質問主意書

第104回国会(常会)

答弁書


答弁書第四三号

内閣参質一〇四第四三号

  昭和六十一年五月十三日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員藤原房雄君提出VDT作業者の健康障害と労働安全衛生対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員藤原房雄君提出VDT作業者の健康障害と労働安全衛生対策に関する質問に対する答弁書

一について

 昭和五十八年十月に労働省が行つた調査によれば、VDT作業従事者は一般の事務作業従事者よりも「眼が疲れる」、「肩がこる」等の疲労を訴える者の割合が高いことは承知している。

二について

 労働省としては、既に昭和五十九年二月、当面の暫定的な措置として、指標(ガイドライン)としての「VDT作業における労働衛生管理のあり方」を公表し、事業場における企業の自主的対策の推進を図つてきたところであるが、昭和五十八年度から三箇年計画で進めてきたオフィス・オートメーション化等に伴う作業環境や労働態様の変化が労働者の健康に及ぼす影響についての医学的、科学的調査研究の成果を踏まえて、昭和六十年十二月、「VDT作業のための労働衛生上の指針」を公表し、目下、全国的にその周知徹底に努めているところである。

三について

 現在までのところ、一日のVDT作業時間の上限を設けることの必要性等について十分な医学的、科学的根拠は得られておらず、また、諸外国政府においてもVDT作業時間の上限を設けている例は承知していない。

四について

 VDT作業の妊産婦に及ぼす影響については、現在までのところ、妊産婦のVDT作業への就業を制限するに足る医学的、科学的根拠は明らかにされていない。

五について

 「VDT作業のための労働衛生上の指針」において、VDT作業に適したVDT機器等について示しており、当面はこれにより指導の徹底に努めることとしている。
 なお、今後とも、VDT機器に関する技術の進展が見込まれるので、引き続き新しい知見の集積に努めてまいりたい。

六について

 現在、労働省で把握しているVDT作業従事者からの眼精疲労等の眼の疾患に係る労災請求件数は四件あり、このうち業務外と決定したもの一件、調査中のもの三件である。

七について

 VDT作業従事者から眼精疲労等の眼の疾患について労災請求が行われた場合には、個々の事案ごとに、就労実態、作業環境、健康状態等について十分な調査を行い、必要に応じ専門医の意見を徴するなどにより、業務との相当困果関係について適正な判断を行つているところである。
 今後とも、業務との相当因果関係を明らかにするため、必要な医学的情報の収集に努めるとともに、専門家による検討会議を設けるなど、労災認定の適正化に努めてまいりたい。
 なお、労働省としては、VDT作業が労働者の健康に与える影響について、産業医学総合研究所、産業医科大学及び専門家よりなる委員会において慎重に検討を行い、必要な予防対策を講じているところである。

八について

 労働者の心身両面にわたる健康の確保を図るために、昭和六十一年度からオフィス・オートメーシーョン化等に伴うテクノストレスに関する調査研究を行うこととしている。

九について

 日本産業衛生学会のVDT作業に関する検討委員会が作成した「VDT作業に関する勧告」は、日本産業衛生学会として正式に外部に公表したものではないと聞いているが、その内容のうち主として健康管理について、「VDT作業のための労働衛生上の指針」を策定する段階で十分参考とした。

十について

 VDT作業が労働者に及ぼす疲労等の健康影響を予防するため、昭和五十九年二月に指標(ガイドライン)としての「VDT作業における労働衛生管理のあり方」を公表したが、事業場に対する行政指導を強化するため、これを見直し、昭和六十年十二月、「VDT作業のための労働衛生上の指針」を公表したところである。この指針に基づいて適切な労働衛生管理を行うことにより、疲労等を防止することができると考えている。今後ともこの指針の周知徹底を図るとともに、医学的、科学的知見の集積に努めてまいりたい。