財政逼迫の折から、一石二鳥の名案と考えるが政府の見解を伺いたい。

四 一説によれば、ディーゼルエンジンは構造上燃焼温度を上げればNOが増え、下げればDEPが増えて、両方の同時減少達成は技術的に困難とのことだが、もしそうなら、ディーゼルエンジンは使用禁止にして排ガスに問題の少ないガソリンエンジンで代替すべきであると思うが、政府の見解を伺いたい。

五 ディーゼル、LPG両エンジンはガソリンエンジンに対して燃料コスト以外には特別のメリットがなく、すべてガソリンエンジンで代替できると思うが、政府の見解を問う。

六 ガソリンエンジンで代替できない機械・車両があれば具体的に例示されたい。

七 また、高馬力分野で、現在はガソリン用のエンジンがなくてもディーゼルエンジンの使用が禁止されることとなれば、技術的には高馬力のガソリンエンジン開発も行われると思うが、政府の見解を示されたい。

八 現在の日本はすでに豊饒段階に達しており、これ以上経済性や効率性を追求する必要はなく、国民の健康を犠牲にしてまで燃料コストの低さを求めなくてもよいと考えるが政府の見解を伺いたい。

九 燃費問題は、ディーゼル車、LPG車の利用者(タクシー会社・運送会社・建設会社等)にメリットはあるが、消費者には健康の代償になるほどのメリットはない。政府も、この辺で行政の視点を消費者中心、国民生活中心に変えるべきであると考えるが政府の見解を伺いたい。

十 序文に挙げたDEPと杉の花粉症との因果関係の医学的研究は、まだ確立された学説にはなつていないが、少なくとも国民の健康に関する限り、「疑わしきは罰す」の方針をとるべきであると考えるが政府の見解を伺う。

  右質問する。