質問主意書

第107回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一二号

海岸の管理・保全に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年十一月二十六日

猪熊 重二   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   海岸の管理・保全に関する質問主意書

 近時、国有財産である海岸が、海岸周辺の土地を所有する私企業によつて公道等から遮へいされ、あたかも右私企業の私的所有物であるかのごとく利用されている(以下、かかる海岸を「プライベート・ビーチ」という)。
 しかるに、国の海岸に対する管理は全く不十分であつて、結果的に、右私企業の海岸独占という違法状態を黙認しているに等しい状況にある。
 国民の共有の財産としての海岸を、国民の自由な利用に供し得る状態の実現を目的として、次のとおり質問する。
 なお、ここにいう海岸は、海岸の管理・保全等に関する特別法(例えば、海岸法、港湾法、その他の海岸の管理・保全に関する各種特別法規)の適用のない、自然公物としての海岸、いわゆる講学上における「法定外公共物」としての海岸を指称するものとする。

一 国有財産たる右海岸の所管省庁(部課)はどこか。

二 右海岸の管理・保全につき、次の諸点を明らかにされたい。

1 国は、右海岸の管理・保全を、地方公共団体等に委任しているか。機関委任しているとすれば、その法的根拠は何か。
2 右機関委任事務と地方自治法第二条第二項ないし第六項に規定する地方公共団体の事務とは、どのような関係にあるのか。

三 国が、右海岸の管理・保全をどのような方法で実行しているかにつき、次の諸点を明らかにされたい。

1 国が直接に行つている管理・保全に関する具体的方法を明示されたい。
2 国が、機関委任した地方公共団体等を介して行つている管理・保全に関する具体的方法を明示されたい。

四 前述のごとき「プライベート・ビーチ」に関する国の現状把握につき、次の諸点を明らかにされたい。

1 現在、「プライベート・ビーチ」は、全国にどの程度存在するか。その所在地、名称、海岸の独占的利用状況及び一般国民の利用の可否・状況を明示されたい。
2 仮に、右現状が十分に把握されていないとすれば、これを、より完全に把握するために、国としてとり得る方法ないしとるべき方法につき明示されたい。

五 右海岸を不法に占有している者に対して、国のとり得べき法律上の請求手続について、次の諸点を明らかにされたい。

1 国として、現在までに、右のごとき不法占有者に対して、何らかの法律上の請求手続をとつた事実は存するか。
2 いわゆる物権的請求権の行使は可能と考えられるか。
3 右権利行使が可能であるとした場合、権利者(原告)として権利行使すべき主体はだれか。
4 国以外の者が右主体であるとした場合、国は、右主体に対し、いかなる指揮・監督をなし得るか。

六 右海岸が民法第二百十条第二項にいう袋地である場合の囲繞地の通行に関し、以下の諸点を明らかにされたい。

1 袋地である右海岸の所有者である国は、囲繞地を通行する権利を有すると考えられるか。
2 袋地所有者たる国に囲繞地通行権が認められるとした場合、その通行権に基づき開設されるべき通路の状態は、プライベート・ビーチ化する以前に右海岸が利用されていた状況を基準として確定されると考えられるか。
3 右権利行使が可能であるとした場合、権利者(原告)として権利行使すべき主体はだれか。
4 国以外の者が右主体であるとした場合、国は、右主体に対し、いかなる指揮・監督をなし得るか。

七 国は、国有財産の所有・管理・保全の主体として、海岸のプライベート・ビーチ化に対し、何らかの対策をとることを考えているか。特に、現に存在するプライベート・ビーチに対して、前記五ないし六に述べた権利を、直ちに行使し、もつて、海岸の管理・保全を図る意思を有するか。

  右質問する。