質問主意書

第104回国会(常会)

質問主意書


質問第三九号

いわゆる「スパイ天国」論に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年四月十八日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   いわゆる「スパイ天国」論に関する質問主意書

 中曽根総理は、衆参両院の本会議及び予算委員会など公式の場で、「日本ぐらいスパイ天国はないのだ」と繰り返し喧伝してきた。
 私は、本年二月五日提出の質問主意書で、総理のいう「スパイ天国」とは、具体的にどういうことを指しているのか、また、日本がその「スパイ天国」であるという事実を実証的に示されたいとのお尋ねをした。
 これに対する答弁書(内閣参質一〇四第一〇号)は、「我が国では、現行法制上いわゆるスパイが自由に活動し得る余地があり、これを「スパイ天国」と称することが可能である。」と述べている。
 これは、中曽根総理が声高に述べる「スパイ天国」論の説明としては、いかにも迫力不足であり、私のお尋ねしたことに、正面からお答えいただいたとは、到底思えない。
 そこで、前記答弁書の内容に沿つて、更に具体的に質問する。

一 国内の各種法令に違反すれば、一般の国民と同様に検挙を受けるわけで、その点、「スパイ」が自由に活動できるわけではないと思われるが、答弁書のいう「現行法制上いわゆるスパイが自由に活動し得る余地があり」とは、具体的にはどういうことを指しているのか。

二 国内の各種法令に違反すれば、いわゆる「スパイ」である人も、いわゆる「スパイ」でない人も、検挙を受ける。
 ところで、日本国憲法は、言論、出版、その他一切の表現の自由をはじめとして、国民の基本的人権を保障している。
 そこで伺うが、答弁書のいう「現行法制上いわゆるスパイが自由に活動し得る」とされる領域は、表現の自由をはじめとして憲法が国民に保障する法領域と密接不離の関係にあるのではないか。

三 中曽根総理が繰り返し述べる「スパイ天国」の例証として、答弁書は、「戦後我が国において検挙された各種のスパイ事件は、六十件余に達している」ことをあげる。
 果たして、日本が「スパイ天国」と呼べるのかどうか、政府の把握しているこれら六十件余のスパイ事件の件名(通称)、検挙年月日及び事件の概要を関係国別に明らかにされたい。

四 日本国憲法施行後、今日までの間において、現行法制では国家秘密の保護という観点から十分対処し得なかつた「スパイ行為」の事例があれば、明らかにされたい。なお、なければない旨を明らかにされたい。

  右質問する。