質問主意書

第104回国会(常会)

答弁書


答弁書第四七号

内閣参質一〇四第四七号

  昭和六十一年五月二十三日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員小笠原貞子君提出水田利用再編次期対策(ポストIII期)等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員小笠原貞子君提出水田利用再編次期対策(ポストIII期)等に関する質問に対する答弁書

一、二の(1)及び(2)並びに三の(2)について

 過剰基調を強めている米の需給を均衡させつつ農産物の総合的な自給力の向上を図るため、昭和五十三年度以降おおむね十年間の事業として水田利用再編対策を実施しているところであり、現在、昭和五十九年度から昭和六十一年度までの三年間を期間とする第三期対策を推進している。
 水田利用再編対策については、全国の農業者の理解と協力の下に、各作物の需給事情を踏まえ、地域の特性に応じた農業生産構造の確立を図る方向で推進してきているところであり、転作等目標面積の配分に当たつても、地域の特性、産米の品質、自給率向上の必要性の高い作物への転作の可能性等を総合的に勘案して行つている。
 米については、生産力と需要のかい離が一層拡大する方向にあり、今後とも、米の需給を均衡させつつ、農産物の総合的な自給力の向上を図つていくことが重要である。
 このため、水田利用再編第三期対策後の対策については、長期的かつ総合的な観点から農業の将来を展望しつつ検討を行つているところであり、転作等目標面積及びその配分、転作奨励補助金等についてもその一環として検討を行うこととしている。
 なお、国民の主食であり、かつ、我が国農業の基幹作物である米については、国内自給を基本とし、その安定供給を図ることが重要であることから、今後とも、豊凶に伴う生産量の変動等に備えた適正な在庫保有に努めつつ、適切な需給計画の下で的確な米管理を行つてまいりたい。

二の(3)について

 米の政府買入価格については、食糧管理法(昭和十七年法律第四十号)の規定に基づき、生産費及び物価その他の経済事情を参酌し米の再生産を確保することを旨として、米価審議会の意見を聴き、適正に決定していく考えである。
 また、昭和六十一年産の米の政府買入価格についても、食糧管理法の規定に基づき、適正に決定していく考えである。

二の(4)について

 他用途利用米の生産は、水田の有効利用に資するとともに、稲作の生産性の向上に寄与するなど、今後の農政の展開に当たつて重要な意義を有するものである。その用途の拡大については、主食用以外の新規用途の需要が今後急速に拡大していくとは考えていないが、できるものから着実に実現していくという観点に立つて、今後の低コスト生産の進展状況等も踏まえつつ、関係者と一体となつて検討してまいりたい。

二の(5)について

 国民の主食であり、かつ、我が国農業の基幹作物である米については、国会における米の需給安定に関する決議等の趣旨を体し、自給する方針を堅持していく考えである。

三の(1)について

 北海道の稲作農家の経営は、二年連続の豊作により改善された面もみられるので、特別の負債対策を講ずることは考えていない。
 また、自作農維持資金(経営再建整備資金)については、農業経営の再建整備を図ろうとする農業者の資金需要にこたえられるよう逐年融資枠の増額等を図つてきているところである。

三の(3)について

 政府としては、円高による輸入品価格低下の効果が、市場メカニズムを通じて国内販売価格に適正に反映されるよう努めるとともに、必要に応じ関係業界に対して要請を行う等適切な対応を図る所存である。
 なお、化学肥料については、原料の輸入契約から製品の販売による代金の回収まで相当の期間を要し、かつ、その期間は個別の場合により異なる等の事情があり、りん鉱石、カリ等の輸入原料に関し円高による為替差益の金額を具体的に試算することは難しい。
 しかし、半年以上の円高基調により為替差益が生じているものと考えられ、りん鉱石、カリ等の輸入について中核的役割を果たしている全国農業協同組合連合会では、六十肥料年度末に需要者に対し還元を行う模様である。政府としても今後とも関係団体等に適切な指導を行つていく所存である。
 尿素肥料の国内向けと輸出向けの価格については、国内取決め価格が消費地最寄駅までの運送費を含む価格であるのに対し、輸出価格はFOB価格であること、両者は通常包装形態に違いがあることから包装費に差が生ずること等の理由により相当の差がでるものであり、実質的には輸出価格が国内価格に比べ不当に安くなつていることはないと考えている。

三の(4)について

 土地改良事業については、その施行地域が特定されること等にかんがみ、受益者からその受益の範囲内において負担金を徴収できることとなつている。
 北海道における水田の整備のための土地改良事業については、その重要性等を踏まえ、負担金の軽減に資する措置を一部講じているところであるが、今後とも、水田の汎用化等の転作条件の整備を図るため、その円滑な推進に努めてまいりたい。

三の(5)について

 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第九条第一項第十号に規定する「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合」とは、債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合をいうものと解され、実情に即した運用を行つているところである。