質問主意書

第104回国会(常会)

質問主意書


質問第四八号

私立保育園の経営と運営に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年五月十六日

上田 耕一郎   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   私立保育園の経営と運営に関する質問主意書

 子どもと働く婦人の権利を守る上で大きな役割を担つてきている保育所は、いま、中曽根内閣の福祉切りすて攻撃で、たいへんな危機に直面している。補助金削減の強行で保育所への国庫負担が十分の八から十分の五に大幅削減され、公立・私立を問わず全国の保育関係者は怒りをつよくしている。
 保育料の値上げなどの影響で、保育所の定員割れがあいついでつくりだされており、とりわけ経営基盤の弱い私立の場合には事態は深刻である。憲法・児童福祉法によつて国民の保育に関しては公的に保障する制度が確立し、国や地方自治体が責任をもつことになつているにもかかわらず、今日の私立保育園がおかれている困難な現状は、この原則に大きく反していることを示しているといわざるをえない。
 以下、私立保育園の経営と運営に関し、直面している困難の現状に即して、質問をする。

一 定員未充足問題について

 児童福祉法第三十五条、同施行規則第三十七条および同施行令第十二条の二の規定によつて、措置定員に見合つた職員配置が義務づけられている一方、定員未充足のケースが多くなつており経営破綻に陥つている。私立保育園の経営手腕に一方的にまかせるというやり方をとつているが、国としても何らかの対応を考えるべきではないか。経営が苦境に陥るのを避けるためにも、定員未充足の時は最低でも職員の人件費を含む事務費は支払うべきではないか。

二 通年制について

 途中入所の場合に、誕生日を過ぎているとして、年度当初の時点と比べると一歳上の保育単価として措置されることになつているが、保育園側としては年度当初時点での年齢に合わせたクラス編成および処遇をしているのが現状であり処遇上に矛盾がある。途中入所の場合でも年度当初時点での年齢、いわゆる通年制の扱いで単価を措置すべきではないか。

三 四月二日生まれの子どもの年齢計算について

 厚生省児童家庭局企画課長回答(昭和四一年四月一六日)「三歳未満児の年齢計算について」によると、四月三日以降に出生した者を三歳未満児とし、四月二日以前に出生した者は三歳以上児として取り扱うことになつているが、就学時期を迎えようとする子どもの場合は学校教育法第二十二条の規定により四月一日生まれと四月二日生まれの間に境界を引くことになつており、四月二日生まれの子どもの場合のみどちらの年齢計算に合わせるかという問題が生ずることとなる。東京都内でのケースをみると、就学年齢に合わせてクラス編成をおこなうのが一般的となつており、就学年齢と合わせた措置費を支払う必要があると考えるが、どうか。

四 園長の賃金について

 園長給が一九万九、六〇〇円というおどろくべき低い賃金水準では職務内容と責任に見合つた職責が遂行できるかどうかきわめて問題がある。公立と比べた場合でも、公立の保母が私立の園長になつたとして年間で約一〇〇万円の減収となつている現状にあるので、職務内容の実態に即して、賃金問題の改善を図ることが急務になつていると考えるが、どうか。

五 障害児保育について

(1) 障害児保育をおこなつている保育園では、子どもの状態に見合つた人員配置をすることができないでいるのが現状であるが、現行の障害児加算の算定根拠を明らかにされたい。
(2) 国として、実施施設にたいし現状に対応した人員配置ができるよう障害児加算の引上げの措置を講じるなどの対策をおこなうべきではないか。

六 非常勤事務職員費用算定の適正化について

(1) 保育園の事務量は大量になつてきており、現在の事務員補助費用三万円余の低水準ではとても処理しきれず園長に多大な仕事がかかつている状態にあるが、実態をどのように把握しているか。
(2) 算定基準の「一〇四日」は、週二日で五十二週と理解しているが、この算定を見直し引上げを図るべきと考えるが、どうか。

七 園舎の大規模な修繕費および地代補助の問題について

(1) 現行の保育単価のなかの「管理費」に「修繕費」がふくまれているのは不断の小規模なものに対応していると理解するが、園舎の老朽化にともなう計画的な修繕にたいしては何の財政的裏付けもなされていないが、あらたに何らかの対策を講じるべきと考えるが、どうか。
(2) 敷地が借地の場合には、都心部に代表されるように、固定資産税の値上がりの影響が大きく保育園財政を圧迫しているので、減免ないしは補助制度の検討をすべきと考えるが、どうか。

八 法人の運営問題について

 児童福祉法施行規則の改正で、個人立保育園は原則として法人化しなければ継続できないことになつたが、法人の運営については、前記の大規模修繕など困難な問題に対処することが求められているのにもかかわらず、社会福祉法人としての制約から、運営のための財源を確保するみちがなく、実態としては常に法人として多額な借金をかかえ運営に苦労している。この状況を改善するための措置をとるべきと考えるが、どうか。

九 保育時間について

 児童福祉法では保育時間の規定はおおむね八時間とされているが、厚生省の保育単価の算定基礎の時間としては何時から何時までとなつているのか。

十 延長保育について

 厚生省の延長時間の考え方として、午前七時から午後七時までを位置づけているが、現在の補助内容では実施施設を増やすのは困難と考えるが、実態をどう把握しどう改善しようとしているのか。

十一 最低基準の見直しについて

 児童福祉法第四十五条に規定されている最低基準に関し、昭和二十三年いらいほとんど改定されていないと理解しているが、人員の配置ひとつを見ても、例えば二歳未満で六人に一人、四~五歳児で三十人に一人との基準は実情には合わず、少なくとも〇歳児なら三人に一人、四~五歳児なら二十人に一人とすべきであり、実態をつぶさに調査したうえで、早急に基準の見直しにとりかかるべきと考えるが、どうか。

十二 補助金削減による影響について

 補助金の大幅削減は、私立保育園の経営と運営に大きな影響を与えており、今後の保育行政にとつても重大な支障をきたしかねない。影響のあらわれかたについての調査をおこなうべきと考えるが、どうか。補助金・負担率の削減政策については国民への影響が大であり、従来どおりの水準に戻すべきと考えるが、政府の見解を問う。

  右質問する。